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「沖田さんっ!待って!」
「・・・シエルちゃん・・?」
私の呼び止める声に気付いてくれた沖田さんは、息の乱れを落ち着かせようとする私の近くまで駆け寄ってくれた。
良かった・・・間に合った・・・・!
「何しとんのや・・って・・・!何も履いとらんやんか!足の裏怪我するやろ?!」
「はぁっ・・はぁっ・・ま、間に合わないって・・思って・・!」
「・・何で追いかけてきたんや。」
「・・おき、たさん・・・わた、し・・・!」
「ワシとおると忘れてしまうんやろ?」
「っ・・!」
・・・やっぱり・・沖田さんは私達の会話を聞いてたんだ。
斎藤さんが言ってた通り私が心配で・・また一緒におにぎりを食べようと思って・・来てみたら・・・あんな話・・!
私の足を心配して屈んで見てくれているけど・・私には目を合わせようとしてくれない。
上から見える沖田さんの目は・・悲しみに染まってた。
「一ちゃんの言う通りや。何でワシに話さなかったんや・・そない大事な事、何で言わんかったんや。」
沖田さんの声は今までに聞いた事のない静かな・・・悲しみと怒りが込められていた。
私は・・そんな沖田さんの顔を見たくなかったから・・・そんな声を聞きたくなかったから・・!
「沖田、さん・・聞いて、私は——」
「——ワシはワシのせいでシエルちゃんが我慢して傷ついとんのを見たない。ワシのせいで悩むんやったら・・原因の元は傍に居らん方がええやろ。」
「・・っ・・・!」
待って・・・待って沖田さん・・!私はそういう事を言いたいんじゃない・・・!
「大事な人言うとってたもんな。そんな大事な奴を、ワシなんかのせいで忘れるなんて心底嫌やろ?黙ってたんは言い辛かっただけやった・・邪魔やけど言えんかった。そうなんやろ?せやろ?」
違う・・!邪魔だなんて一度も思った事ない・・!
そんな事思ってないよ・・!!
「違うの沖田さんっ!お願いだから話を——」
「——何がちゃうんや。言うてみ。」
「——っ・・!」
やっと合った目は・・とても恐ろしかった。
いつも私に向けてくれる優しい目じゃない。怒りだらけの恐ろしい鋭い目だった。
でも・・ここで怯んだら、ここで怖がってたら・・・もう沖田さんと話せない気がした私はそんな目を真っ直ぐ見る。
「私・・私は沖田さんが・・・!」
沖田さんが————
『愛しとるでシエル。俺が一生守る。』
「——っ?!」
突然脳裏に浮かぶあの人の顔。
満面の笑みで私を見てくれている優しい笑顔。その笑顔が・・・沖田さんへの想いを止めてくる。思い出してしまった笑顔を・・裏切れない・・・。
(裏切っては・・いけない・・・。)
私はもう・・・黙る事しかできなかった。
「・・・・・。」
黙るという事は・・肯定してしまう。そんな事ないのに。そんな事考えた事ないのに。
でも沖田さんにとっては・・・それは肯定と一緒・・・。
「安心せぇ。ワシやなくても一ちゃん達がおるわ。明日の稽古は顔出さんから、屯所に来るんやで。せやないと勇ちゃん達に怒られてまうからな。」
そう言って静かに立ち上がる沖田さん。
顔を上げると・・もう私に背を向けていた。
「無事戻れるとええな。ワシはもう・・二度とシエルちゃんの前に現れへんから。」
静かに歩き始める沖田さんに手を差し伸べても——
「沖田さん・・・!」
もう・・・その背中には届かない。
「・・っ・・う・・うぅっ・・!」
翌日。
私は斎藤さんと共に屯所へ向かった。斎藤さんが気を遣ってくれて「休んだらどうだ?」って言われたけど・・近藤さんと約束した手前、休むことはできなかった。
屯所について一番隊と合流すると・・・そこに沖田さんの姿はなかった。
その次も・・その次も・・・屯所でも街でも、沖田さんに出会える事はなかった。
(・・でもきっと、これが正しいんだ。)
私がするべき事は、元の時代に戻る方法を探す事。
沖田さんに頼る事じゃない。想いを伝える事じゃない。分かってる・・頭では分かっているけど・・・でも私は・・。
「八神さん?どうしました?」
「・・あ・・・。」
いけない・・今は六番隊との稽古中だ。集中しなきゃ・・。
「大丈夫です、すみません。」
