第四部 私と俺とあの人の未来
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あれから数年後———
私はとある場所へ向かっている。周りに騒がしいものがなく、静かな場所。
そこの奥に、あの人達がいる。
「・・・久しぶり。・・・・お父さん、お母さん。」
あの時、武市が教えてくれた本当の父と母の墓。
武市が椿に頼んで、京で死んだ父の骨を母の墓に納めてくれたらしい。
「もうすぐ春だよ。近くに桜があるから二人でお花見できるね。お酒持ってきたんだ!今綺麗にしてあげるね。」
本当の父の顔は分からないし、母の顔もあんまり覚えていない。
それでも、この二人は私の親なんだ。私が今この瞬間生きているのは・・この世に産まれてきたのは、この二人のおかげなんだ。
・・・生きてる時に、会ってみたかった・・・。
「・・また来るね。」
二人が天国で仲良く過ごせますように——。
墓参りの帰り、待ち合わせ場所に向かう。
細い道を歩きその先を見つめると、仲良く遊んでいる親子がいる。きゃっきゃ遊ぶ小さな女の子を、父親が転ばない様に気を付けながら笑って見つめている。
小さな女の子は私に気付き、満面の笑みで駆け出してくる。
「おっかぁ!」
私の・・私達の、大切な宝。
「ただいま幸子。お父さんと仲良くしてた?」
「これ、おっとぅかってくれた!」
「もう・・・総司さん、甘やかしすぎ!」
「ええやんか別に、大事な娘が欲しい言うとるんやで?な~幸子~♪」
「おっとぅだいすき~!」
「く~っ可愛ええ子やの~!」
無事に産まれてきてくれた私達の娘——沖田幸子。
江戸の墓参りに来る時、必ず二人は一緒に来てくれて、待ってる間こうして遊んでくれている。
三人で話していると、一人の人物が近づいてくる。
「お嬢様、おかえりなさい。」
「椿。・・いつもありがとう、離れを使わせてくれて。」
「いいえ、私も幸子ちゃんに会えて嬉しいですし。・・・こうして幸せなお嬢様を見れるのが、私にとっての幸せです。」
「もう・・・そこまで考えなくていいのに・・・。」
初めて墓参りに来た時、椿と偶然再会した。
椿は私に大泣きで謝ってきたっけ・・・助けられなくてごめんなさいって、何度も言ってきた。
けど江戸で生きていたあの辛かった時、支えてくれたのは椿だ。それだけで充分だった。正直に伝えた時はもっと泣いてたなぁ。
「また来年ですね。・・・沖田様、お嬢様をよろしくお願い致します。」
「おぅ、またな椿ちゃん。ほれ幸子、お姉ちゃんにばいばい言うんやで?」
「ばいばぁい、おねえちゃん!」
「ふふっ。ばいばい、またね!」
京に向かう船の上で水平線を見ていると、寝ている幸子を抱っこしながら総司さんが隣にやってくる。
「今年も無事行けて良かったなぁ。この年一の江戸がワシも楽しみになっとるわ。」
「毎年本当にありがとう。私も三人で江戸に行くの、結構好きなんだよね。」
「ヒヒッ!ワシ等の大事な行事やな!」
「あははっ!うん!」
「さて、帰ったら一ちゃん達に土産渡さなアカンな~。ちょうど土佐から来とってよかったわ。・・みんな幸子に会えんくて寂しがっとるんとちゃうか?」
「特に永倉さんがね。」
「ぶははっ!言えとるわ!」
潮風に髪が揺られ、前髪のかかった幸子の髪を整える。
そんな幸子の髪を結っているのは、あの日総司さんが私に返してくれた白銀の髪紐。どうやら気に入ってしまったらしく、今ではすっかり幸子の物。
破天荒な性格で遊び放題の幸子を育てるのは大変だけど、私達沖田家三人は幸せに暮らしている。
誰かに決められた人生じゃなくて、私達が自分で決めた人生を生きている。
「・・・なぁシエル。京に戻ったらやりたいことがあるんやが。」
「ん?何?」
「・・・・そろそろ二人目が欲しいんやが。」
「・・それ、今ここで話す?」
「アカンか?」
「もぉ・・・。」
「ヒヒヒッ!」
意地悪に笑うこの笑顔が好き。
幸子を眺める優しい目が好き。
ずっと手を握ってくれるこの大きな手が好き。
今ここにいる、沖田総司の全てが大好き。
「・・・総司さん。」
「ん?」
「来年も行きましょうね、一緒に。これからもずっと・・一緒にいましょうね。」
「・・・あぁ、せやな。ずっと一緒や。生きとる限り・・一緒やで。」
私は、沖田シエルとして生きていく。
この命が続く限り。
