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少しだけ距離をあけながら歩き続けていた私達は、屯所前の石段に辿り着いた。登ろうとしたその時、上の方から降りてくる人物と鉢合わせをする。
「お、歳ちゃんやんか。」
「来たか。・・早速ですまないが、八神さんは私と一緒に来てほしい。」
「え・・あ、はい、分かりました。」
一緒に来てほしいって・・屯所で話すんじゃないの?
疑問に思っている私を放置して、土方さんは吾朗・・沖田さんを見て指示を出していた。
「お前は今日稽古だったな。早く行け。」
「へいへい。ほな、またなシエルちゃん。」
沖田さんは私の頭を軽くポンポンと触れて、そのまま石段をのんびり登り始めて行った。
”シエルちゃん”、か・・さっきまで呼び捨てだったから少し違和感・・。
「ではこちらへ。」
「は、はい!」
駕籠屋を引き止めた土方さんは、行き先を伝え一緒に駕籠に入った。行く途中は会話もなくて・・・気まずい・・。
(一体何処行くんだろ・・。)
少し走らせた後、駕籠が止まったのに気付く。暖簾が開き外に出ると・・・目の前にある建物は”旭屋”と書かれている祇園のお店だった。祇園に来たのは初めてだったけど、旭屋の話は何となく聞いてたからすぐに分かった。
(どうして・・こんな所に・・・?)
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ。」
店の中に入って案内される。
・・・凄い豪華・・高そうなお店だなぁ。でもここって確か遊女の人と遊ぶお店だよね・・女の私が入っても大丈夫なのかな・・?
キョロキョロしながら歩いていると、お店の最奥の部屋に辿り着いた。開かれた戸の向こうにいたのは・・・。
「よぉ八神さん!久しぶりだなぁ!」
(こ・・近藤さん・・・・?)
「お久しぶりです。あの・・どうしてここに?」
「ここは俺の通い場所なんでな、よくここにいるんだ。今度から何かあった時はいつでも来い!余計な人間はいねぇからな!」
「あ、ありがとうございます。」
「八神さん、こちらに。」
「す、すみません土方さん。」
土方さんが用意してくれた座布団に座り、土方さんも近藤さんの隣に座る。
私が合い向かいに座ると、見た事のある優しい笑顔から真剣な表情に変わる近藤さん。真っ直ぐ私の目を見るその目に、思わず息が詰まる・・それくらい覇気が凄い・・。
「・・昨夜源さんから聞いた。谷の事で随分迷惑をかけちまったなようだな・・。」
(・・あ・・・井上さん、話してくれたんだ・・。)
もしかして近藤さん・・それを気にかけてくれてここに呼んだの?屯所だと怖がるだろうと思って・・・?
「あいつは当分の間、表に出れねぇようにしたから安心してくれ。・・だが、本当にすまなかった。」
「そんな・・近藤さんが謝る事じゃ・・。」
あれは谷が勝手にしてきただけで近藤さんは何も悪くなのに・・。
それでも近藤さんは、視線をわずかに下げていた。
「組織をまとめられてねぇ証拠だ。俺の不甲斐なさが原因さ。」
「・・私の責任でもある。本当に申し訳ない。」
「そっそんなっ・・土方さんまで・・・!」
新撰組のトップ二人に謝られたら・・逆にこっちが申し訳なくなっちゃうよ・・!
「怪我をしたとも聞いた・・大丈夫そうか?」
「は、はい!ごろ・・沖田さんに診てもらいました。」
「そうか。ならよかった。」
(危なっ・・・つい吾朗さんって言いそうになっちゃった・・怪しまれてないよね・・?)