「いえ・・自分で最後でしたので、本日は以上になります。お部屋で休まれますか?」
「・・いいえ、大丈夫です。井戸をお借りしたら帰りますので。」
「分かりました。では井上隊長には自分から伝えておきますので、どうか帰りにはお気をつけを。」
「ありがとうございます。」
(土蔵の近くに確か井戸あったよね・・・。)
井戸まで移動した私は水を汲み、水に手をつけ顔を濡らす。
しっかりしろ・・・いつまでクヨクヨしてても仕方ない・・でもやっぱり・・・。
「・・はぁ・・・。」
「お?珍しく一人じゃねぇか八神さんよぉ。」
「・・・?」
後ろから声を掛けられ振り返ると、赤い着物に足を大きく露出させた男が立っていた。
・・・この人って確か・・七番隊の・・・。
「・・谷さん、でしたよね。」
「へへっ、相変わらずいい女だなぁ~・・アンタみてぇな女と一度遊んでみてぇと思ってたんだよ。」
「・・・・何ですか急に。」
「もう帰るんだろ?俺が送ってやるよ。遊んだついでに・・な?」
不気味なニヤリ顔で私の体を舐めまわすように近づきながら見てくる。
そういえば前に「谷に気をつけろ」って言われてたんだった・・。女好きでしょうもない奴だって・・・。
「なぁ?いいだろぉ?」
少しずつ近づいてくる谷さん。後退りをするけど、すぐ背後に土蔵があるせいでこれ以上逃げられない。
(・・それ以上近づくなら・・・。)
静かに隠していた短刀を構えようとしたその時——
「そこで何をしている。」
「・・あ・・・。」
廊下からこちらを見ている人物がいた。
「・・井上さん・・・。」
「ちっ・・何の用だよ。」
「八神、六番隊の稽古は終わったのか?」
「え・・・えぇ、終わりました。」
「なら少し話をしよう。俺の部屋へ行くぞ。」
「あ・・は、はい!」
手招きをしてくる井上さんの元へ近付き、そのまま部屋へ向かって歩いて行く。ちらりと後ろを見ると・・谷さんはこっちを睨みつけている。
何なのあの人・・・凄い嫌なんだけど・・。
「あまり見るな。行くぞ。」
「——!」
小さな声で呟く井上さんを見ると、私を見ていた。
・・・もしかして、助けてくれたの・・?
「・・ありがとう、ございます・・・。」
「気にすることはない。」
優しい笑顔でそう言ってくれる井上さん。
その優しさに感謝しながら、私は黙って井上さんの後をついて行く。
その時ふと沖田さんを探している自分に嫌気をさしながら・・。
「・・・シエルちゃん・・?」
私の呼び止める声に気付いてくれた沖田さんは、息の乱れを落ち着かせようとする私の近くまで駆け寄ってくれた。
良かった・・・間に合った・・・・!
「何しとんのや・・って・・・!何も履いとらんやんか!足の裏怪我するやろ?!」
「はぁっ・・はぁっ・・ま、間に合わないって・・思って・・!」
「・・何で追いかけてきたんや。」
「・・おき、たさん・・・わた、し・・・!」
「ワシとおると忘れてしまうんやろ?」
「っ・・!」
・・・やっぱり・・沖田さんは私達の会話を聞いてたんだ。
斎藤さんが言ってた通り私が心配で・・また一緒におにぎりを食べようと思って・・来てみたら・・・あんな話・・!
私の足を心配して屈んで見てくれているけど・・私には目を合わせようとしてくれない。
上から見える沖田さんの目は・・悲しみに染まってた。
「一ちゃんの言う通りや。何でワシに話さなかったんや・・そない大事な事、何で言わんかったんや。」
沖田さんの声は今までに聞いた事のない静かな・・・悲しみと怒りが込められていた。
私は・・そんな沖田さんの顔を見たくなかったから・・・そんな声を聞きたくなかったから・・!
「沖田、さん・・聞いて、私は——」
「——ワシはワシのせいでシエルちゃんが我慢して傷ついとんのを見たない。ワシのせいで悩むんやったら・・原因の元は傍に居らん方がええやろ。」
「・・っ・・・!」
待って・・・待って沖田さん・・!私はそういう事を言いたいんじゃない・・・!
「大事な人言うとってたもんな。そんな大事な奴を、ワシなんかのせいで忘れるなんて心底嫌やろ?黙ってたんは言い辛かっただけやった・・邪魔やけど言えんかった。そうなんやろ?せやろ?」
違う・・!邪魔だなんて一度も思った事ない・・!
そんな事思ってないよ・・!!
