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キャバレー『グランド』のキャストとして働き始めて1ヶ月。
最初は戸惑うことばかりだったけど、先輩達の接客を見てなんとか覚えてきた。
「あ、グラス空いてますよ?何か飲まれます?」
「せやなぁ・・今月は厳しくてなぁ・・・。」
「え!厳しい中会いにきてくれたんですか?!すっごく嬉しいです♪私、もうそれだけで充分ですよ!」
「うっ・・上手いこと言うねぇシエルちゃんは・・!そんな可愛いこと言われたら、頑張っちゃおうかな!シャンパンいこうシャンパン!」
「きゃー、さすがです♪」
「・・・ふぅ・・。」
今日も終わった・・お酒は元々強いけど、今日は辛いなぁ・・・ダメダメ、明日もあるんだし頑張らなきゃ!
「おう、シエルちゃん。」
「あっ・・支配人!」
グランドの支配人、真島吾朗。大阪蒼天堀の夜の帝王と呼ばれている実力者。
・・・私の、好きな人。ここで働いてるのも、街で見かけたこの人に一目惚れしたからだ。
「どや、これからもやっていけそうか?」
「はい!先輩達優しいし・・大変な時もあるけど、楽しいです!」
「ホンマか?!いや〜ホッとしたわ!シエルちゃんみたいな可愛え子が残ってくれるんはホンマ有難いわ!」
ドキッ・・
「も、もぉ支配人!お世辞はよしてくださいよ!」
「いやいやお世辞ちゃうてホンマ!・・ところで、何や調子悪そうやけど大丈夫か?」
「え・・・だ、大丈夫ですよ?」
「ホンマか?何や後ろから見た時しんどそうにしとったが・・・ホンマに無理してへんか?」
・・・なんで分かったんだろう。
「えっと・・少し、しんどいです・・・。」
「ほんなら、今日はもう上がってええ。熱はどないやろ。」
「えっ・・!」
そう言うと支配人は、私のおでこに触れ自身のおでこにも手を当てる。
ひっ・・・し、支配人の手が・・!
「ん〜・・微熱やろか、少し熱いな。1人で帰れるか?」
「だだ、大丈夫です!!す、すみません、失礼しまっ・・・?!」
長いドレスの裾を踏んでしまい、転びそうになる。
やばっ———!
目を瞑って痛みに備え・・・てるのに、いつまでも痛くない。それどころか、なんか、暖かい・・・?
不思議に思い目を開けると、支配人が私の体を支えていた。私の体は今、支配人の腕と体に包まれている。
「っと・・危ないで!気ぃつけなアカンやろ!」
「す、すみませっ・・!」
顔を見上げると、目の前に支配人の顔が・・・。
整った顔、鋭いけど優しい目。眼帯がなかったらどれだけもっとカッコいいんだろうと何度思ったことか。でも、眼帯も似合っててカッコよくて・・・そんな支配人の顔が、こここんな近くに・・!!!
