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「こないなとこで何してんねや?!・・!?肩斬られたんか?!血を止めな!!」
沖田さんは慣れた手つきで自身の袴を切り破って私の肩傷を縛ってくれる。
沖田さん・・・私に気付いたの・・?
「危ないやろ!!とにかく出るで!!」
「・・わ、私は・・・。」
「ええから来い!!」
沖田さんに無理矢理手を引かれた私は、そのまま黙ってついて行くしかなかった。
(・・沖田さんの手・・暖かい・・・。)
振り払わなきゃ。離れなきゃ。
そう思いつつも、私は振り払う事が出来なかった。
走って逃げた先は、小さな家。
屯所からそんなに離れていないこじんまりとした小さな家だった。
「・・ここは・・?」
「ワシの家や。まぁただ寝るだけの場所になっとるがの・・とにかく今は治療が先や、肩出してみ。」
そう言う沖田さんは用意してきた包帯を手に取り私の肩に触れようとしてくる。
そんな沖田さんの手を・・私は振り払ってしまう。
「なっ・・シエルちゃん・・・?」
「・・大丈夫です。ありがとうございました。」
ここにいちゃ駄目。顔を見ちゃ駄目。折角人形になれてるのにまた戻っちゃう。ここを離れなきゃ。独りにならなきゃ。
出て行こうと立ち上がる私の腕を、沖田さんも立ち上がりながら掴みかかってくる。
「何が大丈夫なんや!!放っておいたら動かんくなるかもしれんのやぞ?!ええから見せろ!!」
・・違う、そうじゃない・・・。
「昔の私はそれが当たり前でした。だから大丈夫です。」
「シエルちゃん・・!」
「どうして・・どうして放っておいてくれないの?」
「怪我人を放っておけるか!ええから座れ、早くせな・・!」
違う・・・違う!!
「そうじゃない!!どうして沖田さんも”あの人”も私を放っておかなかったの?!」
「・・・シエルちゃん・・?」
「あの時もそうだった!私が殺そうとした時も・・嘘をついたあの時も・・!沖田さんだって、私はあなたから逃げたのに!傷つけたのに!なのに・・なのに何で?!」
どうしてこの人は私の手を離さないの?
あの人そっくりのあなたに優しくされたら・・私はその優しさに甘えてしまう。甘えてしまって・・私の心の寂しさを埋める為に利用してしまう。
そんなの嫌。絶対に嫌。沖田さんを傷つけたくない、あの人と同じ顔のあなたを・・傷つけたくない。
感情の止まらない私は、ポロポロ涙を流しながら沖田さんに訴えかける。
「あの人そっくりのあなたを利用したくない・・だから離れたのに・・!何で優しくするんですか?!何で近づいてくるんですか?!放っておいて・・放っておいてよ!!あの頃みたいに独りでいたいの!!感情のない人形でいたいの!!そうすれば苦しまなくて済むんだから!!誰にも迷惑をかけなくていいんだから!!」
これ以上私を人間に戻さないで。
お願いだから・・独りにして・・・!
そう願っているのに・・沖田さんは私の腕を離さなかった。
「離して・・離してよぉ・・!!」
私は次第に抵抗する力が無くなってきて、そのままその場で泣きながら座り込む。
「お願いします・・お願いだから、独りにして・・。」
「・・・・・。」
「・・沖田さん・・・お願い、だから・・。」
「・・・それは出来ひんよ。」
「・・え・・——?!」
気付いた時には、私は沖田さんに抱きしめられていた。
抱きしめられた衝撃で肩の傷に痛みを感じたけど、そんなの気にならなかった。
その暖かさが、沖田さんの鼓動を感じる事が・・壊れた心を落ち着かせてくれている。
「・・沖田・・さん・・・?」
「利用してもええやろが。無理に独りになる必要なんかあらへん。ワシを利用してシエルちゃんが楽になれるんなら・・ワシはそれでええ。」
・・・何を・・言ってるの・・?
「駄目ですっ・・そんな事、できなっ・・。」
「シエルちゃんやって、ホンマは嫌なんやろ?」
「・・え・・?」
「ホンマは独りになりたくないんやろ?」
「・・あ・・・。」
『ホンマは人なんか殺しとうないんやろ?』
・・・同じ・・覚えてる・・あの夜の、あの人と同じ・・。
「目ぇ見れば分かる。寂しいって目をしとるで。腹ん中は・・独りは嫌なんやろ?」
「・・・沖田さん・・。」
「・・・シエルちゃんの大事な奴に似とるワシとおるんは確かに辛いと思う。せやから離れようとしたんやろ?大事な男とちゃう奴に甘えるんが嫌なんやったんやろ?そうなんやろ?」
・・・え・・・?どうして・・・。
沖田さんに何も話してないのに・・・。
「・・どうして、知ってるんですか・・?」
「源さんから聞いた。茶屋で会ってシエルちゃんと話したってな。・・辛い思いさせてすまん。しんどいことさせてすまん。せやけど・・せやけどワシは・・・。」
沖田さんは私の事を強く抱きしめながら、耳元で囁く。
「惚れてしもうた女が泣く顔やしんどい顔をしとるんのを・・見とうないんや。」
「・・・え・・?」
今、何て・・・・え・・惚れ・・?
