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孤独やった。ずっとずっと、心が空っぽやった。
夜の帝王として名を広げ、極道に戻る為にただただ金を稼ぐ日々。いつ終わるか分からん生活。
ただ無心に働いた俺は、何も求めず、何も得られずの毎日を過ごしとった。
せやけどそないな時やった。あの女と出会うたんは。
「サクラです、よろしくお願いします。」
今日もキャスト探しの為にキャバレーを巡っとった。人気店ではないが稀に逸材がいたりするからの、こうして巡るのを辞められへん。
(ほぉ〜・・美人やな。)
この店には勿体ないくらいや。
後は・・・接客やな。
「ほ〜、こりゃえらい別嬪さんやのぉ〜!楽しい夜になりそうやで!」
「ふふっ、お客さんもカッコいいですね!今夜は楽しみましょうね?」
そう言うとそっと手を足にのせてきよったサクラは、誘うような目線で見てくる。
こないな対応は慣れとる、散々いろんな女を見てきたからな。まぁ今までの中で1番色っぽいのに変わりはない。客と話す力も必要やけど、こういう雰囲気も大切や。
「何飲みます?」
「せやなぁ・・ほんなら、シャンパンいこか?」
「分かりました。お願いしまーす!」
それから暫く酒を飲み会話を続けとると、時々サクラの俺を見る目が不気味やった。
どこか深い所を見ようとする目。探ろうとする目。せやけどその奥に切なさや後悔が混じっとる。こないな目をする女は見た事無かった。
(なんやこの女・・。)
まるで裏社会の人間と似てる目を・・・。
・・・この店、まさか・・。
俺の表情の変化に気づいたのか、こっそり耳打ちをしてきよる。
「・・お客さん、逃げて・・・。」
「あ・・?」
「気づいてるんですよね?ここがぼったくりだって・・トイレ行くフリして裏口から逃げてください。」
・・・なるほど、せやから客の顔を見とったんやな。気づかんアホなのか気づいて逃がせる相手なんか見とるんや。
ぼったくりは・・確かに勘弁やな。
「教えてくれておおきにな。ほんなら行くわ。」
「・・すみません、でした・・・。」
「ええて。ほな。」
言われた通り俺はトイレに行くフリをして、そのまま裏口へ向こうとするが・・・あの女がその後どないなってしまうか、気になってしゃあなかった。
ああやって店の事情を教えるっちゅう事は、本来はあの女とグルのハズや。せやのに・・なして逃すなんて事する?あの女は大丈夫なんか?
(ちぃと様子見てみるか・・。)
そっと息をひそめ店内の方へ戻ると、あの女がホールに出とらんかった。
(・・どこ行った・・・?)
店構えからしてバックヤードの場所はなんとなく分かる。もしかしたらそこにおるかもしれへん。
音を鳴らさんように、それらしき扉を見つけそっと耳を扉につけると・・・中から聞こえたんは、怒号やった。
「このド阿呆!!なして逃すんやボケが!!」
「きゃっ・・!!」
ガシャンと人間が何かに当たる音が鳴り響く。
声と言葉からして、さっきの女と男がおる。恐らく店長やろか。事情を知れるかもしれんとそのまま2人の会話を聞く事にした。
「お前は大人しく客から金搾り取ればええねん!早う借金返したきゃ言う事聞けや!!」
・・なるほどな、無理矢理働かされとるんか。借金返済に働かせてぼったくる・・・胸糞悪い連中や。
女使うてそないな事するやなんて・・屑やな。
「こりゃ躾をせなあかんなぁ?また体に教えたるでぇ?」
「い・・嫌っ・・・!!」
「ーー?!」
体にて・・まさかあの女食いもんにしとるんか?!そんなもん、見逃せへんわ!!
