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季節は秋。
神室町は今、赤や黄色の絨毯が僅かにできている。金木犀の香りで街は包まれハロウィンの様子も見えている。
「本日は以上になります。お疲れ様でした。」
そんな中今、私達は神室町から少し離れた場所にいる。
白を基調とした建物の中は、豪華なシャンデリアや煌びやかなもので全体が飾り付けられている。
「ありがとうございました!」
「なぁ、もういっぺんあそこ行きたいんやけどかまへんか?」
「もちろんです、どうぞごゆっくり。」
スタッフの人に見送られて向かった先は——教会。
天使と女神が綺麗なステンドガラスで光っていて、神父が立つ背後にはガラス張りの壁があり綺麗な景色が見える。
そう、私は今・・隣にいる大切な人と式場見学に来ている。
「しっかしゴツイのぉ~ここは。ここで・・誓いの言葉を言うんやな。」
「そうだね。・・なんかドキドキしちゃうね。」
「俺はシエルがドレス踏まんか心配やわ。」
「・・緊張してありえそうだからやめて・・・。」
「ヒヒヒッ!」
真島吾朗。
東城会直系真島組の組長で『真島建設』という自身の会社を持っている——私の婚約者。
左目には眼帯がつけられていて。今は服装が違くて見えないけど胸まで入った般若の刺青が刻まれている。
「折角やし少し奥まで行こうや。」
「うん、分かった。」
「ん。」
吾朗さんは私の前に手を差し出してきて、私はその上に自分の手を乗せる。ニヒヒと笑い手を握った吾朗さんはゆっくり奥へと歩いて行く。まるで結婚式で新郎が新婦を導くように。
そんな後姿に胸を高鳴らせながら、出会った当時を思い出す。
(元々は吾朗さんを殺すハズだったのに・・まさか結婚までするなんて・・・。)
私達の始まりは”殺し屋”と”標的”の関係だった。
吾朗さんに銃を向けたあの夜、この人は私に向き合ってくれた。ボスに犯されそうになったあの夜も、私の事を助けてくれた。
組織に縛られていた私を・・感情を殺していた私を何度も救ってくれた。その代償は右目の視力と体の不自由。リハビリはして大分歩けるようになったけど、やっぱり違和感はある。
だけど・・・そんなのどうでもいい。
(今、とても幸せだから・・・。)
あの頃を考えると、本当に夢みたいな毎日を過ごしている。
「シエル。」
奥まで行って歩みを止めた吾朗さんは振り返り、私の手を握ったまま膝まづく。
「え・・ご、吾朗さん?」
「・・ホンマシエルに会えて良かったと思うとる。」
吾朗さんは優しい笑顔で、私を見つめながら話し出す。
「俺はシエルを心から愛しとる。この気持ちは絶対に変わる事なんてない。せやから・・・俺の隣にずっとおってくれ。俺がシエルを守ったるから。絶対に幸せにしたる。」
誓いの言葉を言っているみたいに囁いた吾朗さんは、私の手の甲に優しくキスを落としてくる。昔絵本で読んだ事のある、王子様がお姫様にキスをするように。
(吾朗さんは本当に・・私の王子様だなぁ。)
子供の頃信じていた、私の王子様。
たった一人の、私の大切な人。
「私も吾朗さんを心から愛してる。ずっと一緒にいたい。・・私も吾朗さんを守るよ。ずっと一緒に・・隣にいられるように。」
「・・あぁ。」
吾朗さんは立ち上がって、力強く私を抱きしめる。
私もそれに応えるように、その大きな背中に腕を回して抱きしめる。ステンドガラスに差し込み光に包まれながら、私達はその場でキスをする。
———この先起こる出来事を考えもせず、私達は幸せな時間を過ごしていた。
神室町に戻ってきた私達は、桐生さんと冴島さんが待つ焼肉”韓来”に向かっていた。
「今日も2人に色々相談するの?」
「当たり前やんか!どないな式がええか作戦会議をせなアカンからのぉ!」
「あはは・・・。」
(桐生さん、冴島さん・・・今夜も大変そうです・・。)
吾朗さん本当にノリノリなんだから・・・。
色々話しながら歩き続けていると——
(・・・?・・誰かの視線・・・・?)