「違うの沖田さんっ!お願いだから話を——」
「——何がちゃうんや。言うてみ。」
「——っ・・!」
やっと合った目は・・とても恐ろしかった。
いつも私に向けてくれる優しい目じゃない。怒りだらけの恐ろしい鋭い目だった。
でも・・ここで怯んだら、ここで怖がってたら・・・もう沖田さんと話せない気がした私はそんな目を真っ直ぐ見る。
「私・・私は沖田さんが・・・!」
沖田さんが————
『愛しとるでシエル。俺が一生守る。』
「——っ?!」
突然脳裏に浮かぶあの人の顔。
満面の笑みで私を見てくれている優しい笑顔。その笑顔が・・・沖田さんへの想いを止めてくる。思い出してしまった笑顔を・・裏切れない・・・。
(裏切っては・・いけない・・・。)
私はもう・・・黙る事しかできなかった。
「・・・・・。」
黙るという事は・・肯定してしまう。そんな事ないのに。そんな事考えた事ないのに。
でも沖田さんにとっては・・・それは肯定と一緒・・・。
「安心せぇ。ワシやなくても一ちゃん達がおるわ。明日の稽古は顔出さんから、屯所に来るんやで。せやないと勇ちゃん達に怒られてまうからな。」
そう言って静かに立ち上がる沖田さん。
顔を上げると・・もう私に背を向けていた。
「無事戻れるとええな。ワシはもう・・二度とシエルちゃんの前に現れへんから。」
静かに歩き始める沖田さんに手を差し伸べても——
「沖田さん・・・!」
もう・・・その背中には届かない。
「・・っ・・う・・うぅっ・・!」
翌日。
私は斎藤さんと共に屯所へ向かった。斎藤さんが気を遣ってくれて「休んだらどうだ?」って言われたけど・・近藤さんと約束した手前、休むことはできなかった。
屯所について一番隊と合流すると・・・そこに沖田さんの姿はなかった。
その次も・・その次も・・・屯所でも街でも、沖田さんに出会える事はなかった。
(・・でもきっと、これが正しいんだ。)
私がするべき事は、元の時代に戻る方法を探す事。
沖田さんに頼る事じゃない。想いを伝える事じゃない。分かってる・・頭では分かっているけど・・・でも私は・・。
「八神さん?どうしました?」
「・・あ・・・。」
いけない・・今は六番隊との稽古中だ。集中しなきゃ・・。
「大丈夫です、すみません。」
「いえ・・自分で最後でしたので、本日は以上になります。お部屋で休まれますか?」
「・・いいえ、大丈夫です。井戸をお借りしたら帰りますので。」
「分かりました。では井上隊長には自分から伝えておきますので、どうか帰りにはお気をつけを。」
「ありがとうございます。」
(土蔵の近くに確か井戸あったよね・・・。)
井戸まで移動した私は水を汲み、水に手をつけ顔を濡らす。
しっかりしろ・・・いつまでクヨクヨしてても仕方ない・・でもやっぱり・・・。
「・・はぁ・・・。」
「お?珍しく一人じゃねぇか八神さんよぉ。」
「・・・?」
後ろから声を掛けられ振り返ると、赤い着物に足を大きく露出させた男が立っていた。
・・・この人って確か・・七番隊の・・・。
「・・谷さん、でしたよね。」
「へへっ、相変わらずいい女だなぁ~・・アンタみてぇな女と一度遊んでみてぇと思ってたんだよ。」
「・・・・何ですか急に。」
「もう帰るんだろ?俺が送ってやるよ。遊んだついでに・・な?」
不気味なニヤリ顔で私の体を舐めまわすように近づきながら見てくる。
そういえば前に「谷に気をつけろ」って言われてたんだった・・。女好きでしょうもない奴だって・・・。
「なぁ?いいだろぉ?」
少しずつ近づいてくる谷さん。後退りをするけど、すぐ背後に土蔵があるせいでこれ以上逃げられない。
(・・それ以上近づくなら・・・。)
静かに隠していた短刀を構えようとしたその時——
「そこで何をしている。」
「・・あ・・・。」
廊下からこちらを見ている人物がいた。
「・・井上さん・・・。」
「ちっ・・何の用だよ。」
「八神、六番隊の稽古は終わったのか?」
「え・・・えぇ、終わりました。」
「なら少し話をしよう。俺の部屋へ行くぞ。」
「あ・・は、はい!」
手招きをしてくる井上さんの元へ近付き、そのまま部屋へ向かって歩いて行く。ちらりと後ろを見ると・・谷さんはこっちを睨みつけている。
何なのあの人・・・凄い嫌なんだけど・・。
「あまり見るな。行くぞ。」
「——!」
小さな声で呟く井上さんを見ると、私を見ていた。
・・・もしかして、助けてくれたの・・?
「・・ありがとう、ございます・・・。」
「気にすることはない。」
優しい笑顔でそう言ってくれる井上さん。
その優しさに感謝しながら、私は黙って井上さんの後をついて行く。
その時ふと沖田さんを探している自分に嫌気をさしながら・・。