俺は思い切りバックヤードの扉を蹴り飛ばす。蹴り開けた先には、無理矢理脱がされそうになっとるさっきの女がおった。それを囲む男は3人。
「なっ・・なんやお前?!」
「毎度おおきに。・・・No.1キャスト貰いにきたで。」
「あぁ?!テメェ何言ってんだ?!ぶん殴ってやる!!」
乱暴に女を投げ飛ばし俺に向かって殴りかかってきよるが、大した殺気も殺意もあらへんかった。こないな奴等に負ける程・・・俺は弱ないで。
「ぐ・・ぐぇ・・・。」
「な、なんやねんこいつ・・・。」
へっ・・雑魚やなコイツら。
のびている男達を放置し震えている女に近づき立ち上がらせたら、安心したのか仰山泣き始めおった。
「ふぇっ・・ひっく、うっ・・!ありがと、ございまっ・・!」
「別に気にせんでええ。・・歩けるか?」
「はいっ・・ひっく・・・。」
乱れた体を晒さんように上着をかけ2人で外に出る。人気のない公園まできよっても、女はずっと泣いとった。
「あ、のっ・・ごめん、なさいっ・・・迷惑、かけて・・・。」
「・・せやから気にせんでええ言うたやろ・・お前が謝る必要あらへん。」
「うっ・・ひっく、でもっ・・・うぅっ・・。」
「・・・さっきの会話ちぃと聞いてしもうたんやが・・借金あるんか?」
「・・は、い・・・親が、私を置いてっ夜逃げしてっ・・私に、全額っ・・・。」
・・ちっ、ゲスい親や。自分の娘に借金背負わせるやなんてとんでもない奴や。
「・・うっ・・・ひっく・・。」
泣き続ける女を見とると、時々見える泣き目に惹かれるのが分かる。夜の世界に似合わん純粋な目。そんな目が夜の世界に汚されて泣き続けとる。それを考えると・・どこか放っておけん俺がおった。
(囚われた俺みたいや。)
目の輝きはちゃうけど、囚われとるのは同じや。
コイツもこないな場所に囚われとる・・悲しい人間の1人なんや。
そっと顔に手を添えて顔を上げさせると、涙のおかげで光っとる目を俺に真っ直ぐ向けてきよる。
「・・ええ目やな。」
「・・・え・・?」
「借金はまだかかるんか?」
「・・はい・・・。」
こん時の俺は、ただこう思ったんや。
「俺の店で働かんか?」
「えっ・・?」
「ちょうどキャストを探しとったんや。うちの店はお触りとかもあらへんし、ぼったくりもせえへん。健全・・ちゅう言い方も変やけど今よりはええ現場やと思うで?」
ただただーーこの女が欲しい。
「どやろ?」
「・・・いいん、ですか・・?」
「あぁ。えっと確か・・サクラやったか?」
「・・シエル・・・。」
「あ?」
「・・八神シエルです。よろしくお願いします。えっと・・・。」
「・・・ええ名前やな。真島吾朗や、よろしゅうなシエル。」
「はいっ・・!」
動機は不純や。
せやけど、どうしてもこの目を、どうしてもこの女を逃したなかった。
たとえ支配人とキャストの関係でも・・それでも良かった。手元に置いておきたい。傍にいてほしい。
(・・ある意味俺も、コイツを檻に抑えつけとるのと同じやな・・・。)
それでも、それでも欲しい。
俺と同じ・・囚われの人間を。
夜の帝王として名を広げ、極道に戻る為にただただ金を稼ぐ日々。いつ終わるか分からん生活。
ただ無心に働いた俺は、何も求めず、何も得られずの毎日を過ごしとった。
せやけどそないな時やった。あの女と出会うたんは。
「サクラです、よろしくお願いします。」
今日もキャスト探しの為にキャバレーを巡っとった。人気店ではないが稀に逸材がいたりするからの、こうして巡るのを辞められへん。
(ほぉ〜・・美人やな。)
この店には勿体ないくらいや。
後は・・・接客やな。
「ほ〜、こりゃえらい別嬪さんやのぉ〜!楽しい夜になりそうやで!」
「ふふっ、お客さんもカッコいいですね!今夜は楽しみましょうね?」
そう言うとそっと手を足にのせてきよったサクラは、誘うような目線で見てくる。
こないな対応は慣れとる、散々いろんな女を見てきたからな。まぁ今までの中で1番色っぽいのに変わりはない。客と話す力も必要やけど、こういう雰囲気も大切や。
「何飲みます?」
「せやなぁ・・ほんなら、シャンパンいこか?」
「分かりました。お願いしまーす!」
それから暫く酒を飲み会話を続けとると、時々サクラの俺を見る目が不気味やった。
どこか深い所を見ようとする目。探ろうとする目。せやけどその奥に切なさや後悔が混じっとる。こないな目をする女は見た事無かった。
(なんやこの女・・。)
まるで裏社会の人間と似てる目を・・・。
・・・この店、まさか・・。
俺の表情の変化に気づいたのか、こっそり耳打ちをしてきよる。
「・・お客さん、逃げて・・・。」
「あ・・?」
「気づいてるんですよね?ここがぼったくりだって・・トイレ行くフリして裏口から逃げてください。」
・・・なるほど、せやから客の顔を見とったんやな。気づかんアホなのか気づいて逃がせる相手なんか見とるんや。
ぼったくりは・・確かに勘弁やな。
「教えてくれておおきにな。ほんなら行くわ。」
「・・すみません、でした・・・。」
「ええて。ほな。」
言われた通り俺はトイレに行くフリをして、そのまま裏口へ向こうとするが・・・あの女がその後どないなってしまうか、気になってしゃあなかった。
ああやって店の事情を教えるっちゅう事は、本来はあの女とグルのハズや。せやのに・・なして逃すなんて事する?あの女は大丈夫なんか?
