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私は最近天気予報が気になる。この時期は雨が多い。雨は嫌いだけど、最近雨が楽しみになっていた。テレビをつけていつもの天気予報を見ると今日の予報を知らせてくれる。
『本日は夕方から雨になるでしょう!傘をお忘れなくお出かけください!』
「・・あ・・・。」
今日も1日雨。私はとある物をバックに入れてバイトに向かう。
雨模様だけど、私の心はルンルン気分だった。
「ありがとうございましたー!」
私が働いているのは神室町にある小さな喫茶店。常連さんが多くて落ち着いたお店だ。こんな雨の日は人通りが少ないから暇な1日を過ごす事になる。
「じゃあ後はよろしくねシエルさん。」
「はい!お疲れ様でした!」
こんな日は閉店1時間前にマスターは帰る。
残り1時間なら晴れててもお客さんは来ないし、締め作業は私1人でも大丈夫だから。
締め作業をしながらソワソワと時間を確認する私。
(そろそろ・・かな。)
ふと店の入り口を見ると、窓から見える人影。高い身長の人物がそこに立っている。
(きた・・!)
私は入り口に近づき扉をそっと開ける。
その人はいつものように煙草を吸いながら天を仰いでいて、私の気配に気づくと目線だけ向けてニッコリと笑う。
「おう、今日も雨宿りさせてもろてるで?シエルちゃん。」
「こんばんわ真島さん。また傘持ってないんですか?」
「ん・・まぁの。」
「ふふっ、天気予報見ないんですか?」
「テレビ見んからのぉ。」
「あはは!」
今目の前で雨宿りをしている人物は、真島吾朗さん。関東で最大のヤクザ組織である東城会の組長さんだそうだ。
私達の出会いは、1ヶ月くらい前。梅雨の時期が始まって今日みたいに1人で締めている時にこうやって雨宿りをしていた人物がいた。
看板を仕舞おうと開けた時に、蛇柄ジャケットにテクノカットヘアの男が立っていてビックリしたけど・・・。
『すまん、ちぃと雨宿りさせてくれへんか?』
そう無邪気な笑顔で言ってくる真島さんの笑顔に心が惹かれてしまった。聞いてみたら雨予報を知らずに外を歩いていたらしい。傘を買う選択肢ももちろんあるけど、ヤクザである以上気軽に買い物なんて出来ない。
肩身狭い思いしてるのかな・・そう思った私は、真島さんに言ってしまう。
『あの・・雨の日は私最後1人なんです。だからいくらでも雨宿りしていってください。』
なんとなくこれで終わりたくなくて、私は真島さんを引き留めるようにそんな事を言ってしまった。
『・・ほんならまた来るわ。おおきに。』
優しい笑顔でそう言った真島さんは、少し会話をした後土砂降りの中走って帰って行った。
それからというもの、雨の日に雨宿りして少し会話をすると土砂降りの中帰ってしまうというのを何度も繰り返してきた。きっと今日もそうだろうと思った私はある物を用意していた。
「ほんならそろそろ行くわ!」
「あっ、待ってください!」
「ん?」
「渡したい物あって・・ちょっとすみません!」
私は急いで控室に行って今朝バックに入れたある物を手に取る。入り口に戻ってそれを真島さんに渡すと目をパチクリさせている。
「なんやこれ?」
「えっと・・折り畳み傘です。真島さんいつも傘持ってないから、不憫ないようにって・・・。」
「俺に?」
「は、はい。」
ラッピングのリボンを解いて中身を確認する真島さん。私が選んだのは黒い傘。なんとなく明るい色は似合わないと思って、黒にした。でも光の加減で少し模様が見えるやつ。
傘を広げた真島さんはそんな傘をじぃっと無言で眺めている。
(・・よ、余計な事しちゃったかな・・・。)
黙ってるって事は・・そう言う事、だよね。
やっちゃったかも・・・。なんとなく気まずくなった私は慌てて扉を閉めようとする。
「じ、じゃあ私はこれで!気をつけて帰ってくださいね!」
「あっ・・おい!」
真島さんの言葉を無視して、私は看板を持って扉を閉めた。窓から外を見えないようにブラインダーも下げて締め作業を進める。
(やっちゃった・・やっちゃったかも・・・。)
勝手にプレゼント用意して押しつけて・・・今冷静になって考えると、私相当ヤバいやつ・・?
