第一部 仮面の選択
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新撰組に入隊して早二ヵ月。
勤王志士四十名による御所放火を防ぎという大きな任務が動く。俺達一番隊は日暮れと共に二番隊と共に池田屋に向かうことになった。
新撰組に入隊して初めての大きな任務・・・。
・・・まだ時間がある・・・あそこに行こう。
その場所は、以前俺が泣いた場所。今ではここは俺にとって心休まる場所になった。
「・・・ふぅ・・・。」
『ワシの八神吾朗になればええやろ。』
あの日のあの言葉に、俺は救われた。
心の焦りがなくなり、自分の無理のない程度に鍛錬や稽古をできている。おかげで体調もいい。
・・・沖田隊長のおかげだ。あの人が俺の心を救ってくれた。今回の襲撃、今までの成果が試されるんだ・・失敗は許されない・・・。
「やっぱここにおったか、八神ちゃん。」
「沖田隊長!」
「初めてやしどないしてる思うてな。お前ならここにおるなー思うてきたんや。」
「はは、流石ですね。」
そう、この場所は俺の心休まる場所じゃなくて沖田隊長と二人で会話する秘密の場所にもなっていた。
あの日以来、よく稽古や鍛錬をつけてくれるようになった。
沖田隊長のその行動は、周りからしたら”珍しい光景”らしい。
「あんな面倒見る総司見たことないで。」
って、先日永倉隊長に言われたくらいだ。どれだけ面倒見なかったんだろうという飽きれと、認めてもらえてる嬉しさがある。休みの日も、ほとんど沖田隊長と一緒だった。
俺にとって、それはかけがえのない大事な時間だ。
沖田隊長も・・・そうだといいな。
「なんだか楽しそうですね。」
「当たり前や!久々に仰山斬れる思うとたまらんわ!」
「ふふっ・・俺もです。ようやく俺の腕が役に立てる。」
「おう、期待しとるで!」
「ちょ・・・頭撫でないでくださいよっ!」
「ええやんか別に。激励や激励!」
最近突然頭を撫でられたり肩を組まれたり・・・心臓が持たない・・!ただでさえ、この間抱きしめられた時を忘れられていないのに・・・!
「さて・・そろそろ時間か。いくで。」
「はい!」
今宵、俺はあなたの為に剣を振るう。
日はすっかり暮れた。
永倉隊長率いる二番隊と共に池田屋へ辿り着く。
土方副長と斎藤隊長は四国屋へ向かったが・・・どうやらこっちが当たりらしい。
「ヒヒッ、仰山おるおる!早よ暴れたいわ!」
「行くでお前等!一人残らず斬るんや!」
「「はいっ!!」」
永倉隊長の合図で、俺達は一斉に池田屋に突入する。
四十名の勤王志士達による抵抗なんか関係なしに突き進んでいく沖田隊長と永倉隊長。
(二人が速すぎて、追い付けない・・・!)
それでも懸命に志士達を斬りながら進んでいくと、突然沖田隊長の背後から斬りつけようとする志士が現れた。
「沖田隊長!!」
俺は叫びながら、その志士を斬り殺した。
こちらを振り返る沖田隊長は——笑っていた。心の底から楽しんでいる、狂った笑顔だった。その顔に思わず身震いする。
「ヒヒッやるのう八神ちゃん。せやけど———」
俺の真後ろに、隊長の菊一文字がはしっていく。その直後、背中から絶命する男の叫び声と生温かい返り血を感じた。
「お前も後ろに気ぃ張れや。ええな?」
これが——新撰組最凶の剣士、沖田総司。
”俺”の尊敬する人。”私”の想い人。その顔の距離に少し心を躍らせながら、そんなことを思っていた。
「——はいっ!」
その後、四国屋へ向かっていた人達も集まり、襲撃は終わった。
・・けど、あの斎藤隊長が桂小五郎を取り逃がすなんて・・・さすが、「逃げの小五郎」というべきか。
そして、松原隊長の裏切りが発覚した。彼は長州の人間だった。今回の襲撃から何まで、全て筒抜けだった。
・・それでも、この成果だ。ここの隊長達は、本当に末恐ろしい。
「さ、お前らはもう上がりや。残党がおるかもしれん。気ぃ張りながら帰るんやで。」
「「はい!」」
「と・・・八神ちゃん、こっちきぃや。」
「?はい、なんでしょう?」
沖田隊長に呼ばれ、狭い路地へ進む。
何だろう・・・俺、何かやっちゃったか・・・?不安に思っていると、沖田隊長に思いっきり頭をぐしゃりとされた。
「うわっ・・・!」
「さっきは助かったわ。ありがとな。」
「!」
沖田隊長に、お礼を言ってもらえた・・?
