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「ちょ・・え?シエルちゃ・・え?」
「駄目ですか?」
「やっ、駄目やないけど・・は?」
「じゃあお願いします。先に入ってますね。」
「・・え?・・・・え?」
訳が分からないという顔をしている沖田さんを放置してお風呂場へ向かう。
・・・沖田さん凄い慌ててたなぁ・・ふふっ、あの人のあんな顔見れるなんてある意味良かったかも。
(それに・・。)
沖田さんに話さなきゃいけない事がある。
それには・・・私の体を見てもらう必要があるから。
「さてと・・。」
なにはともあれお風呂に入らなきゃ。
湯を浴びて体をある程度流していると、戸の向こうから音が聞こえてくる。沖田さんが来たのかな?
「シエルちゃん、は、入るで?・・いでっ!」
「・・・?はい、どうぞ・・?」
”いでっ”・・・?
不思議に思って後ろを振り向くと・・・寝巻用の浴衣に着替えて、手拭いで・・目隠ししてる沖田さんがいた。
「え、沖田さん?何で隠してるんですか?」
「な、何でって当たり前やろ!ほ・・惚れとる女の裸やで?!ちょ、直視できるわけあらへんやろ!」
「・・・・あの、それで洗えます・・?」
「気合でなんとかするで!!」
「・・絶対無理ですから外してください。」
「・・・・・。」
手拭いを取り外した沖田さんは、目を一生懸命逸らしながら顔を真っ赤にして頭を掻いている。
「ほ、ほんで・・体やったな?」
「はい。あ、最初に髪を流してほしいです。ちょっと腕上げるの辛くて・・。」
「わ・・分かったわ。」
そう言うと桶にお湯を入れた沖田さんは手を濡らして私の髪に触れてくる。お湯の温度で乾いていた血が緩くなり流れ落ちるのを感じる。
慣れない手つきで流してくれる沖田さんの手がくすぐったい、けどそれがまた嬉しい・・・。
「どや?大丈夫そうか?」
「はい、ありがとうございます。」
「おぉ。・・・ちぃと照れるがの・・。」
そう言いながらも一生懸命流し続けてくれる。
沖田さんのその手が、一瞬止まる。
「・・・この傷は、昔の傷なんか?」
「え?」
沖田さんの言う昔の傷。
それは・・私の体中にある無数の傷跡。
「あぁ・・・はい、仕事していたころの傷です。」
「えらい数やの・・・。」
「そうですね。色々な人達を狙っていましたから。」
・・・話さなきゃ。沖田さんに。
「私とあの人の出会いは、仕事がきっかけだったんです。」
私の言葉に完全に手を止める沖田さん。
「・・・思い出したんか?」
「少しだけ・・ですけど・・沖田さんに会えていなかった時、何枚も何枚も写真を見返していたんです。」
それを繰り返していく内に、僅かではあるけどあの人と何があったのかを思い出してきていた。
部分部分ではあるけど、少しずつ。それを沖田さんに話してどうするかって感じだけど・・話さないといけないって思ったから。
「私は元々あの人の命を狙っていたんです。だけど私には・・殺すことができなかった。」
「・・・何でや?」
「何ででしょうね・・そこはハッキリと思い出せませんけど、きっと思うところがあったんでしょうね。」
「・・それからどないしたんや?」
「仕事のできない殺し屋なんて、組織からしたら邪魔でしかないですよね?・・・私の右肩に刺青があるの分かります?」
「刺青?」
そう言った私は体を少しだけ傾けて右肩を沖田さんに見えやすいようにした。
私の右肩には・・クローバーと月の刺青が彫られている。沖田さんはその刺青にそっと手を触れてくる。きっと見た事のない柄だから不思議なんだろうな・・。
「これは・・・?」
「あの人が私の為にしてくれたんです。元々火傷の跡があったんですけど・・彫師の方にお願いしてくれたんです。火傷は私の罰だから、ずっと背負って生きようと決めてたんですけど・・。」
あの人を殺そうとした罰を忘れない様に。幸せな生活を送れているのは奇跡だと忘れない様に。
「彫師の方が言ってました。”真っ暗だった道を照らした男と一緒にいるのは、アンタにとっての幸せだ”って。・・・あの人はこんな私を許してくれたんです。危険な目に合わせてしまったのに、恨んでないって・・好きだから一緒にいるんだって言ってくれたんです。」
罪人の私を許してくれた。
許してくれただけじゃなくて・・愛してくれた。私の真っ暗だった人生を照らしてくれたのはあの人だった。
・・・なのに・・なのに私は・・。
「私はそんな恩人を・・大切な人の名前を・・・忘れてしまったんです。」
愛していたのに・・・一緒にいたのに・・。
少しだけ思い出したのに、名前だけがどうしても思い出せない。
「・・このまま帰れたとしても、あの人を傷つけるだけ・・思い出せるか不安なんです。でもどうしても——」
「ちょお、待っとくれシエルちゃん・・・。」
「?」
後ろに視線を向けて沖田さんを見ると・・私の刺青を見たまま固まっていた。何かに驚いているように目を見開いている。
「沖田さん?どうしました?」
「・・・な、んでや・・?」
「何でって・・・何がです?」
「な・・んで・・・。」
沖田さんの一言が————
「何でワシは・・・それを知っとるんや・・?」
私の・・・私達の記憶を目覚めさせていく。
「駄目ですか?」
「やっ、駄目やないけど・・は?」
「じゃあお願いします。先に入ってますね。」
「・・え?・・・・え?」
訳が分からないという顔をしている沖田さんを放置してお風呂場へ向かう。
・・・沖田さん凄い慌ててたなぁ・・ふふっ、あの人のあんな顔見れるなんてある意味良かったかも。
(それに・・。)
沖田さんに話さなきゃいけない事がある。
それには・・・私の体を見てもらう必要があるから。
「さてと・・。」
なにはともあれお風呂に入らなきゃ。
湯を浴びて体をある程度流していると、戸の向こうから音が聞こえてくる。沖田さんが来たのかな?