「ほれ、ちゃんと立ちや。気ぃつけて帰るんやで?」
「は・・はい!あ、ありがとうございます!お疲れ様でした!」
あまりの恥ずかしさにその場を走り去って、外でタクシーを拾って帰宅した。
家に帰っても、体にはまだ支配人の温もりが残っている。
(・・支配人・・・真島、さん・・好き・・・。)
翌日、私は本当に熱が出て数日休みをもらった。
復帰したグランドには、支配人の姿はなかった。
誰に聞いても、突然来なくなったとしか言わない。私の片想いは、終わってしまった。
あれから18年後。
あの後すぐグランドを辞めた。蒼天堀にいる意味も無くなって、地元に帰った。そこでも特にやることがなく、数日前に神室町へやってきたのだ。
「・・・本当に、ヤクザが多い街だなぁ・・。」
大阪の近江連合と対峙する東城会・・だっけ。グランドに時々近江の人が来てたから、なんとなく覚えてるけど・・。
「・・・・。」
あれから私は、ずっと探している。
蒼天堀にいてもいなかった。諦めたくて地元に帰ったけど、諦められなかった。
かといって・・・神室町にいるわけないのにね・・・。
・・・どこに行っちゃったんだろう・・。
そんな事をぼーっと考えながら歩いていると——
「きゃっ?!」
道の段差に足を引っ掛けてしまう。
やばいっ倒れーーーそうになった時、背後から誰かが私を支えてくれた。
「っと・・ネェちゃん、大丈夫か?」
「・・え・・・?」
聞き覚えのある声。感じた事のある温もり。
まさかと思い振り返る。
テクノカットに整えられた髭、蛇柄ジャケットの下からは僅かに刺青が見える。そして見覚えのある眼帯。
「・・・支配人・・?」
「あ?ネェちゃんどないしてそれ・・・・もしかして、シエルちゃんか・・?」
18年ぶりの再会。やっと会えた。
胸が高鳴っているのが分かる。昔みたいに鋭い目をしているけれど、その優しさも変わっていない。
「・・私、ずっと支配人を探してたんです。・・・ずっと、会いたかった・・!」
「・・・・あん時は突然いなくなってびっくりしたやろ。・・今は支配人なんかやない。ワシの本質は・・こっちや。」
僅かに見える刺青をもう少し見えるように襟を少し広げる。肩まで入っている、綺麗な刺青。
私は真っ直ぐそれを見つめ、手を添える。
「・・怖ないんか?」
「・・・支配人がどんな人でも、関係ありません。・・会いたかったんです・・・本当に・・!」
「シエルちゃん・・・。」
支配人は支えていた私を優しく抱きしめてくれる。
素肌に直接触れるから、鼓動はさらに速くなる。
「・・・支配人やなくて、普通に呼んでくれへんか・・?」
「・・真島、さん・・・。」
「・・・おう・・。」
暫く抱きしめ合った後、私達は連絡先を交換した。
18年振りの恋が、始まる。
最初は戸惑うことばかりだったけど、先輩達の接客を見てなんとか覚えてきた。
「あ、グラス空いてますよ?何か飲まれます?」
「せやなぁ・・今月は厳しくてなぁ・・・。」
「え!厳しい中会いにきてくれたんですか?!すっごく嬉しいです♪私、もうそれだけで充分ですよ!」
「うっ・・上手いこと言うねぇシエルちゃんは・・!そんな可愛いこと言われたら、頑張っちゃおうかな!シャンパンいこうシャンパン!」
「きゃー、さすがです♪」
「・・・ふぅ・・。」
今日も終わった・・お酒は元々強いけど、今日は辛いなぁ・・・ダメダメ、明日もあるんだし頑張らなきゃ!
「おう、シエルちゃん。」
「あっ・・支配人!」
グランドの支配人、真島吾朗。大阪蒼天堀の夜の帝王と呼ばれている実力者。
・・・私の、好きな人。ここで働いてるのも、街で見かけたこの人に一目惚れしたからだ。
「どや、これからもやっていけそうか?」
「はい!先輩達優しいし・・大変な時もあるけど、楽しいです!」
「ホンマか?!いや〜ホッとしたわ!シエルちゃんみたいな可愛え子が残ってくれるんはホンマ有難いわ!」
ドキッ・・
「も、もぉ支配人!お世辞はよしてくださいよ!」
「いやいやお世辞ちゃうてホンマ!・・ところで、何や調子悪そうやけど大丈夫か?」
「え・・・だ、大丈夫ですよ?」
「ホンマか?何や後ろから見た時しんどそうにしとったが・・・ホンマに無理してへんか?」
・・・なんで分かったんだろう。
「えっと・・少し、しんどいです・・・。」
「ほんなら、今日はもう上がってええ。熱はどないやろ。」
「えっ・・!」
そう言うと支配人は、私のおでこに触れ自身のおでこにも手を当てる。
ひっ・・・し、支配人の手が・・!
