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「へぇ~・・今日もこれだけできたのね。凄いわ。」
「・・依頼料は?」
「はいよ。で、今日は?」
「休ませてもらう、また上借りるよ。」
「はいはい。」
骸街で生活を始めてから2週間。
昼はこの街で休み、夜は依頼所を確認して”仕事”を繰り返していた。仕事を繰り返したおかげで昔の感覚を思い出してきた私は、何の苦も無く生活をできている。
人を斬る感触も、生温い血の温度も、絶命する人間の顔も、何もかもが懐かしい。それを見ても何も感じない、怪我をしても何も思わない。人形だった私に戻ってきている。
「じゃあ明日は池田屋で勤王志士共をよろしくね。」
「分かった。」
2階に借りている部屋に戻った私は、ろくに着替えもしないで部屋の隅に小さく体を丸める。
(この感じ・・久しぶり・・・。)
冷たい部屋。何人もの血を浴びた私の体。洗っても洗っても落ちない血の匂い。全てが昔のままだった。
(・・・・。)
今の私を見たら・・あの人はどう思うんだろうな。
きっと悲しむよね。きっと怒るよね。
あの時の沖田さんの顔みたいに・・悲しい顔をするよね・・。沖田さんから逃げたあの日の、切なく驚いた表情で・・。
(・・駄目・・・思い出したら駄目・・。)
自分でこの道を選んだんだ。誰にも頼らず元の時代に戻る方法を探す。今更の事は出来ない。
・・・とにかく今は寝よう・・明日は多くの勤王志士を斬るんだ。寝て少しでも体力を戻さなきゃ・・大将首は吉田稔磨。絶対に失敗できない。
(だから今は・・とにかく寝なきゃ・・。)
—————
『シエルちゃん。』
・・・沖田、さん・・?
『シエルちゃんは独りやないんやで。』
やめ・・て・・・。
『ワシが助けたるから。』
嫌・・嫌っ・・・!
『だからこっちおいでや。』
やめて・・!!
—————
「——っ!!!はぁ・・はぁ・・・。」
目が覚めた時には外はいつの間にか日が暮れ始めていた。
やばっ・・そろそろ行かないと・・。
(・・・最悪・・。)
あんな夢を見るなんて・・求めちゃ駄目・・頼っちゃ駄目・・・とにかく行かなきゃ・・仕事をしなきゃ・・。
ボロボロの精神のまま、私は池田屋へ向かった。
裏口からまわって潜入できた私は中の様子を探る。
勤王志士・・確かにいるけど、思った以上に多いな・・どれが吉田稔磨かも分からないし・・・。
・・・だけど、この人数でもなんとかできるかもしれない。体も動く、殺しに躊躇もない。
(・・よし・・・。)
背後から近付き1人の男に斬りかかろうとした——その時、池田屋の入り口が勢いよく開かれる
『スパァン!!』
「え・・?!」
「討ち入りだぁ!!新撰組、押して参る!!」
・・・新撰組・・?!何でこんな所に・・?!
開かれた入り口から何人もの人間がどんどん入ってくる。新撰組の人間が、周りの勤王志士達をどんどん斬りはらっていく。
(もしかして・・同じ勤王志士を?)
どうするか・・このままここにいるのは危ないかも・・一旦逃げて立て直———
「ヒヒヒッ!!暴れ甲斐があるでぇ!!」
「真面目にやれや総司!吉田を探すんや!」
「——!!」
聞き覚えのある声に反応して、その声がする方向に視線を向けると・・そこにいたのは、永倉さんと沖田さんだった。
(・・あ・・・。)
久しぶりに見た2人の顔。
完全に油断してた私は・・慣れ親しんだ2人を見て、抑えていた感情の蓋が心の奥底から揺れてしまう。
——怖い。
「・・嫌・・っ・・。」
——1人は嫌。
「駄目っ・・!」
——助けて沖田さん。
「・・やめてぇ・・・!!」
——私の傍にいて、沖田さん。
頭が割れるように痛い。
駄目、今は駄目・・!1人で生きるって決めたんだ!あの人達に頼るな!もう見るな!ここを離れるんだ!そうじゃないと、私は・・私は・・!!
混乱している私は——背後から勤王志士が近づいてきているのに気付かなかった。
「死ねえぇ!!」
「っ?!きゃっ・・!!」
反応はできたけど、避けきれずに左肩を斬られてしまう。
戦闘で目が狂ってしまっている勤王志士は、迷わず私に剣を振り落とそうとしてくる。
このまま斬られれば間違いなく死ぬ——そう思いながらも、心の中でふと考えてしまう。
(いっそこのまま・・ここで死ぬのもいいかもしれない・・。)
戻る方法だってない。生きていたって辛いだけ。
悪夢に魘されて心が壊れるくらいなら・・いっその事ここで死んでしまえば楽になれる。
その振り下ろされる剣を望む私は・・静かに目を閉じる。
(・・・・。)
・・・・・・。
・・・・・・・・・?斬られ、ない・・?
