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(初めて会った時から・・ずっとあの人が好きだった。)
色んな人の話・・特に、師匠の話をしている時が一番目が輝いていた。そんな輝く目が好きだった。
だけど・・師匠が亡くなったと聞いたあの晩から、あの人の目の光は無くなっていた。
『置いてかれてしもうたんや・・ワシは、復讐することも出来へんかった・・どないすればよかったんや、ワシは・・・。』
ただの遊女である私は、悲しみに暮れるあの人に酒を注ぐことしかできなかった。それからもずっと目の輝きを失っていたあの人が・・目を輝かせながら江戸へ行くと言ってきた。
『馴染みに挨拶すませよ思うてな、今日は酒飲めへんけど話だけ聞いてくれへんか?』
寂しかった。
挨拶をすませるという事は、それなりの覚悟があるって事。
嬉しかった。
大事な戦の前に私に会いにきてくれたのが。そんなあの人は、復讐相手に一泡吹かせられると楽しそうに語っていた。
物騒な話でしかない。でも輝きを取り戻したあの人の目に魅了されていた私は、その話を聞いていて楽しかった。
そしてそれから数日後、京の街で噂になった・・"大政奉還"。その時すぐに分かった。
(あぁ、あの人がやったんだ。)
ますます心が惹かれてしまった。そんなすごい事をやってのけるあの人を、心の底から尊敬した。
その直後にやってきた、京の夜を焼く火の手。祇園から離れていた私は火に囲まれて動けなかった。もうその命も終わってしまうと思った、その時ーーー
『サクラ!!』
江戸に行っていた筈の・・あの人の声が聞こえる。
終わると思っていた私の命があの人に救われた。何より好きだった、あの人に。
だから私は思わず・・伝えてしまった。お帰りなさいの言葉と、私の想いを。
『好きです・・ずっと言いたかったです、貴方に私の想い・・ずっと・・・!』
一瞬表情を固めたあの人だったけどーーーその場で深くて熱い口吸いをしてくれた。
早く逃げなきゃなのに、そうしなければ死んでしまうかもしれないのに、私達はずっとずっと、お互いを求めるように口吸いを繰り返す。
暫くの口吸いをした後、口を離したあの人は・・輝いた目で優しく私を見た。
『ワシもずっと惚れとったんや・・・好きやサクラ。』
私にとってあの人と過ごした数少ない日々は、どんな物にも負けない大切な宝物。
そんなあの人が、今はそばにいない。
どうしてもやらなきゃいけない事があるって言ってた。
『土佐へ行くんや。仲間を見捨てられへん。』
そう言ってた。
土佐へ行き、仲間を助ける。それがあの人のやらなきゃいけない事。
・・・正直行って欲しくなかった。江戸へ行くと告げられ待っていたあの寂しい日々をまた過ごしたくなかった。でも・・一層強く輝いていたあの人の目を止めたくなかった。
だから私は・・あの人と一つだけ約束を交わす。
髪の毛を一本抜き、あの人の小指に巻きながら。
『ずっと待ってます・・だから、必ず帰ってきてください・・・。』
泣きながら訴える私を見て、あの人も同じように髪の毛を一本抜いて小指に巻いてくれた。
『約束する。せやから・・待っとってくれ。』
そう告げて、あの人が京を離れて暫くの時間がたった。
今でも私は約束通り、ずっと待っている。あの人の髪を眺めながら・・ずっとずっと、愛しい人の帰りを待ち続ける。
そしてそれから暫くして・・その人は現れた。
『ただいまやで・・サクラ。』
戻ってきた。戻ってきてくれた。
再会を喜ぶ私達は、激しく抱きしめ合う。体を繋げたその時にあの人の指を見る。
きっと戦いで無くなっている。そう思っていたのに・・・小指に巻かれている私の髪。嬉しく眺めていると視線に気づいたあの人は、髪を巻いている手同士で握ってくる。
『これがワシを生かしてくれたんや。もう駄目やと思うた時これを見て・・必ずサクラの元に帰るんやって思えたんや。』
私も一緒だった。帰ってこない日々が不安で仕方なかった。
でも小指を見る度に・・絶対に帰ってきてくれるって信じる事ができた。私はそんなこの人に、呼んでほしい名前があった。
『シエルと・・お呼びください。』
『・・ほんならワシの事も、名前で呼んでくれへんか?』
ーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
あれからどれくらいの月日が流れたのだろう。
私は今、京の街を離れてのどかな田舎で暮らしている。ここには刀を振るう武士も、身を捧げる遊女もいない。
