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「なぁシエルちゃん、何かあったん?」
「えっ・・な、何で?」
「昨日帰ってきてからずっと元気があらへんもん。」
「・・ご、ごめんね・・おりょうちゃん・・・。」
「謝る事あらへんけど・・今日はもう休んだ方がええんとちゃう?」
「・・・うん、そうさせてもらうね。ありがとう。」
おりょうちゃんの言われた通り大人しく部屋に戻る。
昨日の出来事が頭の中でぐるぐる回って仕事に集中できない・・。
(・・明日は、一番隊と稽古・・・。)
もし私の考えた仮説が正しければ・・沖田さんと一緒にいれば、元の時代の事をどんどん忘れてしまう・・・。
忘れたら・・もう私は元の時代に戻れない・・だけど・・・。
(沖田さんの・・傍にいたい・・・。)
・・・私は・・どうすればいいの・・・・。
沖田さん本人に相談したい。話したい。でも・・私の事を好いてくれている沖田さんに・・「あなたが原因で忘れてしまう」なんて酷い事言えない・・ショックを受けるに決まってる。
でも・・・このまま話せないまま過ごすのも・・記憶を失っていくだけ・・・どうすれば・・誰か・・・。
「——八神、いるか?」
「・・え・・・?」
この声・・・斎藤さん・・?部屋の前にいるの・・?
「入っていいか?」
「は、はい・・どうぞ。」
静かに引き戸を開けて入ってきた斎藤さんは、普段部屋で過ごしている浴衣を着ていた。その手にはいつも飲んでいる”土佐鶴”を持っている。
「一緒にどうだ?今日は誰かと飲みてぇ気分なんだ。」
「あはは、珍しいですね。」
いつも一人で飲んでるのに本当珍しい・・。
でも・・・今は誰かといるのが凄い有難い・・・。
「いいですよ、飲みましょう!」
「ふっ、そうこなくちゃな。」
斎藤さんは2人分の盃を持ってきていて、1つを私に渡してお酒を注いでくれた。
お酒なんて本当久しぶり・・。自分の分も注いだ斎藤さんと静かに乾杯をし、お酒を口につける。
「・・・辛っ!」
「初めてにしてはよく飲めてるな。ゆっくりでいい。」
「はい・・・ふぅ・・。」
この人・・・これ毎晩ぐいぐい飲んでるんだよね・・?
お酒強すぎでしょ・・・。
それから暫く飲んでいると、斎藤さんは少し陽気になって話してくる。
「ここでの生活はどうだ?慣れたか?」
「そうですねぇ。稽古と寺田屋の往復で疲れますけど・・。」
「ふっ。そうかい。」
それから話していたのは、私と会う前の出来事や京での話。私がいた時代の話で盛り上がった。
「ほぉ・・お前の時代には刀がないのか?」
「武士や侍は何というか・・歴史上の存在になってますね。海外の方に人気で見様見真似で着物を着たりしてますよ。」
「不思議なもんだな・・・この国にも欧米の奴等が来るのか。」
「私も行った事ありますよ。元々私のいた組織は中国系でしたし、その関係で色々巡っていましたから。」
「”ちゅうごく”?」
「あ・・えっと、今で言うと清です。」
「・・呼び方が変わるのか・・・。」
まぁ確かに私の時代では欧米ってあんまり言わないし・・・時代によって呼ばれ方が変わるのは面白いよなぁ。
「そういえば裏の仕事をしていたと言っていたな。この国に来たのはそれがきっかけなのか?」
「あっ、はい!その時に桐生さんって方と・・・・あれ・・。」
「・・・・。」
えっと・・・・あれ・・?桐生さんともう1人・・・。
もう1人・・誰だっけ・・・?
「・・・八神。お前やっぱり何かあったのか?」
「・・・え・・?」
「沖田が言っていたぞ。様子がおかしいってな。俺も感じてはいたが・・自分の時代に帰ろうとする気配がない。まるで忘れていたかのようだ。」
「・・っ・・!」
嘘・・・気付いてたの・・・?
「何があった。」
斎藤さんは私の目を真っ直ぐ見てくる。
(・・・・。)
話し、たい・・・私の仮説を・・誰かに聞いてもらいたい・・。
「・・・あ、の・・。」
「・・・つまり沖田の傍にいると駄目だって事か?」
斎藤さんに全部を説明した。
元の時代の人物で沖田さんそっくりの人物がいると。その人物は私の大切な人なのに・・・最近まで忘れていた事。その原因は、きっと沖田さんである・・・という事・・・全部。
斎藤さんは全部聞いてくれて、顎髭を触れながら考えている。
「・・もし本当だったら・・・私は、どうすればいいのか分からないんです・・・。」
だって・・・だって、私は・・沖田さんを・・・。
「どうしてそれを沖田本人に言わない?」
「・・・?!」
何を・・言ってるの・・・?!