いつまでも振り下ろされない事に疑問を感じ目を開ける。
「・・・?!」
私の目の前には、血で染まった浅葱色の羽織を身に着けた男が立っている。目の前の勤王志士を斬り殺し静かに私の方を振り返るその人物は・・あの人と同じように眼帯をしていて、その鋭い隻眼が私を見つめている。
・・あぁ・・覚えてる・・・この力強い目・・あの人だ。あの人と同じ目だ。
「はぁ・・はぁ・・シエルちゃん・・!!」
——沖田さんだ。沖田さんが・・私を助けてくれた。
心の奥に潜んでいる私が・・沖田さんに手を差し伸べている。
「・・依頼料は?」
「はいよ。で、今日は?」
「休ませてもらう、また上借りるよ。」
「はいはい。」
骸街で生活を始めてから2週間。
昼はこの街で休み、夜は依頼所を確認して”仕事”を繰り返していた。仕事を繰り返したおかげで昔の感覚を思い出してきた私は、何の苦も無く生活をできている。
人を斬る感触も、生温い血の温度も、絶命する人間の顔も、何もかもが懐かしい。それを見ても何も感じない、怪我をしても何も思わない。人形だった私に戻ってきている。
「じゃあ明日は池田屋で勤王志士共をよろしくね。」
「分かった。」
2階に借りている部屋に戻った私は、ろくに着替えもしないで部屋の隅に小さく体を丸める。
(この感じ・・久しぶり・・・。)
冷たい部屋。何人もの血を浴びた私の体。洗っても洗っても落ちない血の匂い。全てが昔のままだった。
(・・・・。)
今の私を見たら・・あの人はどう思うんだろうな。
きっと悲しむよね。きっと怒るよね。
あの時の沖田さんの顔みたいに・・悲しい顔をするよね・・。沖田さんから逃げたあの日の、切なく驚いた表情で・・。
(・・駄目・・・思い出したら駄目・・。)
自分でこの道を選んだんだ。誰にも頼らず元の時代に戻る方法を探す。今更の事は出来ない。
・・・とにかく今は寝よう・・明日は多くの勤王志士を斬るんだ。寝て少しでも体力を戻さなきゃ・・大将首は吉田稔磨。絶対に失敗できない。
(だから今は・・とにかく寝なきゃ・・。)
—————
『シエルちゃん。』
・・・沖田、さん・・?
『シエルちゃんは独りやないんやで。』
やめ・・て・・・。
『ワシが助けたるから。』
嫌・・嫌っ・・・!
『だからこっちおいでや。』
やめて・・!!
—————
「——っ!!!はぁ・・はぁ・・・。」
目が覚めた時には外はいつの間にか日が暮れ始めていた。
やばっ・・そろそろ行かないと・・。
(・・・最悪・・。)
あんな夢を見るなんて・・求めちゃ駄目・・頼っちゃ駄目・・・とにかく行かなきゃ・・仕事をしなきゃ・・。
ボロボロの精神のまま、私は池田屋へ向かった。
裏口からまわって潜入できた私は中の様子を探る。
勤王志士・・確かにいるけど、思った以上に多いな・・どれが吉田稔磨かも分からないし・・・。
・・・だけど、この人数でもなんとかできるかもしれない。体も動く、殺しに躊躇もない。
(・・よし・・・。)
背後から近付き1人の男に斬りかかろうとした——その時、池田屋の入り口が勢いよく開かれる
『スパァン!!』
「え・・?!」
「討ち入りだぁ!!新撰組、押して参る!!」
・・・新撰組・・?!何でこんな所に・・?!
開かれた入り口から何人もの人間がどんどん入ってくる。新撰組の人間が、周りの勤王志士達をどんどん斬りはらっていく。
(もしかして・・同じ勤王志士を?)
どうするか・・このままここにいるのは危ないかも・・一旦逃げて立て直———
「ヒヒヒッ!!暴れ甲斐があるでぇ!!」
「真面目にやれや総司!吉田を探すんや!」
「——!!」
聞き覚えのある声に反応して、その声がする方向に視線を向けると・・そこにいたのは、永倉さんと沖田さんだった。
(・・あ・・・。)
久しぶりに見た2人の顔。
完全に油断してた私は・・慣れ親しんだ2人を見て、抑えていた感情の蓋が心の奥底から揺れてしまう。
——怖い。
「・・嫌・・っ・・。」
——1人は嫌。
「駄目っ・・!」
——助けて沖田さん。
「・・やめてぇ・・・!!」
——私の傍にいて、沖田さん。
頭が割れるように痛い。
駄目、今は駄目・・!1人で生きるって決めたんだ!あの人達に頼るな!もう見るな!ここを離れるんだ!そうじゃないと、私は・・私は・・!!
混乱している私は——背後から勤王志士が近づいてきているのに気付かなかった。
「死ねえぇ!!」
「っ?!きゃっ・・!!」
反応はできたけど、避けきれずに左肩を斬られてしまう。
戦闘で目が狂ってしまっている勤王志士は、迷わず私に剣を振り落とそうとしてくる。
このまま斬られれば間違いなく死ぬ——そう思いながらも、心の中でふと考えてしまう。
(いっそこのまま・・ここで死ぬのもいいかもしれない・・。)
戻る方法だってない。生きていたって辛いだけ。
悪夢に魘されて心が壊れるくらいなら・・いっその事ここで死んでしまえば楽になれる。
その振り下ろされる剣を望む私は・・静かに目を閉じる。
(・・・・。)
・・・・・・。
・・・・・・・・・?斬られ、ない・・?
いつまでも振り下ろされない事に疑問を感じ目を開ける。
「・・・?!」
私の目の前には、血で染まった浅葱色の羽織を身に着けた男が立っている。目の前の勤王志士を斬り殺し静かに私の方を振り返るその人物は・・あの人と同じように眼帯をしていて、その鋭い隻眼が私を見つめている。
・・あぁ・・覚えてる・・・この力強い目・・あの人だ。あの人と同じ目だ。
「はぁ・・はぁ・・シエルちゃん・・!!」
——沖田さんだ。沖田さんが・・私を助けてくれた。
心の奥に潜んでいる私が・・沖田さんに手を差し伸べている。