静かなこの町で、私は平和に過ごしている。
「シエル。」
「総司さん。」
沖田総司さんと、ずっと一緒に。
色んな人の話・・特に、師匠の話をしている時が一番目が輝いていた。そんな輝く目が好きだった。
だけど・・師匠が亡くなったと聞いたあの晩から、あの人の目の光は無くなっていた。
『置いてかれてしもうたんや・・ワシは、復讐することも出来へんかった・・どないすればよかったんや、ワシは・・・。』
ただの遊女である私は、悲しみに暮れるあの人に酒を注ぐことしかできなかった。それからもずっと目の輝きを失っていたあの人が・・目を輝かせながら江戸へ行くと言ってきた。
『馴染みに挨拶すませよ思うてな、今日は酒飲めへんけど話だけ聞いてくれへんか?』
寂しかった。
挨拶をすませるという事は、それなりの覚悟があるって事。
嬉しかった。
大事な戦の前に私に会いにきてくれたのが。そんなあの人は、復讐相手に一泡吹かせられると楽しそうに語っていた。
物騒な話でしかない。でも輝きを取り戻したあの人の目に魅了されていた私は、その話を聞いていて楽しかった。
そしてそれから数日後、京の街で噂になった・・"大政奉還"。その時すぐに分かった。
(あぁ、あの人がやったんだ。)
ますます心が惹かれてしまった。そんなすごい事をやってのけるあの人を、心の底から尊敬した。
その直後にやってきた、京の夜を焼く火の手。祇園から離れていた私は火に囲まれて動けなかった。もうその命も終わってしまうと思った、その時ーーー
『サクラ!!』
江戸に行っていた筈の・・あの人の声が聞こえる。
終わると思っていた私の命があの人に救われた。何より好きだった、あの人に。
だから私は思わず・・伝えてしまった。お帰りなさいの言葉と、私の想いを。
『好きです・・ずっと言いたかったです、貴方に私の想い・・ずっと・・・!』
一瞬表情を固めたあの人だったけどーーーその場で深くて熱い口吸いをしてくれた。
早く逃げなきゃなのに、そうしなければ死んでしまうかもしれないのに、私達はずっとずっと、お互いを求めるように口吸いを繰り返す。
暫くの口吸いをした後、口を離したあの人は・・輝いた目で優しく私を見た。
『ワシもずっと惚れとったんや・・・好きやサクラ。』
私にとってあの人と過ごした数少ない日々は、どんな物にも負けない大切な宝物。
そんなあの人が、今はそばにいない。
どうしてもやらなきゃいけない事があるって言ってた。
『土佐へ行くんや。仲間を見捨てられへん。』
そう言ってた。
土佐へ行き、仲間を助ける。それがあの人のやらなきゃいけない事。
・・・正直行って欲しくなかった。江戸へ行くと告げられ待っていたあの寂しい日々をまた過ごしたくなかった。でも・・一層強く輝いていたあの人の目を止めたくなかった。
だから私は・・あの人と一つだけ約束を交わす。
髪の毛を一本抜き、あの人の小指に巻きながら。
『ずっと待ってます・・だから、必ず帰ってきてください・・・。』
泣きながら訴える私を見て、あの人も同じように髪の毛を一本抜いて小指に巻いてくれた。
『約束する。せやから・・待っとってくれ。』
そう告げて、あの人が京を離れて暫くの時間がたった。
今でも私は約束通り、ずっと待っている。あの人の髪を眺めながら・・ずっとずっと、愛しい人の帰りを待ち続ける。
そしてそれから暫くして・・その人は現れた。
『ただいまやで・・サクラ。』
戻ってきた。戻ってきてくれた。
再会を喜ぶ私達は、激しく抱きしめ合う。体を繋げたその時にあの人の指を見る。
きっと戦いで無くなっている。そう思っていたのに・・・小指に巻かれている私の髪。嬉しく眺めていると視線に気づいたあの人は、髪を巻いている手同士で握ってくる。
『これがワシを生かしてくれたんや。もう駄目やと思うた時これを見て・・必ずサクラの元に帰るんやって思えたんや。』
私も一緒だった。帰ってこない日々が不安で仕方なかった。
でも小指を見る度に・・絶対に帰ってきてくれるって信じる事ができた。私はそんなこの人に、呼んでほしい名前があった。
『シエルと・・お呼びください。』
『・・ほんならワシの事も、名前で呼んでくれへんか?』
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あれからどれくらいの月日が流れたのだろう。
私は今、京の街を離れてのどかな田舎で暮らしている。ここには刀を振るう武士も、身を捧げる遊女もいない。
静かなこの町で、私は平和に過ごしている。
「シエル。」
「総司さん。」
沖田総司さんと、ずっと一緒に。