第四部 私と俺とあの人の未来
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次の日の朝一、私達は屯所に向かう。
土方さんと永倉さんは二人で稽古をしていて、大きな銀杏の木の下に斎藤さんがいる。
近藤さん、藤堂さん、源さんが眠っている場所に座り込んでいる。
そんな斎藤さんに、総司さんがゆっくり近づく。
「もう京の街ともお別れやな。・・・土佐に行く準備はできとるんか?一ちゃん。」
総司さんの顔は、昨日と変わらずだった。
・・・きっと、まだ総司さんも迷っているんだ。答えが、出てないんだ。
「あぁ。俺はいつでもいい。・・・もともとこの街で生きていた”斎藤一”としての生活は偽りのものだ・・・別れを惜しむほどのものでもない。」
「・・・そうか・・。」
偽り・・・確かにそうかもしれない。この人は、坂本龍馬なんだ。それは、私にも言える。もちろん総司さんにも言える。
でも・・・それは違う。
「おりょうちゃんとの日々も、偽りだったんですか?あの子は・・どうするんですか?」
「・・・どうもこうもない。あいつだって、これ以上京の街に束縛される必要はない。これからは好きな場所に行き、好きなように生きる権利がある。」
『親父さんから逃げて新しい人生を始めるんも良かったんやで。』
「それなら、とっくにできていたはずです。私が父上から逃げる機会があったように・・でも、おりょうちゃんはそれをしなかった。裏切っていたからっていう責任じゃない。もっと別の理由のはずです・・!」
「シエル・・?」
「何が言いたいんだシエル。」
おりょうちゃんが京に・・寺田屋にずっといたのは、責任なんかじゃない。
私だって、新撰組に嘘をついていた責任で残ったんじゃない。
おりょうちゃんは・・私は・・・・好きな人がいたから・・!
「おりょうちゃんは・・この京で生きてきた”斎藤一”が好きなんです!私が新撰組が・・総司さんが好きだから残ったのと同じように、ここで生きてきた斎藤一が!大好きなんです!それは、偽りなんかじゃなくて真実なんです!!それはっ・・本物っなんです・・・!!」
斎藤一は坂本龍馬。
それは仮の姿に過ぎない。でもここで生きてきた彼は、確かにここにいた。
そんな彼を好きになったおりょうちゃんの気持ちは、偽りなんかじゃない。
その想いは、偽物じゃない。目の前で見てきたのが、おりょうちゃんにとっての真実なんだ。
「だからっ・・そんな言葉で・・偽りなんて、言わないでください・・・!」
ここで生きてきた自分を否定しないで・・・。
「・・・ワシも思うわ。」
総司さん・・・?
一歩前に出て、総司さんは語り始める。
「”斎藤一”としてのお前は決して偽りなんかやなかった。斎藤一はこの時代、この瞬間、確かに新撰組三番隊隊長として生きてたんや。この京で。それを偽りの一言で捨ててしまってはアカン。」
その言葉は、同じ総司さんだからこそ言えることだった。
総司さんだって・・・この人だって、平山五郎なんだ。でも京で生きてきた”沖田総司”だって、偽りなんかじゃない。
私はおりょうちゃんと同じで・・・この京で生きてきた沖田総司が好きなんだ。
「・・おりょうちゃんと最後のお別れくらいしてきぃや。出立は明日の朝や。まだ間に合う。」
「・・・あぁ・・分かった。有難うな、沖田の兄さん。」
「なんやそれ、兄さんって。」
「あんたにはずっと救われてきた・・・俺にとってあんたは、兄弟みたいなもんだって事だ。」
斎藤さんは、ずっと総司さんに支えられてたんですね。
確かにこの二人はいつも一緒にいた。屯所の中でも、戦いの時も。それはきっと、名前を隠した似た者同士だから。
確かに・・・兄弟、みたいかも。
「なんや少し恥ずかしいのう。・・まぁええ。ほな、ワシ等も行こうかシエル。」
「はい。」
「シエル。」
「?」
「・・・ありがとうな。俺を・・認めてくれて。」