ふと誰かに見られていることに気がつく。
今まで何度か、敵対組織が吾朗さんを狙う事は何度かあったけど、どれも尾行が下手なチンピラだらけだった。
でも・・・今回は違う。明らかに違う。
「・・・シエル、こっちや。」
吾朗さんもその視線に気付いたのか、私の手を握る力を少し強くして韓来へ向かわず、ホテル街方面へ早歩きする。
ちらっと吾朗さんの横顔を見ると、珍しく冷や汗をかいていた。それくらい今回は危険・・って事だよね。
「もう少し奥行ったら走るで。しっかり手ぇ握ってろや。」
「・・分かった。」
もう少し奥・・・赤レンガホテルを曲がったら走り出す。
あと3歩・・2歩・・・1歩。
「行くでシエル・・———?!」
「・・・え・・?」
曲がり角を曲がった正面には——さっきから感じていた視線を送っていたと思われる人物が立っていた。
黒い布で身を包み、その顔は見えない・・・けど・・・。
(この殺気は、駄目——。)
そう思った瞬間だった。
『ズッ・・・』
腹部に激しい痛みを感じて下を見ると・・・刃物が刺さっているのに気がつく。口から血を吐き、鼻血も出ているのが分かる。
(あれ・・え・・・私・・・・?)
狙いは吾朗さんじゃなくて・・・わた、し・・・?
「シエルっ!!!」
隣で大声で私の名前を叫ぶ吾朗さん。
(ごろお・・さん・・・・わた、し・・・・。)
繋がれていた手が離れる。
次第に私の意識は遠のいていき——目の前が真っ暗になった。
神室町は今、赤や黄色の絨毯が僅かにできている。金木犀の香りで街は包まれハロウィンの様子も見えている。
「本日は以上になります。お疲れ様でした。」
そんな中今、私達は神室町から少し離れた場所にいる。
白を基調とした建物の中は、豪華なシャンデリアや煌びやかなもので全体が飾り付けられている。
「ありがとうございました!」
「なぁ、もういっぺんあそこ行きたいんやけどかまへんか?」
「もちろんです、どうぞごゆっくり。」
スタッフの人に見送られて向かった先は——教会。
天使と女神が綺麗なステンドガラスで光っていて、神父が立つ背後にはガラス張りの壁があり綺麗な景色が見える。
そう、私は今・・隣にいる大切な人と式場見学に来ている。
「しっかしゴツイのぉ~ここは。ここで・・誓いの言葉を言うんやな。」
「そうだね。・・なんかドキドキしちゃうね。」
「俺はシエルがドレス踏まんか心配やわ。」
「・・緊張してありえそうだからやめて・・・。」
「ヒヒヒッ!」
真島吾朗。
東城会直系真島組の組長で『真島建設』という自身の会社を持っている——私の婚約者。
左目には眼帯がつけられていて。今は服装が違くて見えないけど胸まで入った般若の刺青が刻まれている。
「折角やし少し奥まで行こうや。」
「うん、分かった。」
「ん。」
吾朗さんは私の前に手を差し出してきて、私はその上に自分の手を乗せる。ニヒヒと笑い手を握った吾朗さんはゆっくり奥へと歩いて行く。まるで結婚式で新郎が新婦を導くように。
そんな後姿に胸を高鳴らせながら、出会った当時を思い出す。
(元々は吾朗さんを殺すハズだったのに・・まさか結婚までするなんて・・・。)
私達の始まりは”殺し屋”と”標的”の関係だった。
吾朗さんに銃を向けたあの夜、この人は私に向き合ってくれた。ボスに犯されそうになったあの夜も、私の事を助けてくれた。
組織に縛られていた私を・・感情を殺していた私を何度も救ってくれた。その代償は右目の視力と体の不自由。リハビリはして大分歩けるようになったけど、やっぱり違和感はある。