「ワシはシエルちゃんが好きや。ワシはシエルちゃんを守りたい。せやから・・もう大丈夫や。独りでよう頑張った・・ホンマに頑張った。」
力強く抱きしめながらも優しく私の頭を撫でてくれる沖田さん。
初めて会って泣いてしまった時と同じように・・その手は私を安心させてくれる。
「・・そんなの・・沖田さんが、辛いだけ・・。」
「シエルちゃんが独りで苦しむよりマシや。」
「・・甘え、ちゃいますよ・・・私・・。」
「ええでぇ?存分に甘えてきぃや。」
「・・・私、最低な女ですね・・。」
「そんな事あらへん。自分の心を守る為の手段や。」
「・・馬鹿ですね、沖田さん。」
「放っとけや。」
「・・沖田さん・・・。」
「ん?」
「・・ありがとう・・ございます・・。」
「・・・おう。」
その優しさに身を寄せる私は、体の奥底が暖かくなるのが分かる。
自然と腕を後ろに回した私は、そっと沖田さんに抱きつく。
少しの間抱きしめ合った後、沖田さんは私から少し離れて優しい笑顔で見てくれる。
「・・とにかく治療や。肩、出してみ?」
「・・はい。」
私は沖田さんに左肩を見せて、沖田さんに包帯を巻いてもらう。慣れた手つきで巻き終えた沖田さんは、私に寝巻用の浴衣を出した後布団を用意してくれる。
「ワシは一旦池田屋に戻らな。抜けてしもうたからの・・歳ちゃんに怒られてまうわ。」
「大丈夫なんですか・・?」
「シエルちゃん助けた言えば余裕やろ!まぁそれでもアカンやろが・・とにかく今夜はここで寝とき。」
玄関で草鞋を履いた沖田さんは、ついてきた私の頭を優しく撫でてくれる。
「ええ子でゆっくり休むんやで。おやすみ。」
「・・はい・・おやすみなさい、沖田さん。」
池田屋へ向かう沖田さんを見送った私は、用意してくれた浴衣に着替えて布団に潜りこむ。
(・・沖田さんの匂い・・・。)
2週間ぶりの布団のおかげか、張り詰めていた心が落ち着いたからなのか。
その日の私は悪夢を見る事がなく、深い眠りにつくことができた。
沖田さんは慣れた手つきで自身の袴を切り破って私の肩傷を縛ってくれる。
沖田さん・・・私に気付いたの・・?
「危ないやろ!!とにかく出るで!!」
「・・わ、私は・・・。」
「ええから来い!!」
沖田さんに無理矢理手を引かれた私は、そのまま黙ってついて行くしかなかった。
(・・沖田さんの手・・暖かい・・・。)
振り払わなきゃ。離れなきゃ。
そう思いつつも、私は振り払う事が出来なかった。
走って逃げた先は、小さな家。
屯所からそんなに離れていないこじんまりとした小さな家だった。
「・・ここは・・?」
「ワシの家や。まぁただ寝るだけの場所になっとるがの・・とにかく今は治療が先や、肩出してみ。」
そう言う沖田さんは用意してきた包帯を手に取り私の肩に触れようとしてくる。
そんな沖田さんの手を・・私は振り払ってしまう。
「なっ・・シエルちゃん・・・?」
「・・大丈夫です。ありがとうございました。」
ここにいちゃ駄目。顔を見ちゃ駄目。折角人形になれてるのにまた戻っちゃう。ここを離れなきゃ。独りにならなきゃ。
出て行こうと立ち上がる私の腕を、沖田さんも立ち上がりながら掴みかかってくる。
「何が大丈夫なんや!!放っておいたら動かんくなるかもしれんのやぞ?!ええから見せろ!!」
・・違う、そうじゃない・・・。
「昔の私はそれが当たり前でした。だから大丈夫です。」
「シエルちゃん・・!」
「どうして・・どうして放っておいてくれないの?」
「怪我人を放っておけるか!ええから座れ、早くせな・・!」
違う・・・違う!!
「そうじゃない!!どうして沖田さんも”あの人”も私を放っておかなかったの?!」
「・・・シエルちゃん・・?」
「あの時もそうだった!私が殺そうとした時も・・嘘をついたあの時も・・!沖田さんだって、私はあなたから逃げたのに!傷つけたのに!なのに・・なのに何で?!」
どうしてこの人は私の手を離さないの?