真島さん・・絶対いらないよね・・・。
「・・はぁあ・・・。」
無事に締め作業を終えた私は服を着替えて帰ろうとする。裏口から出て折り畳み傘を出す為にバックの中を探る・・・探ってる、けど・・。
「あれっ・・?」
も・・もしかして忘れた?!え、嘘っ?!いくら探してもない!!
「・・あっ・・・。」
真島さんに渡すのだけど考えてたから・・自分の分入れとくのすっかり忘れてた・・・。
「はぁ〜・・。」
ずぶ濡れで帰るか・・・。
そう思って顔を下げて歩き出そうとした時、ふと誰かが近づいてきたのがわかった。
「・・?」
あれっ・・この靴見たことあるような・・・?
ふと目線を上げると・・・。
「よぉ。」
「・・!ま、真島さん?!あれっ、帰ったんじゃ・・?!」
「礼言うてへんのに帰るわけないやろが。」
(・・あっ・・・私が渡した傘使ってる・・。)
煙草を吸いながら傘をさす真島さんがちょっと色っぽく見えて思わずじっと見てると、真島さんはいつものニッコリとした笑顔になってくれた。
「これええやん、おおきに!気に入ったで!」
「えっ・・ほ、本当ですか?」
「おう!」
「・・よ、良かった・・・。」
気に入ってくれたんだ・・良かったぁ・・・。
「・・んで、傘ないんか?」
「うっ・・は、はい・・・。」
「・・・なぁシエルちゃん。」
「?」
真島さんは少し照れくさそうに頬を軽く指で触れながら私も傘の中に入れるように近づいてくる。いつもより近くに見える真島さんの体にドキッとした私は思わず固まると、煙草を捨てて傘を持っていない腕でそっと私を抱きしめてくる。
「えっ・・?!」
「・・傘、持たんでええよ。」
「へっ・・な、何でです・・・?」
「雨の日は雨宿りついでに送ったるから・・せやからええよ。」
「・・・え・・?」
「・・・ホンマはシエルちゃんに会いたかっただけなんや、雨宿りしとったの。初めて会うた時に・・その、惚れてもうたから・・。」
「?!」
嘘っ・・真島さんも、そうだったの?
一目惚れしてたのは・・私だけじゃなかったの?私に会う為に、わざわざ雨の日に来てくれたの?
「この傘使うて迎えにきたるから・・ええか?」
抱きしめられて真島さんの胸から聞こえるトクンという心臓の音。真島さんも緊張してるんだなって伝わってきて、余計にドキドキしちゃう・・!
「アカンか・・?」
頭上から聞こえる優しい声。
そんなの・・そんなの決まってる・・!