「今後の事なのだが・・君はどうしたい?引き続き屯所に来てもらえると有り難いが・・今回の事もある。君の意見を尊重したいと、私と近藤さんは考えている。」
(今後の事・・・。)
稽古、だよね・・それ以外に私の保全もって事もあるけど・・。
谷の事があって確かに少し怖いし許す気もないけど・・表に出れないって言ってたし・・その内容は聞かないでおこう。
新撰組のみんながああいうわけでもない。それに・・・。
(今は少しでも・・吾朗さんの傍にいたい。)
屯所に行かなくなるときっと会える機会は少なくなる。寺田屋でも仕事もあるし、吾朗さんだって沖田総司としてやる事がある。
二人で一緒に元の時代に戻る為にも・・少しでも傍にいて話をしなきゃ。
「大丈夫です。続けます。」
私の返事に安心したような表情を浮かべる近藤さんは、手を両ひざにつけ頭を下げてくる。
「・・すまねぇな、ありがとよ。」
近藤さんはきっと、新撰組を少しでも強くしたいんだろうな。
その想いが何となく伝わってくるけど・・・でも、なんかそれだけじゃないような・・・なんだろ・・。
「では隊長達には私から伝えておく。・・君はもう寺田へ戻るか?戻るなら駕籠屋を手配する。」
「あっ・・はい、そうします。」
「それじゃまたな、八神さんよ。気ぃつけてな。」
「はい、近藤さん。また。」
立ち上がった私は近藤さんにお辞儀をして、土方さんと部屋を出る。
寺田屋の二人にちゃんと謝らないと・・・何も言わずに心配かけちゃったろうな・・・。
「・・本当に、すまねぇ・・・。」
そんな事を考えていた私は——近藤さんの声を聞いていないかった。
お店を出て鴨川の橋を渡っていると、土方さんに声を掛けられる。
「総司と何かあったのか?」
「え・・・?」
「なにやら今朝の君達の雰囲気が違う気がしてな。」
・・凄い洞察力・・上手く隠してたつもりだったのに・・さすが新撰組の副長様。でも正直にいえない・・吾朗さんとの約束だから。
「昨日怪我を見てもらいましたし・・そのせいじゃないですか?」
「そうか・・総司が避けていたにしては随分親しかったからな。」
「・・・何か問題でも?」
「なにも。気になっただけだ。」
「・・・そう、ですか・・。」
・・・土方さん、絶対納得してないって目してる・・。
でも吾朗さんが考えてた・・黒い布の人物が新撰組人間だとしたら、土方さんの可能性だってあり得る。変な事言えないし・・なるべく警戒しておいた方が——
「君に一つ忠告しておく。」
「——え?」
考え込んでいた私はふいに声を掛けられた事で、土方さんの目を真っ直ぐ見てしまう。
——今までで見た事のない、冷たい目だった。
「——あまり総司と関わらない方がいい。」
(・・・・え・・?)
「・・駕籠屋が来たぞ。では、また屯所で。」
それだけ言うと、土方さんは寺田屋までと頼んでくれて振り向かず歩き出して行った。そんな背中を呆然と見つめる私は・・最後の土方さんの言葉が気になって仕方なかった。
(・・今のは・・・一体・・?)
「お、歳ちゃんやんか。」
「来たか。・・早速ですまないが、八神さんは私と一緒に来てほしい。」
「え・・あ、はい、分かりました。」
一緒に来てほしいって・・屯所で話すんじゃないの?
疑問に思っている私を放置して、土方さんは吾朗・・沖田さんを見て指示を出していた。
「お前は今日稽古だったな。早く行け。」
「へいへい。ほな、またなシエルちゃん。」
沖田さんは私の頭を軽くポンポンと触れて、そのまま石段をのんびり登り始めて行った。
”シエルちゃん”、か・・さっきまで呼び捨てだったから少し違和感・・。
「ではこちらへ。」
「は、はい!」
駕籠屋を引き止めた土方さんは、行き先を伝え一緒に駕籠に入った。行く途中は会話もなくて・・・気まずい・・。
(一体何処行くんだろ・・。)
少し走らせた後、駕籠が止まったのに気付く。暖簾が開き外に出ると・・・目の前にある建物は”旭屋”と書かれている祇園のお店だった。祇園に来たのは初めてだったけど、旭屋の話は何となく聞いてたからすぐに分かった。
(どうして・・こんな所に・・・?)
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ。」
店の中に入って案内される。
・・・凄い豪華・・高そうなお店だなぁ。でもここって確か遊女の人と遊ぶお店だよね・・女の私が入っても大丈夫なのかな・・?
キョロキョロしながら歩いていると、お店の最奥の部屋に辿り着いた。開かれた戸の向こうにいたのは・・・。
「よぉ八神さん!久しぶりだなぁ!」
(こ・・近藤さん・・・・?)
「お久しぶりです。あの・・どうしてここに?」
「ここは俺の通い場所なんでな、よくここにいるんだ。今度から何かあった時はいつでも来い!余計な人間はいねぇからな!」
「あ、ありがとうございます。」
「八神さん、こちらに。」
「す、すみません土方さん。」
土方さんが用意してくれた座布団に座り、土方さんも近藤さんの隣に座る。
私が合い向かいに座ると、見た事のある優しい笑顔から真剣な表情に変わる近藤さん。真っ直ぐ私の目を見るその目に、思わず息が詰まる・・それくらい覇気が凄い・・。
「・・昨夜源さんから聞いた。谷の事で随分迷惑をかけちまったなようだな・・。」
(・・あ・・・井上さん、話してくれたんだ・・。)
もしかして近藤さん・・それを気にかけてくれてここに呼んだの?屯所だと怖がるだろうと思って・・・?