(ちぃと様子見てみるか・・。)
そっと息をひそめ店内の方へ戻ると、あの女がホールに出とらんかった。
(・・どこ行った・・・?)
店構えからしてバックヤードの場所はなんとなく分かる。もしかしたらそこにおるかもしれへん。
音を鳴らさんように、それらしき扉を見つけそっと耳を扉につけると・・・中から聞こえたんは、怒号やった。
「このド阿呆!!なして逃すんやボケが!!」
「きゃっ・・!!」
ガシャンと人間が何かに当たる音が鳴り響く。
声と言葉からして、さっきの女と男がおる。恐らく店長やろか。事情を知れるかもしれんとそのまま2人の会話を聞く事にした。
「お前は大人しく客から金搾り取ればええねん!早う借金返したきゃ言う事聞けや!!」
・・なるほどな、無理矢理働かされとるんか。借金返済に働かせてぼったくる・・・胸糞悪い連中や。
女使うてそないな事するやなんて・・屑やな。
「こりゃ躾をせなあかんなぁ?また体に教えたるでぇ?」
「い・・嫌っ・・・!!」
「ーー?!」
体にて・・まさかあの女食いもんにしとるんか?!そんなもん、見逃せへんわ!!
俺は思い切りバックヤードの扉を蹴り飛ばす。蹴り開けた先には、無理矢理脱がされそうになっとるさっきの女がおった。それを囲む男は3人。
「なっ・・なんやお前?!」
「毎度おおきに。・・・No.1キャスト貰いにきたで。」
「あぁ?!テメェ何言ってんだ?!ぶん殴ってやる!!」
乱暴に女を投げ飛ばし俺に向かって殴りかかってきよるが、大した殺気も殺意もあらへんかった。こないな奴等に負ける程・・・俺は弱ないで。
「ぐ・・ぐぇ・・・。」
「な、なんやねんこいつ・・・。」
へっ・・雑魚やなコイツら。
のびている男達を放置し震えている女に近づき立ち上がらせたら、安心したのか仰山泣き始めおった。
「ふぇっ・・ひっく、うっ・・!ありがと、ございまっ・・!」
「別に気にせんでええ。・・歩けるか?」
「はいっ・・ひっく・・・。」
乱れた体を晒さんように上着をかけ2人で外に出る。人気のない公園まできよっても、女はずっと泣いとった。
「あ、のっ・・ごめん、なさいっ・・・迷惑、かけて・・・。」
「・・せやから気にせんでええ言うたやろ・・お前が謝る必要あらへん。」
「うっ・・ひっく、でもっ・・・うぅっ・・。」
「・・・さっきの会話ちぃと聞いてしもうたんやが・・借金あるんか?」
「・・は、い・・・親が、私を置いてっ夜逃げしてっ・・私に、全額っ・・・。」
・・ちっ、ゲスい親や。自分の娘に借金背負わせるやなんてとんでもない奴や。
「・・うっ・・・ひっく・・。」
泣き続ける女を見とると、時々見える泣き目に惹かれるのが分かる。夜の世界に似合わん純粋な目。そんな目が夜の世界に汚されて泣き続けとる。それを考えると・・どこか放っておけん俺がおった。
(囚われた俺みたいや。)
目の輝きはちゃうけど、囚われとるのは同じや。
コイツもこないな場所に囚われとる・・悲しい人間の1人なんや。
そっと顔に手を添えて顔を上げさせると、涙のおかげで光っとる目を俺に真っ直ぐ向けてきよる。
「・・ええ目やな。」
「・・・え・・?」
「借金はまだかかるんか?」
「・・はい・・・。」
こん時の俺は、ただこう思ったんや。
「俺の店で働かんか?」
「えっ・・?」
「ちょうどキャストを探しとったんや。うちの店はお触りとかもあらへんし、ぼったくりもせえへん。健全・・ちゅう言い方も変やけど今よりはええ現場やと思うで?」
ただただーーこの女が欲しい。
「どやろ?」
「・・・いいん、ですか・・?」
「あぁ。えっと確か・・サクラやったか?」
「・・シエル・・・。」
「あ?」
「・・八神シエルです。よろしくお願いします。えっと・・・。」
「・・・ええ名前やな。真島吾朗や、よろしゅうなシエル。」
「はいっ・・!」
動機は不純や。
せやけど、どうしてもこの目を、どうしてもこの女を逃したなかった。
たとえ支配人とキャストの関係でも・・それでも良かった。手元に置いておきたい。傍にいてほしい。
(・・ある意味俺も、コイツを檻に抑えつけとるのと同じやな・・・。)
それでも、それでも欲しい。
俺と同じ・・囚われの人間を。