「さっきのはワシも気付いてなかったわ。八神ちゃんが後ろにいたおかげで助かったわ。これからも背中は任せたで?」
「・・・!・・はい、もちろんです!」
「ヒヒッええ顔や。ほな、気ぃつけて帰るんやで。」
「はい!お疲れ様でした!」
沖田隊長は上機嫌のまま、俺を残して帰っていった。
(嬉しい・・褒められた・・・!)
俺も上機嫌で、寺田屋へ帰っていった。
「あぁ八神さん。お勤めご苦労さんです。」
「ありがとう、おりょうさん。部屋で休ませてもらいます。」
新撰組に入っても、変わらず俺と接してくれるおりょうさん達は本当に感謝しかない。おかげで安心して帰ってこれる。
部屋に入り刀を置き、窓から見える月を眺める。
「・・・今日は疲れた・・。」
人斬りが楽しかった訳ではない。
ただ、沖田隊長の為に剣を振るえることが嬉しかった。また明日から鍛錬をして体力をつけなければ・・・沖田隊長は付き合ってくれるだろうか?
「八神さん、なんや外にお客さん来てるんやけど・・。」
「客?・・・分かりました、向かいます。」
誰だろう・・・新撰組の人なら名乗ってもおかしくないのに・・。
不審に思いながら入り口に向かうと、俺の足は止まった。
そのときに思った。
俺に平穏は・・・自由は許されないのだと。
勤王志士四十名による御所放火を防ぎという大きな任務が動く。俺達一番隊は日暮れと共に二番隊と共に池田屋に向かうことになった。
新撰組に入隊して初めての大きな任務・・・。
・・・まだ時間がある・・・あそこに行こう。
その場所は、以前俺が泣いた場所。今ではここは俺にとって心休まる場所になった。
「・・・ふぅ・・・。」
『ワシの八神吾朗になればええやろ。』
あの日のあの言葉に、俺は救われた。
心の焦りがなくなり、自分の無理のない程度に鍛錬や稽古をできている。おかげで体調もいい。
・・・沖田隊長のおかげだ。あの人が俺の心を救ってくれた。今回の襲撃、今までの成果が試されるんだ・・失敗は許されない・・・。
「やっぱここにおったか、八神ちゃん。」
「沖田隊長!」
「初めてやしどないしてる思うてな。お前ならここにおるなー思うてきたんや。」
「はは、流石ですね。」
そう、この場所は俺の心休まる場所じゃなくて沖田隊長と二人で会話する秘密の場所にもなっていた。
あの日以来、よく稽古や鍛錬をつけてくれるようになった。
沖田隊長のその行動は、周りからしたら”珍しい光景”らしい。
「あんな面倒見る総司見たことないで。」
って、先日永倉隊長に言われたくらいだ。どれだけ面倒見なかったんだろうという飽きれと、認めてもらえてる嬉しさがある。休みの日も、ほとんど沖田隊長と一緒だった。
俺にとって、それはかけがえのない大事な時間だ。
沖田隊長も・・・そうだといいな。
「なんだか楽しそうですね。」
「当たり前や!久々に仰山斬れる思うとたまらんわ!」
「ふふっ・・俺もです。ようやく俺の腕が役に立てる。」
「おう、期待しとるで!」
「ちょ・・・頭撫でないでくださいよっ!」
「ええやんか別に。激励や激励!」
最近突然頭を撫でられたり肩を組まれたり・・・心臓が持たない・・!ただでさえ、この間抱きしめられた時を忘れられていないのに・・・!