「あいつは当分の間、表に出れねぇようにしたから安心してくれ。・・だが、本当にすまなかった。」
「そんな・・近藤さんが謝る事じゃ・・。」
あれは谷が勝手にしてきただけで近藤さんは何も悪くなのに・・。
それでも近藤さんは、視線をわずかに下げていた。
「組織をまとめられてねぇ証拠だ。俺の不甲斐なさが原因さ。」
「・・私の責任でもある。本当に申し訳ない。」
「そっそんなっ・・土方さんまで・・・!」
新撰組のトップ二人に謝られたら・・逆にこっちが申し訳なくなっちゃうよ・・!
「怪我をしたとも聞いた・・大丈夫そうか?」
「は、はい!ごろ・・沖田さんに診てもらいました。」
「そうか。ならよかった。」
(危なっ・・・つい吾朗さんって言いそうになっちゃった・・怪しまれてないよね・・?)
「今後の事なのだが・・君はどうしたい?引き続き屯所に来てもらえると有り難いが・・今回の事もある。君の意見を尊重したいと、私と近藤さんは考えている。」
(今後の事・・・。)
稽古、だよね・・それ以外に私の保全もって事もあるけど・・。
谷の事があって確かに少し怖いし許す気もないけど・・表に出れないって言ってたし・・その内容は聞かないでおこう。
新撰組のみんながああいうわけでもない。それに・・・。
(今は少しでも・・吾朗さんの傍にいたい。)
屯所に行かなくなるときっと会える機会は少なくなる。寺田屋でも仕事もあるし、吾朗さんだって沖田総司としてやる事がある。
二人で一緒に元の時代に戻る為にも・・少しでも傍にいて話をしなきゃ。
「大丈夫です。続けます。」
私の返事に安心したような表情を浮かべる近藤さんは、手を両ひざにつけ頭を下げてくる。
「・・すまねぇな、ありがとよ。」
近藤さんはきっと、新撰組を少しでも強くしたいんだろうな。
その想いが何となく伝わってくるけど・・・でも、なんかそれだけじゃないような・・・なんだろ・・。
「では隊長達には私から伝えておく。・・君はもう寺田へ戻るか?戻るなら駕籠屋を手配する。」
「あっ・・はい、そうします。」
「それじゃまたな、八神さんよ。気ぃつけてな。」
「はい、近藤さん。また。」
立ち上がった私は近藤さんにお辞儀をして、土方さんと部屋を出る。
寺田屋の二人にちゃんと謝らないと・・・何も言わずに心配かけちゃったろうな・・・。
「・・本当に、すまねぇ・・・。」
そんな事を考えていた私は——近藤さんの声を聞いていないかった。
お店を出て鴨川の橋を渡っていると、土方さんに声を掛けられる。
「総司と何かあったのか?」
「え・・・?」
「なにやら今朝の君達の雰囲気が違う気がしてな。」
・・凄い洞察力・・上手く隠してたつもりだったのに・・さすが新撰組の副長様。でも正直にいえない・・吾朗さんとの約束だから。
「昨日怪我を見てもらいましたし・・そのせいじゃないですか?」
「そうか・・総司が避けていたにしては随分親しかったからな。」
「・・・何か問題でも?」
「なにも。気になっただけだ。」
「・・・そう、ですか・・。」
・・・土方さん、絶対納得してないって目してる・・。
でも吾朗さんが考えてた・・黒い布の人物が新撰組人間だとしたら、土方さんの可能性だってあり得る。変な事言えないし・・なるべく警戒しておいた方が——
「君に一つ忠告しておく。」
「——え?」
考え込んでいた私はふいに声を掛けられた事で、土方さんの目を真っ直ぐ見てしまう。
——今までで見た事のない、冷たい目だった。
「——あまり総司と関わらない方がいい。」
(・・・・え・・?)
「・・駕籠屋が来たぞ。では、また屯所で。」
それだけ言うと、土方さんは寺田屋までと頼んでくれて振り向かず歩き出して行った。そんな背中を呆然と見つめる私は・・最後の土方さんの言葉が気になって仕方なかった。
(・・今のは・・・一体・・?)