「は・・はい・・・お願い、します・・。」
「・・それ、返事も同じって事でええの?」
「・・・は、い・・。」
「・・そうか・・・。」
少し嬉しそうな声でそう言った真島さんは、そっと私の頭上にキスをしてくる。
「?!?!」
「ほんなら帰ろか?・・俺の女のシエルちゃん。」
「〜〜〜?!?!」
「フヒヒッ!!ええ顔するのぉ!!」
「ま、真島さんっ!!」
それから私達は、雨の日の夜はこうして一緒に帰っている。
次第に雨の日以外でも一緒に帰る方が増えて・・今では同じ場所に帰っている。
何気ない出会いからこんな幸せな日々を送る事になるなんて・・・あの頃の私には想像も出来なかった。
「おう、迎えにきたでシエル。」
「ありがとう、吾朗!」
今日も雨。
2人で一緒に、相合傘で帰りましょう。
『本日は夕方から雨になるでしょう!傘をお忘れなくお出かけください!』
「・・あ・・・。」
今日も1日雨。私はとある物をバックに入れてバイトに向かう。
雨模様だけど、私の心はルンルン気分だった。
「ありがとうございましたー!」
私が働いているのは神室町にある小さな喫茶店。常連さんが多くて落ち着いたお店だ。こんな雨の日は人通りが少ないから暇な1日を過ごす事になる。
「じゃあ後はよろしくねシエルさん。」
「はい!お疲れ様でした!」
こんな日は閉店1時間前にマスターは帰る。
残り1時間なら晴れててもお客さんは来ないし、締め作業は私1人でも大丈夫だから。
締め作業をしながらソワソワと時間を確認する私。
(そろそろ・・かな。)
ふと店の入り口を見ると、窓から見える人影。高い身長の人物がそこに立っている。
(きた・・!)
私は入り口に近づき扉をそっと開ける。
その人はいつものように煙草を吸いながら天を仰いでいて、私の気配に気づくと目線だけ向けてニッコリと笑う。
「おう、今日も雨宿りさせてもろてるで?シエルちゃん。」
「こんばんわ真島さん。また傘持ってないんですか?」
「ん・・まぁの。」
「ふふっ、天気予報見ないんですか?」
「テレビ見んからのぉ。」
「あはは!」
今目の前で雨宿りをしている人物は、真島吾朗さん。関東で最大のヤクザ組織である東城会の組長さんだそうだ。
私達の出会いは、1ヶ月くらい前。梅雨の時期が始まって今日みたいに1人で締めている時にこうやって雨宿りをしていた人物がいた。
看板を仕舞おうと開けた時に、蛇柄ジャケットにテクノカットヘアの男が立っていてビックリしたけど・・・。
『すまん、ちぃと雨宿りさせてくれへんか?』
そう無邪気な笑顔で言ってくる真島さんの笑顔に心が惹かれてしまった。聞いてみたら雨予報を知らずに外を歩いていたらしい。傘を買う選択肢ももちろんあるけど、ヤクザである以上気軽に買い物なんて出来ない。
肩身狭い思いしてるのかな・・そう思った私は、真島さんに言ってしまう。
『あの・・雨の日は私最後1人なんです。だからいくらでも雨宿りしていってください。』
なんとなくこれで終わりたくなくて、私は真島さんを引き留めるようにそんな事を言ってしまった。
『・・ほんならまた来るわ。おおきに。』
優しい笑顔でそう言った真島さんは、少し会話をした後土砂降りの中走って帰って行った。
それからというもの、雨の日に雨宿りして少し会話をすると土砂降りの中帰ってしまうというのを何度も繰り返してきた。きっと今日もそうだろうと思った私はある物を用意していた。
「ほんならそろそろ行くわ!」
「あっ、待ってください!」
「ん?」
「渡したい物あって・・ちょっとすみません!」
私は急いで控室に行って今朝バックに入れたある物を手に取る。入り口に戻ってそれを真島さんに渡すと目をパチクリさせている。
「なんやこれ?」
「えっと・・折り畳み傘です。真島さんいつも傘持ってないから、不憫ないようにって・・・。」
「俺に?」
「は、はい。」
ラッピングのリボンを解いて中身を確認する真島さん。私が選んだのは黒い傘。なんとなく明るい色は似合わないと思って、黒にした。でも光の加減で少し模様が見えるやつ。
傘を広げた真島さんはそんな傘をじぃっと無言で眺めている。
(・・よ、余計な事しちゃったかな・・・。)
黙ってるって事は・・そう言う事、だよね。
やっちゃったかも・・・。なんとなく気まずくなった私は慌てて扉を閉めようとする。
「じ、じゃあ私はこれで!気をつけて帰ってくださいね!」
「あっ・・おい!」
真島さんの言葉を無視して、私は看板を持って扉を閉めた。窓から外を見えないようにブラインダーも下げて締め作業を進める。
(やっちゃった・・やっちゃったかも・・・。)
勝手にプレゼント用意して押しつけて・・・今冷静になって考えると、私相当ヤバいやつ・・?