「そんな事言えるわけないじゃないですか!だって・・!」
「沖田なら全てを受け入れてくれるはずだ。そして一緒に悩み、一緒に考えてくれる。」
「そんなわけっ・・!」
「それよりもアイツはきっと、自分が関わっているのに知らされない方が悲しむだろうな。俺もアイツとの付き合いはまだ短いが・・お前が1人で悩むことの方がきっと嫌がるぜ。」
何で・・・何でそうなるの?
私は沖田さんを傷つけたくない・・自分と一緒にいて記憶が薄れるなんて事話したら傷つくでしょ・・?自分のせいでってなるでしょ?あの人はそうならないって言うの・・・?
「私はっ——」
「——誰だ。」
「・・・?」
突然斎藤さんは部屋の入り口を睨みつけていた。
(・・・誰か、いる・・?)
静かに戸に近付く斎藤さんは、引き戸をゆっくり開ける・・・けど、そこには誰もいなかった。
気のせい・・だった・・・?でも斎藤さん程の人が間違えるわけないし・・・。
「・・・これは・・?」
「どうしました・・?」
「いや、何か包みが置いてあるのだが・・見覚えあるか?」
「・・・?」
斎藤さんは入り口に置かれていた包みを持ち上げる。その包みに・・・・私は血の気が引いていく。
(ま、さか・・・。)
「——っ!!」
「お、おい八神?!」
いてもたってもいられなくなった私は、斎藤さんを無視して部屋を飛び出す。階段を下りて何も履かず、素足で行ったであろう道を目指し走る。
(まさか・・まさか・・・!)
伏見を走り洛外に入る門の近くまでやってきた。
足の裏が痛い。小石や固い土で切れているのが分かる。でもそんなの今はどうでもいい。今は早く行かなきゃ。あの人に追い付かなきゃ・・!
(あの包みは昨日見たやつと同じ。)
あの人が私の為に持ってきてくれた・・・美味しいおにぎりが入っていた、あの包み。
門を抜けて細道に入ると・・・その人物はいた。
「——沖田さんっ!!」
「えっ・・な、何で?」
「昨日帰ってきてからずっと元気があらへんもん。」
「・・ご、ごめんね・・おりょうちゃん・・・。」
「謝る事あらへんけど・・今日はもう休んだ方がええんとちゃう?」
「・・・うん、そうさせてもらうね。ありがとう。」
おりょうちゃんの言われた通り大人しく部屋に戻る。
昨日の出来事が頭の中でぐるぐる回って仕事に集中できない・・。
(・・明日は、一番隊と稽古・・・。)
もし私の考えた仮説が正しければ・・沖田さんと一緒にいれば、元の時代の事をどんどん忘れてしまう・・・。
忘れたら・・もう私は元の時代に戻れない・・だけど・・・。
(沖田さんの・・傍にいたい・・・。)
・・・私は・・どうすればいいの・・・・。
沖田さん本人に相談したい。話したい。でも・・私の事を好いてくれている沖田さんに・・「あなたが原因で忘れてしまう」なんて酷い事言えない・・ショックを受けるに決まってる。
でも・・・このまま話せないまま過ごすのも・・記憶を失っていくだけ・・・どうすれば・・誰か・・・。
「——八神、いるか?」
「・・え・・・?」
この声・・・斎藤さん・・?部屋の前にいるの・・?
「入っていいか?」
「は、はい・・どうぞ。」
静かに引き戸を開けて入ってきた斎藤さんは、普段部屋で過ごしている浴衣を着ていた。その手にはいつも飲んでいる”土佐鶴”を持っている。
「一緒にどうだ?今日は誰かと飲みてぇ気分なんだ。」
「あはは、珍しいですね。」
いつも一人で飲んでるのに本当珍しい・・。
でも・・・今は誰かといるのが凄い有難い・・・。
「いいですよ、飲みましょう!」
「ふっ、そうこなくちゃな。」
斎藤さんは2人分の盃を持ってきていて、1つを私に渡してお酒を注いでくれた。
お酒なんて本当久しぶり・・。自分の分も注いだ斎藤さんと静かに乾杯をし、お酒を口につける。
「・・・辛っ!」
「初めてにしてはよく飲めてるな。ゆっくりでいい。」
「はい・・・ふぅ・・。」
この人・・・これ毎晩ぐいぐい飲んでるんだよね・・?