そう言った斎藤さんの笑顔は、今までにない穏やかな笑顔だった。
忘れられない、優しい笑顔だった。
土方さんと永倉さんは二人で稽古をしていて、大きな銀杏の木の下に斎藤さんがいる。
近藤さん、藤堂さん、源さんが眠っている場所に座り込んでいる。
そんな斎藤さんに、総司さんがゆっくり近づく。
「もう京の街ともお別れやな。・・・土佐に行く準備はできとるんか?一ちゃん。」
総司さんの顔は、昨日と変わらずだった。
・・・きっと、まだ総司さんも迷っているんだ。答えが、出てないんだ。
「あぁ。俺はいつでもいい。・・・もともとこの街で生きていた”斎藤一”としての生活は偽りのものだ・・・別れを惜しむほどのものでもない。」
「・・・そうか・・。」
偽り・・・確かにそうかもしれない。この人は、坂本龍馬なんだ。それは、私にも言える。もちろん総司さんにも言える。
でも・・・それは違う。
「おりょうちゃんとの日々も、偽りだったんですか?あの子は・・どうするんですか?」
「・・・どうもこうもない。あいつだって、これ以上京の街に束縛される必要はない。これからは好きな場所に行き、好きなように生きる権利がある。」
『親父さんから逃げて新しい人生を始めるんも良かったんやで。』
「それなら、とっくにできていたはずです。私が父上から逃げる機会があったように・・でも、おりょうちゃんはそれをしなかった。裏切っていたからっていう責任じゃない。もっと別の理由のはずです・・!」
「シエル・・?」
「何が言いたいんだシエル。」
おりょうちゃんが京に・・寺田屋にずっといたのは、責任なんかじゃない。
私だって、新撰組に嘘をついていた責任で残ったんじゃない。
おりょうちゃんは・・私は・・・・好きな人がいたから・・!
「おりょうちゃんは・・この京で生きてきた”斎藤一”が好きなんです!私が新撰組が・・総司さんが好きだから残ったのと同じように、ここで生きてきた斎藤一が!大好きなんです!それは、偽りなんかじゃなくて真実なんです!!それはっ・・本物っなんです・・・!!」
斎藤一は坂本龍馬。
それは仮の姿に過ぎない。でもここで生きてきた彼は、確かにここにいた。
そんな彼を好きになったおりょうちゃんの気持ちは、偽りなんかじゃない。
その想いは、偽物じゃない。目の前で見てきたのが、おりょうちゃんにとっての真実なんだ。
「だからっ・・そんな言葉で・・偽りなんて、言わないでください・・・!」
ここで生きてきた自分を否定しないで・・・。
「・・・ワシも思うわ。」
総司さん・・・?
一歩前に出て、総司さんは語り始める。
「”斎藤一”としてのお前は決して偽りなんかやなかった。斎藤一はこの時代、この瞬間、確かに新撰組三番隊隊長として生きてたんや。この京で。それを偽りの一言で捨ててしまってはアカン。」
その言葉は、同じ総司さんだからこそ言えることだった。
総司さんだって・・・この人だって、平山五郎なんだ。でも京で生きてきた”沖田総司”だって、偽りなんかじゃない。
私はおりょうちゃんと同じで・・・この京で生きてきた沖田総司が好きなんだ。
「・・おりょうちゃんと最後のお別れくらいしてきぃや。出立は明日の朝や。まだ間に合う。」
「・・・あぁ・・分かった。有難うな、沖田の兄さん。」
「なんやそれ、兄さんって。」
「あんたにはずっと救われてきた・・・俺にとってあんたは、兄弟みたいなもんだって事だ。」
斎藤さんは、ずっと総司さんに支えられてたんですね。
確かにこの二人はいつも一緒にいた。屯所の中でも、戦いの時も。それはきっと、名前を隠した似た者同士だから。
確かに・・・兄弟、みたいかも。
「なんや少し恥ずかしいのう。・・まぁええ。ほな、ワシ等も行こうかシエル。」
「はい。」
「シエル。」
「?」
「・・・ありがとうな。俺を・・認めてくれて。」
そう言った斎藤さんの笑顔は、今までにない穏やかな笑顔だった。
忘れられない、優しい笑顔だった。