大切な人がずっと隣にいてくれるのを祈りながら。
私達は———生きていく。
朧月-維新異風話- —終—
私はとある場所へ向かっている。周りに騒がしいものがなく、静かな場所。
そこの奥に、あの人達がいる。
「・・・久しぶり。・・・・お父さん、お母さん。」
あの時、武市が教えてくれた本当の父と母の墓。
武市が椿に頼んで、京で死んだ父の骨を母の墓に納めてくれたらしい。
「もうすぐ春だよ。近くに桜があるから二人でお花見できるね。お酒持ってきたんだ!今綺麗にしてあげるね。」
本当の父の顔は分からないし、母の顔もあんまり覚えていない。
それでも、この二人は私の親なんだ。私が今この瞬間生きているのは・・この世に産まれてきたのは、この二人のおかげなんだ。
・・・生きてる時に、会ってみたかった・・・。
「・・また来るね。」
二人が天国で仲良く過ごせますように——。
墓参りの帰り、待ち合わせ場所に向かう。
細い道を歩きその先を見つめると、仲良く遊んでいる親子がいる。きゃっきゃ遊ぶ小さな女の子を、父親が転ばない様に気を付けながら笑って見つめている。
小さな女の子は私に気付き、満面の笑みで駆け出してくる。
「おっかぁ!」
私の・・私達の、大切な宝。
「ただいま幸子。お父さんと仲良くしてた?」
「これ、おっとぅかってくれた!」
「もう・・・総司さん、甘やかしすぎ!」
「ええやんか別に、大事な娘が欲しい言うとるんやで?な~幸子~♪」
「おっとぅだいすき~!」
「く~っ可愛ええ子やの~!」
無事に産まれてきてくれた私達の娘——沖田幸子。
江戸の墓参りに来る時、必ず二人は一緒に来てくれて、待ってる間こうして遊んでくれている。
三人で話していると、一人の人物が近づいてくる。
「お嬢様、おかえりなさい。」
「椿。・・いつもありがとう、離れを使わせてくれて。」
「いいえ、私も幸子ちゃんに会えて嬉しいですし。・・・こうして幸せなお嬢様を見れるのが、私にとっての幸せです。」
「もう・・・そこまで考えなくていいのに・・・。」
初めて墓参りに来た時、椿と偶然再会した。
椿は私に大泣きで謝ってきたっけ・・・助けられなくてごめんなさいって、何度も言ってきた。
けど江戸で生きていたあの辛かった時、支えてくれたのは椿だ。それだけで充分だった。正直に伝えた時はもっと泣いてたなぁ。
「また来年ですね。・・・沖田様、お嬢様をよろしくお願い致します。」
「おぅ、またな椿ちゃん。ほれ幸子、お姉ちゃんにばいばい言うんやで?」
「ばいばぁい、おねえちゃん!」
「ふふっ。ばいばい、またね!」
京に向かう船の上で水平線を見ていると、寝ている幸子を抱っこしながら総司さんが隣にやってくる。
「今年も無事行けて良かったなぁ。この年一の江戸がワシも楽しみになっとるわ。」
「毎年本当にありがとう。私も三人で江戸に行くの、結構好きなんだよね。」
「ヒヒッ!ワシ等の大事な行事やな!」
「あははっ!うん!」
「さて、帰ったら一ちゃん達に土産渡さなアカンな~。ちょうど土佐から来とってよかったわ。・・みんな幸子に会えんくて寂しがっとるんとちゃうか?」
「特に永倉さんがね。」
「ぶははっ!言えとるわ!」
潮風に髪が揺られ、前髪のかかった幸子の髪を整える。
そんな幸子の髪を結っているのは、あの日総司さんが私に返してくれた白銀の髪紐。どうやら気に入ってしまったらしく、今ではすっかり幸子の物。
破天荒な性格で遊び放題の幸子を育てるのは大変だけど、私達沖田家三人は幸せに暮らしている。
誰かに決められた人生じゃなくて、私達が自分で決めた人生を生きている。
「・・・なぁシエル。京に戻ったらやりたいことがあるんやが。」
「ん?何?」
「・・・・そろそろ二人目が欲しいんやが。」
「・・それ、今ここで話す?」
「アカンか?」
「もぉ・・・。」
「ヒヒヒッ!」
意地悪に笑うこの笑顔が好き。
幸子を眺める優しい目が好き。
ずっと手を握ってくれるこの大きな手が好き。
今ここにいる、沖田総司の全てが大好き。
「・・・総司さん。」
「ん?」
「来年も行きましょうね、一緒に。これからもずっと・・一緒にいましょうね。」
「・・・あぁ、せやな。ずっと一緒や。生きとる限り・・一緒やで。」
私は、沖田シエルとして生きていく。
この命が続く限り。
大切な人がずっと隣にいてくれるのを祈りながら。
私達は———生きていく。
朧月-維新異風話- —終—