「さて・・そろそろ時間か。いくで。」
「はい!」
今宵、俺はあなたの為に剣を振るう。
日はすっかり暮れた。
永倉隊長率いる二番隊と共に池田屋へ辿り着く。
土方副長と斎藤隊長は四国屋へ向かったが・・・どうやらこっちが当たりらしい。
「ヒヒッ、仰山おるおる!早よ暴れたいわ!」
「行くでお前等!一人残らず斬るんや!」
「「はいっ!!」」
永倉隊長の合図で、俺達は一斉に池田屋に突入する。
四十名の勤王志士達による抵抗なんか関係なしに突き進んでいく沖田隊長と永倉隊長。
(二人が速すぎて、追い付けない・・・!)
それでも懸命に志士達を斬りながら進んでいくと、突然沖田隊長の背後から斬りつけようとする志士が現れた。
「沖田隊長!!」
俺は叫びながら、その志士を斬り殺した。
こちらを振り返る沖田隊長は——笑っていた。心の底から楽しんでいる、狂った笑顔だった。その顔に思わず身震いする。
「ヒヒッやるのう八神ちゃん。せやけど———」
俺の真後ろに、隊長の菊一文字がはしっていく。その直後、背中から絶命する男の叫び声と生温かい返り血を感じた。
「お前も後ろに気ぃ張れや。ええな?」
これが——新撰組最凶の剣士、沖田総司。
”俺”の尊敬する人。”私”の想い人。その顔の距離に少し心を躍らせながら、そんなことを思っていた。
「——はいっ!」
その後、四国屋へ向かっていた人達も集まり、襲撃は終わった。
・・けど、あの斎藤隊長が桂小五郎を取り逃がすなんて・・・さすが、「逃げの小五郎」というべきか。
そして、松原隊長の裏切りが発覚した。彼は長州の人間だった。今回の襲撃から何まで、全て筒抜けだった。
・・それでも、この成果だ。ここの隊長達は、本当に末恐ろしい。
「さ、お前らはもう上がりや。残党がおるかもしれん。気ぃ張りながら帰るんやで。」
「「はい!」」
「と・・・八神ちゃん、こっちきぃや。」
「?はい、なんでしょう?」
沖田隊長に呼ばれ、狭い路地へ進む。
何だろう・・・俺、何かやっちゃったか・・・?不安に思っていると、沖田隊長に思いっきり頭をぐしゃりとされた。
「うわっ・・・!」
「さっきは助かったわ。ありがとな。」
「!」
沖田隊長に、お礼を言ってもらえた・・?
「さっきのはワシも気付いてなかったわ。八神ちゃんが後ろにいたおかげで助かったわ。これからも背中は任せたで?」
「・・・!・・はい、もちろんです!」
「ヒヒッええ顔や。ほな、気ぃつけて帰るんやで。」
「はい!お疲れ様でした!」
沖田隊長は上機嫌のまま、俺を残して帰っていった。
(嬉しい・・褒められた・・・!)
俺も上機嫌で、寺田屋へ帰っていった。
「あぁ八神さん。お勤めご苦労さんです。」
「ありがとう、おりょうさん。部屋で休ませてもらいます。」
新撰組に入っても、変わらず俺と接してくれるおりょうさん達は本当に感謝しかない。おかげで安心して帰ってこれる。
部屋に入り刀を置き、窓から見える月を眺める。
「・・・今日は疲れた・・。」
人斬りが楽しかった訳ではない。
ただ、沖田隊長の為に剣を振るえることが嬉しかった。また明日から鍛錬をして体力をつけなければ・・・沖田隊長は付き合ってくれるだろうか?
「八神さん、なんや外にお客さん来てるんやけど・・。」
「客?・・・分かりました、向かいます。」
誰だろう・・・新撰組の人なら名乗ってもおかしくないのに・・。
不審に思いながら入り口に向かうと、俺の足は止まった。
そのときに思った。
俺に平穏は・・・自由は許されないのだと。