真島さん・・絶対いらないよね・・・。
「・・はぁあ・・・。」
無事に締め作業を終えた私は服を着替えて帰ろうとする。裏口から出て折り畳み傘を出す為にバックの中を探る・・・探ってる、けど・・。
「あれっ・・?」
も・・もしかして忘れた?!え、嘘っ?!いくら探してもない!!
「・・あっ・・・。」
真島さんに渡すのだけど考えてたから・・自分の分入れとくのすっかり忘れてた・・・。
「はぁ〜・・。」
ずぶ濡れで帰るか・・・。
そう思って顔を下げて歩き出そうとした時、ふと誰かが近づいてきたのがわかった。
「・・?」
あれっ・・この靴見たことあるような・・・?
ふと目線を上げると・・・。
「よぉ。」
「・・!ま、真島さん?!あれっ、帰ったんじゃ・・?!」
「礼言うてへんのに帰るわけないやろが。」
(・・あっ・・・私が渡した傘使ってる・・。)
煙草を吸いながら傘をさす真島さんがちょっと色っぽく見えて思わずじっと見てると、真島さんはいつものニッコリとした笑顔になってくれた。
「これええやん、おおきに!気に入ったで!」
「えっ・・ほ、本当ですか?」
「おう!」
「・・よ、良かった・・・。」
気に入ってくれたんだ・・良かったぁ・・・。
「・・んで、傘ないんか?」
「うっ・・は、はい・・・。」
「・・・なぁシエルちゃん。」
「?」
真島さんは少し照れくさそうに頬を軽く指で触れながら私も傘の中に入れるように近づいてくる。いつもより近くに見える真島さんの体にドキッとした私は思わず固まると、煙草を捨てて傘を持っていない腕でそっと私を抱きしめてくる。
「えっ・・?!」
「・・傘、持たんでええよ。」
「へっ・・な、何でです・・・?」
「雨の日は雨宿りついでに送ったるから・・せやからええよ。」
「・・・え・・?」
「・・・ホンマはシエルちゃんに会いたかっただけなんや、雨宿りしとったの。初めて会うた時に・・その、惚れてもうたから・・。」
「?!」
嘘っ・・真島さんも、そうだったの?
一目惚れしてたのは・・私だけじゃなかったの?私に会う為に、わざわざ雨の日に来てくれたの?
「この傘使うて迎えにきたるから・・ええか?」
抱きしめられて真島さんの胸から聞こえるトクンという心臓の音。真島さんも緊張してるんだなって伝わってきて、余計にドキドキしちゃう・・!
「アカンか・・?」
頭上から聞こえる優しい声。
そんなの・・そんなの決まってる・・!
「は・・はい・・・お願い、します・・。」
「・・それ、返事も同じって事でええの?」
「・・・は、い・・。」
「・・そうか・・・。」
少し嬉しそうな声でそう言った真島さんは、そっと私の頭上にキスをしてくる。
「?!?!」
「ほんなら帰ろか?・・俺の女のシエルちゃん。」
「〜〜〜?!?!」
「フヒヒッ!!ええ顔するのぉ!!」
「ま、真島さんっ!!」
それから私達は、雨の日の夜はこうして一緒に帰っている。
次第に雨の日以外でも一緒に帰る方が増えて・・今では同じ場所に帰っている。
何気ない出会いからこんな幸せな日々を送る事になるなんて・・・あの頃の私には想像も出来なかった。
「おう、迎えにきたでシエル。」
「ありがとう、吾朗!」
今日も雨。
2人で一緒に、相合傘で帰りましょう。