「シエルちゃん、は、入るで?・・いでっ!」
「・・・?はい、どうぞ・・?」
”いでっ”・・・?
不思議に思って後ろを振り向くと・・・寝巻用の浴衣に着替えて、手拭いで・・目隠ししてる沖田さんがいた。
「え、沖田さん?何で隠してるんですか?」
「な、何でって当たり前やろ!ほ・・惚れとる女の裸やで?!ちょ、直視できるわけあらへんやろ!」
「・・・・あの、それで洗えます・・?」
「気合でなんとかするで!!」
「・・絶対無理ですから外してください。」
「・・・・・。」
手拭いを取り外した沖田さんは、目を一生懸命逸らしながら顔を真っ赤にして頭を掻いている。
「ほ、ほんで・・体やったな?」
「はい。あ、最初に髪を流してほしいです。ちょっと腕上げるの辛くて・・。」
「わ・・分かったわ。」
そう言うと桶にお湯を入れた沖田さんは手を濡らして私の髪に触れてくる。お湯の温度で乾いていた血が緩くなり流れ落ちるのを感じる。
慣れない手つきで流してくれる沖田さんの手がくすぐったい、けどそれがまた嬉しい・・・。
「どや?大丈夫そうか?」
「はい、ありがとうございます。」
「おぉ。・・・ちぃと照れるがの・・。」
そう言いながらも一生懸命流し続けてくれる。
沖田さんのその手が、一瞬止まる。
「・・・この傷は、昔の傷なんか?」
「え?」
沖田さんの言う昔の傷。
それは・・私の体中にある無数の傷跡。
「あぁ・・・はい、仕事していたころの傷です。」
「えらい数やの・・・。」
「そうですね。色々な人達を狙っていましたから。」
・・・話さなきゃ。沖田さんに。
「私とあの人の出会いは、仕事がきっかけだったんです。」
私の言葉に完全に手を止める沖田さん。
「・・・思い出したんか?」
「少しだけ・・ですけど・・沖田さんに会えていなかった時、何枚も何枚も写真を見返していたんです。」
それを繰り返していく内に、僅かではあるけどあの人と何があったのかを思い出してきていた。
部分部分ではあるけど、少しずつ。それを沖田さんに話してどうするかって感じだけど・・話さないといけないって思ったから。
「私は元々あの人の命を狙っていたんです。だけど私には・・殺すことができなかった。」
「・・・何でや?」
「何ででしょうね・・そこはハッキリと思い出せませんけど、きっと思うところがあったんでしょうね。」
「・・それからどないしたんや?」
「仕事のできない殺し屋なんて、組織からしたら邪魔でしかないですよね?・・・私の右肩に刺青があるの分かります?」
「刺青?」
そう言った私は体を少しだけ傾けて右肩を沖田さんに見えやすいようにした。
私の右肩には・・クローバーと月の刺青が彫られている。沖田さんはその刺青にそっと手を触れてくる。きっと見た事のない柄だから不思議なんだろうな・・。
「これは・・・?」
「あの人が私の為にしてくれたんです。元々火傷の跡があったんですけど・・彫師の方にお願いしてくれたんです。火傷は私の罰だから、ずっと背負って生きようと決めてたんですけど・・。」
あの人を殺そうとした罰を忘れない様に。幸せな生活を送れているのは奇跡だと忘れない様に。
「彫師の方が言ってました。”真っ暗だった道を照らした男と一緒にいるのは、アンタにとっての幸せだ”って。・・・あの人はこんな私を許してくれたんです。危険な目に合わせてしまったのに、恨んでないって・・好きだから一緒にいるんだって言ってくれたんです。」
罪人の私を許してくれた。
許してくれただけじゃなくて・・愛してくれた。私の真っ暗だった人生を照らしてくれたのはあの人だった。
・・・なのに・・なのに私は・・。
「私はそんな恩人を・・大切な人の名前を・・・忘れてしまったんです。」
愛していたのに・・・一緒にいたのに・・。
少しだけ思い出したのに、名前だけがどうしても思い出せない。
「・・このまま帰れたとしても、あの人を傷つけるだけ・・思い出せるか不安なんです。でもどうしても——」
「ちょお、待っとくれシエルちゃん・・・。」
「?」
後ろに視線を向けて沖田さんを見ると・・私の刺青を見たまま固まっていた。何かに驚いているように目を見開いている。
「沖田さん?どうしました?」
「・・・な、んでや・・?」
「何でって・・・何がです?」
「な・・んで・・・。」
沖田さんの一言が————
「何でワシは・・・それを知っとるんや・・?」
私の・・・私達の記憶を目覚めさせていく。