だけど・・・そんなのどうでもいい。
(今、とても幸せだから・・・。)
あの頃を考えると、本当に夢みたいな毎日を過ごしている。
「シエル。」
奥まで行って歩みを止めた吾朗さんは振り返り、私の手を握ったまま膝まづく。
「え・・ご、吾朗さん?」
「・・ホンマシエルに会えて良かったと思うとる。」
吾朗さんは優しい笑顔で、私を見つめながら話し出す。
「俺はシエルを心から愛しとる。この気持ちは絶対に変わる事なんてない。せやから・・・俺の隣にずっとおってくれ。俺がシエルを守ったるから。絶対に幸せにしたる。」
誓いの言葉を言っているみたいに囁いた吾朗さんは、私の手の甲に優しくキスを落としてくる。昔絵本で読んだ事のある、王子様がお姫様にキスをするように。
(吾朗さんは本当に・・私の王子様だなぁ。)
子供の頃信じていた、私の王子様。
たった一人の、私の大切な人。
「私も吾朗さんを心から愛してる。ずっと一緒にいたい。・・私も吾朗さんを守るよ。ずっと一緒に・・隣にいられるように。」
「・・あぁ。」
吾朗さんは立ち上がって、力強く私を抱きしめる。
私もそれに応えるように、その大きな背中に腕を回して抱きしめる。ステンドガラスに差し込み光に包まれながら、私達はその場でキスをする。
———この先起こる出来事を考えもせず、私達は幸せな時間を過ごしていた。
神室町に戻ってきた私達は、桐生さんと冴島さんが待つ焼肉”韓来”に向かっていた。
「今日も2人に色々相談するの?」
「当たり前やんか!どないな式がええか作戦会議をせなアカンからのぉ!」
「あはは・・・。」
(桐生さん、冴島さん・・・今夜も大変そうです・・。)
吾朗さん本当にノリノリなんだから・・・。
色々話しながら歩き続けていると——
(・・・?・・誰かの視線・・・・?)
ふと誰かに見られていることに気がつく。
今まで何度か、敵対組織が吾朗さんを狙う事は何度かあったけど、どれも尾行が下手なチンピラだらけだった。
でも・・・今回は違う。明らかに違う。
「・・・シエル、こっちや。」
吾朗さんもその視線に気付いたのか、私の手を握る力を少し強くして韓来へ向かわず、ホテル街方面へ早歩きする。
ちらっと吾朗さんの横顔を見ると、珍しく冷や汗をかいていた。それくらい今回は危険・・って事だよね。
「もう少し奥行ったら走るで。しっかり手ぇ握ってろや。」
「・・分かった。」
もう少し奥・・・赤レンガホテルを曲がったら走り出す。
あと3歩・・2歩・・・1歩。
「行くでシエル・・———?!」
「・・・え・・?」
曲がり角を曲がった正面には——さっきから感じていた視線を送っていたと思われる人物が立っていた。
黒い布で身を包み、その顔は見えない・・・けど・・・。
(この殺気は、駄目——。)
そう思った瞬間だった。
『ズッ・・・』
腹部に激しい痛みを感じて下を見ると・・・刃物が刺さっているのに気がつく。口から血を吐き、鼻血も出ているのが分かる。
(あれ・・え・・・私・・・・?)
狙いは吾朗さんじゃなくて・・・わた、し・・・?
「シエルっ!!!」
隣で大声で私の名前を叫ぶ吾朗さん。
(ごろお・・さん・・・・わた、し・・・・。)
繋がれていた手が離れる。
次第に私の意識は遠のいていき——目の前が真っ暗になった。
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