あの人そっくりのあなたに優しくされたら・・私はその優しさに甘えてしまう。甘えてしまって・・私の心の寂しさを埋める為に利用してしまう。
そんなの嫌。絶対に嫌。沖田さんを傷つけたくない、あの人と同じ顔のあなたを・・傷つけたくない。
感情の止まらない私は、ポロポロ涙を流しながら沖田さんに訴えかける。
「あの人そっくりのあなたを利用したくない・・だから離れたのに・・!何で優しくするんですか?!何で近づいてくるんですか?!放っておいて・・放っておいてよ!!あの頃みたいに独りでいたいの!!感情のない人形でいたいの!!そうすれば苦しまなくて済むんだから!!誰にも迷惑をかけなくていいんだから!!」
これ以上私を人間に戻さないで。
お願いだから・・独りにして・・・!
そう願っているのに・・沖田さんは私の腕を離さなかった。
「離して・・離してよぉ・・!!」
私は次第に抵抗する力が無くなってきて、そのままその場で泣きながら座り込む。
「お願いします・・お願いだから、独りにして・・。」
「・・・・・。」
「・・沖田さん・・・お願い、だから・・。」
「・・・それは出来ひんよ。」
「・・え・・——?!」
気付いた時には、私は沖田さんに抱きしめられていた。
抱きしめられた衝撃で肩の傷に痛みを感じたけど、そんなの気にならなかった。
その暖かさが、沖田さんの鼓動を感じる事が・・壊れた心を落ち着かせてくれている。
「・・沖田・・さん・・・?」
「利用してもええやろが。無理に独りになる必要なんかあらへん。ワシを利用してシエルちゃんが楽になれるんなら・・ワシはそれでええ。」
・・・何を・・言ってるの・・?
「駄目ですっ・・そんな事、できなっ・・。」
「シエルちゃんやって、ホンマは嫌なんやろ?」
「・・え・・?」
「ホンマは独りになりたくないんやろ?」
「・・あ・・・。」
『ホンマは人なんか殺しとうないんやろ?』
・・・同じ・・覚えてる・・あの夜の、あの人と同じ・・。
「目ぇ見れば分かる。寂しいって目をしとるで。腹ん中は・・独りは嫌なんやろ?」
「・・・沖田さん・・。」
「・・・シエルちゃんの大事な奴に似とるワシとおるんは確かに辛いと思う。せやから離れようとしたんやろ?大事な男とちゃう奴に甘えるんが嫌なんやったんやろ?そうなんやろ?」
・・・え・・・?どうして・・・。
沖田さんに何も話してないのに・・・。
「・・どうして、知ってるんですか・・?」
「源さんから聞いた。茶屋で会ってシエルちゃんと話したってな。・・辛い思いさせてすまん。しんどいことさせてすまん。せやけど・・せやけどワシは・・・。」
沖田さんは私の事を強く抱きしめながら、耳元で囁く。
「惚れてしもうた女が泣く顔やしんどい顔をしとるんのを・・見とうないんや。」
「・・・え・・?」
今、何て・・・・え・・惚れ・・?
「ワシはシエルちゃんが好きや。ワシはシエルちゃんを守りたい。せやから・・もう大丈夫や。独りでよう頑張った・・ホンマに頑張った。」
力強く抱きしめながらも優しく私の頭を撫でてくれる沖田さん。
初めて会って泣いてしまった時と同じように・・その手は私を安心させてくれる。
「・・そんなの・・沖田さんが、辛いだけ・・。」
「シエルちゃんが独りで苦しむよりマシや。」
「・・甘え、ちゃいますよ・・・私・・。」
「ええでぇ?存分に甘えてきぃや。」
「・・・私、最低な女ですね・・。」
「そんな事あらへん。自分の心を守る為の手段や。」
「・・馬鹿ですね、沖田さん。」
「放っとけや。」
「・・沖田さん・・・。」
「ん?」
「・・ありがとう・・ございます・・。」
「・・・おう。」
その優しさに身を寄せる私は、体の奥底が暖かくなるのが分かる。
自然と腕を後ろに回した私は、そっと沖田さんに抱きつく。
少しの間抱きしめ合った後、沖田さんは私から少し離れて優しい笑顔で見てくれる。
「・・とにかく治療や。肩、出してみ?」
「・・はい。」
私は沖田さんに左肩を見せて、沖田さんに包帯を巻いてもらう。慣れた手つきで巻き終えた沖田さんは、私に寝巻用の浴衣を出した後布団を用意してくれる。
「ワシは一旦池田屋に戻らな。抜けてしもうたからの・・歳ちゃんに怒られてまうわ。」
「大丈夫なんですか・・?」
「シエルちゃん助けた言えば余裕やろ!まぁそれでもアカンやろが・・とにかく今夜はここで寝とき。」
玄関で草鞋を履いた沖田さんは、ついてきた私の頭を優しく撫でてくれる。
「ええ子でゆっくり休むんやで。おやすみ。」
「・・はい・・おやすみなさい、沖田さん。」
池田屋へ向かう沖田さんを見送った私は、用意してくれた浴衣に着替えて布団に潜りこむ。
(・・沖田さんの匂い・・・。)
2週間ぶりの布団のおかげか、張り詰めていた心が落ち着いたからなのか。
その日の私は悪夢を見る事がなく、深い眠りにつくことができた。