「ん〜・・微熱やろか、少し熱いな。1人で帰れるか?」
「だだ、大丈夫です!!す、すみません、失礼しまっ・・・?!」
長いドレスの裾を踏んでしまい、転びそうになる。
やばっ———!
目を瞑って痛みに備え・・・てるのに、いつまでも痛くない。それどころか、なんか、暖かい・・・?
不思議に思い目を開けると、支配人が私の体を支えていた。私の体は今、支配人の腕と体に包まれている。
「っと・・危ないで!気ぃつけなアカンやろ!」
「す、すみませっ・・!」
顔を見上げると、目の前に支配人の顔が・・・。
整った顔、鋭いけど優しい目。眼帯がなかったらどれだけもっとカッコいいんだろうと何度思ったことか。でも、眼帯も似合っててカッコよくて・・・そんな支配人の顔が、こここんな近くに・・!!!
「ほれ、ちゃんと立ちや。気ぃつけて帰るんやで?」
「は・・はい!あ、ありがとうございます!お疲れ様でした!」
あまりの恥ずかしさにその場を走り去って、外でタクシーを拾って帰宅した。
家に帰っても、体にはまだ支配人の温もりが残っている。
(・・支配人・・・真島、さん・・好き・・・。)
翌日、私は本当に熱が出て数日休みをもらった。
復帰したグランドには、支配人の姿はなかった。
誰に聞いても、突然来なくなったとしか言わない。私の片想いは、終わってしまった。
あれから18年後。
あの後すぐグランドを辞めた。蒼天堀にいる意味も無くなって、地元に帰った。そこでも特にやることがなく、数日前に神室町へやってきたのだ。
「・・・本当に、ヤクザが多い街だなぁ・・。」
大阪の近江連合と対峙する東城会・・だっけ。グランドに時々近江の人が来てたから、なんとなく覚えてるけど・・。
「・・・・。」
あれから私は、ずっと探している。
蒼天堀にいてもいなかった。諦めたくて地元に帰ったけど、諦められなかった。
かといって・・・神室町にいるわけないのにね・・・。
・・・どこに行っちゃったんだろう・・。
そんな事をぼーっと考えながら歩いていると——
「きゃっ?!」
道の段差に足を引っ掛けてしまう。
やばいっ倒れーーーそうになった時、背後から誰かが私を支えてくれた。
「っと・・ネェちゃん、大丈夫か?」
「・・え・・・?」
聞き覚えのある声。感じた事のある温もり。
まさかと思い振り返る。
テクノカットに整えられた髭、蛇柄ジャケットの下からは僅かに刺青が見える。そして見覚えのある眼帯。
「・・・支配人・・?」
「あ?ネェちゃんどないしてそれ・・・・もしかして、シエルちゃんか・・?」
18年ぶりの再会。やっと会えた。
胸が高鳴っているのが分かる。昔みたいに鋭い目をしているけれど、その優しさも変わっていない。
「・・私、ずっと支配人を探してたんです。・・・ずっと、会いたかった・・!」
「・・・・あん時は突然いなくなってびっくりしたやろ。・・今は支配人なんかやない。ワシの本質は・・こっちや。」
僅かに見える刺青をもう少し見えるように襟を少し広げる。肩まで入っている、綺麗な刺青。
私は真っ直ぐそれを見つめ、手を添える。
「・・怖ないんか?」
「・・・支配人がどんな人でも、関係ありません。・・会いたかったんです・・・本当に・・!」
「シエルちゃん・・・。」
支配人は支えていた私を優しく抱きしめてくれる。
素肌に直接触れるから、鼓動はさらに速くなる。
「・・・支配人やなくて、普通に呼んでくれへんか・・?」
「・・真島、さん・・・。」
「・・・おう・・。」
暫く抱きしめ合った後、私達は連絡先を交換した。
18年振りの恋が、始まる。