お酒強すぎでしょ・・・。
それから暫く飲んでいると、斎藤さんは少し陽気になって話してくる。
「ここでの生活はどうだ?慣れたか?」
「そうですねぇ。稽古と寺田屋の往復で疲れますけど・・。」
「ふっ。そうかい。」
それから話していたのは、私と会う前の出来事や京での話。私がいた時代の話で盛り上がった。
「ほぉ・・お前の時代には刀がないのか?」
「武士や侍は何というか・・歴史上の存在になってますね。海外の方に人気で見様見真似で着物を着たりしてますよ。」
「不思議なもんだな・・・この国にも欧米の奴等が来るのか。」
「私も行った事ありますよ。元々私のいた組織は中国系でしたし、その関係で色々巡っていましたから。」
「”ちゅうごく”?」
「あ・・えっと、今で言うと清です。」
「・・呼び方が変わるのか・・・。」
まぁ確かに私の時代では欧米ってあんまり言わないし・・・時代によって呼ばれ方が変わるのは面白いよなぁ。
「そういえば裏の仕事をしていたと言っていたな。この国に来たのはそれがきっかけなのか?」
「あっ、はい!その時に桐生さんって方と・・・・あれ・・。」
「・・・・。」
えっと・・・・あれ・・?桐生さんともう1人・・・。
もう1人・・誰だっけ・・・?
「・・・八神。お前やっぱり何かあったのか?」
「・・・え・・?」
「沖田が言っていたぞ。様子がおかしいってな。俺も感じてはいたが・・自分の時代に帰ろうとする気配がない。まるで忘れていたかのようだ。」
「・・っ・・!」
嘘・・・気付いてたの・・・?
「何があった。」
斎藤さんは私の目を真っ直ぐ見てくる。
(・・・・。)
話し、たい・・・私の仮説を・・誰かに聞いてもらいたい・・。
「・・・あ、の・・。」
「・・・つまり沖田の傍にいると駄目だって事か?」
斎藤さんに全部を説明した。
元の時代の人物で沖田さんそっくりの人物がいると。その人物は私の大切な人なのに・・・最近まで忘れていた事。その原因は、きっと沖田さんである・・・という事・・・全部。
斎藤さんは全部聞いてくれて、顎髭を触れながら考えている。
「・・もし本当だったら・・・私は、どうすればいいのか分からないんです・・・。」
だって・・・だって、私は・・沖田さんを・・・。
「どうしてそれを沖田本人に言わない?」
「・・・?!」
何を・・言ってるの・・・?!
「そんな事言えるわけないじゃないですか!だって・・!」
「沖田なら全てを受け入れてくれるはずだ。そして一緒に悩み、一緒に考えてくれる。」
「そんなわけっ・・!」
「それよりもアイツはきっと、自分が関わっているのに知らされない方が悲しむだろうな。俺もアイツとの付き合いはまだ短いが・・お前が1人で悩むことの方がきっと嫌がるぜ。」
何で・・・何でそうなるの?
私は沖田さんを傷つけたくない・・自分と一緒にいて記憶が薄れるなんて事話したら傷つくでしょ・・?自分のせいでってなるでしょ?あの人はそうならないって言うの・・・?
「私はっ——」
「——誰だ。」
「・・・?」
突然斎藤さんは部屋の入り口を睨みつけていた。
(・・・誰か、いる・・?)
静かに戸に近付く斎藤さんは、引き戸をゆっくり開ける・・・けど、そこには誰もいなかった。
気のせい・・だった・・・?でも斎藤さん程の人が間違えるわけないし・・・。
「・・・これは・・?」
「どうしました・・?」
「いや、何か包みが置いてあるのだが・・見覚えあるか?」
「・・・?」
斎藤さんは入り口に置かれていた包みを持ち上げる。その包みに・・・・私は血の気が引いていく。
(ま、さか・・・。)
「——っ!!」
「お、おい八神?!」
いてもたってもいられなくなった私は、斎藤さんを無視して部屋を飛び出す。階段を下りて何も履かず、素足で行ったであろう道を目指し走る。
(まさか・・まさか・・・!)
伏見を走り洛外に入る門の近くまでやってきた。
足の裏が痛い。小石や固い土で切れているのが分かる。でもそんなの今はどうでもいい。今は早く行かなきゃ。あの人に追い付かなきゃ・・!
(あの包みは昨日見たやつと同じ。)
あの人が私の為に持ってきてくれた・・・美味しいおにぎりが入っていた、あの包み。
門を抜けて細道に入ると・・・その人物はいた。
「——沖田さんっ!!」