第四部 私と俺とあの人の未来
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武市に案内されたのは、薩長の二人がいる客間から少し離れた別の客間だった。
すでにそこにはお酒が用意されている。
「俺にはこの酒だけでな。・・一杯どうだい?」
「敵の前で易々と飲みません。」
「お堅いねぇ。・・・この酒は龍馬も好きでね。よく飲んでたんだ。」
龍馬・・斎藤さんの事だよね。
この人は本当にあの人の兄弟分なんだ。
(刀があれば・・ここで斬りかかれるのに・・・。)
「・・・さて、じゃあ本題といこうか。」
「・・・お母さんを、なぜ知っているんです?ずっと前に亡くなっているのに。」
「君のお父さんは・・・勤王党の同志なんだ。話を聞いたことがある。」
「だとしても、どうして私がその人の娘だって分かるんです?私の事は知らないはずです。」
「さぁて、何でだろうな。」
そう言って武市が取り出したのは、女性物の髪留めだった。
どこかで見た事ある・・・どこだっけ・・・。
———
『これ、あげる!』
『え?これは・・・。』
『いつもありがとう、椿!』
———
——?!
「・・・なんで、貴方が椿の髪留めを・・。」
「これは最近送られてきてね。君に渡してほしいと。」
「何で椿が貴方に送るの?!貴方と椿は知り合いではないでしょ?!」
「君のお父さんと彼女は繋がりがあったのだろう?一度京に会いに来たことがあるらしい・・それから、手紙のやり取りをしていたそうだ。」
「えっ・・・。」
「・・・池田屋の事は、亡くなった後俺が彼女に教えたんだ。」
そんな・・・だから池田屋の事知ってたの?
京に会いに来た事があるって・・・何で?
混乱している私に、武市は話し始めてくれた。——本当の父の事を。
—君のお父さんは、勤王党の中では古株でね。
俺が京に来た一年前に知り合ったんだ。
その時に話してくれたよ。君と美鈴さんの事を。
もう何年も待たせているけど
いつか必ず迎えに行くと言っていたよ。
美鈴さんの事は椿から聞いていて亡くなっているのはしっていた。
でも、娘の君は生きている。
だから娘と、いつか暮らしたいと言っていたよ。
だが・・・椿からの手紙で
男として生きている事
今新撰組にいる事
全てを知ったんだ。
幕府の人間と勤王の人間が出会う時は
必ずどちらかが殺される。
・・それを承知で、彼は池田屋に向かったんだ。
娘に殺されることになっても、それも運命だってな。
もし生き残れたら・・・
江戸で君を待つと言っていた。椿と一緒に。—
「そして俺は椿にそれを伝えたんだ。・・・江戸に君たちが訪れた後、この髪留めと手紙が送られてきたんだ。・・・許してほしいと伝えてほしいと書いてあったよ。自分が不甲斐ないばかりにってな。涙が乾いたあとが手紙に残ってたよ。」
『わ、私がもっと・・・お嬢様を守れていれば・・!』
・・・あれは、そういう意味だったんだね椿。
・・・椿・・私は・・・。
「・・・君は、もう新撰組にいる意味はないのだろう?だったら父親の意志を継いで、勤王の為に一緒に来ないか?君のその後の生活は保障しよう。約束する。」
そういう武市の顔は、優しい表情だった。
これは駆け引きじゃない。本当の、心からの勧誘だ。
確かに、もういる意味はない。父上の・・八神吾朗として生きる理由はもうない。
でも・・・。
『シエル!』
私が思い浮かべるのは——愛しい総司さんの顔。
「確かにありません。けど・・父の意志なんて、私には関係ありません。私は私の意志でここにいます。ここにいるのは・・・新撰組にいる事を決めたのは、私自身です。」
私が産まれなければ。
新撰組に入らなければ。
池田屋に行かなければ。
色んな後悔はある。後悔しかない。・・・でも、全部を否定したら、みんなとの・・・総司さんとの出会いも否定する事になる。
少なくともここにいる今の私は、私が決めた道だ。
この道に、後悔はない。
「・・・・そうか。」
武市が笑みを浮かべると、私の目の前の戸が開いた。
そこから出てきたのは——
「そろそろ来ますよ。坂本龍馬さんよ。」
——伊東甲子太郎。
すでにそこにはお酒が用意されている。
「俺にはこの酒だけでな。・・一杯どうだい?」
「敵の前で易々と飲みません。」
「お堅いねぇ。・・・この酒は龍馬も好きでね。よく飲んでたんだ。」
龍馬・・斎藤さんの事だよね。
この人は本当にあの人の兄弟分なんだ。
(刀があれば・・ここで斬りかかれるのに・・・。)
「・・・さて、じゃあ本題といこうか。」
「・・・お母さんを、なぜ知っているんです?ずっと前に亡くなっているのに。」
「君のお父さんは・・・勤王党の同志なんだ。話を聞いたことがある。」
「だとしても、どうして私がその人の娘だって分かるんです?私の事は知らないはずです。」
「さぁて、何でだろうな。」
そう言って武市が取り出したのは、女性物の髪留めだった。
どこかで見た事ある・・・どこだっけ・・・。
———
『これ、あげる!』
『え?これは・・・。』
『いつもありがとう、椿!』
———
——?!
「・・・なんで、貴方が椿の髪留めを・・。」
「これは最近送られてきてね。君に渡してほしいと。」
「何で椿が貴方に送るの?!貴方と椿は知り合いではないでしょ?!」
「君のお父さんと彼女は繋がりがあったのだろう?一度京に会いに来たことがあるらしい・・それから、手紙のやり取りをしていたそうだ。」
「えっ・・・。」
「・・・池田屋の事は、亡くなった後俺が彼女に教えたんだ。」
そんな・・・だから池田屋の事知ってたの?
京に会いに来た事があるって・・・何で?
混乱している私に、武市は話し始めてくれた。——本当の父の事を。
—君のお父さんは、勤王党の中では古株でね。
俺が京に来た一年前に知り合ったんだ。
その時に話してくれたよ。君と美鈴さんの事を。
もう何年も待たせているけど
いつか必ず迎えに行くと言っていたよ。
美鈴さんの事は椿から聞いていて亡くなっているのはしっていた。
でも、娘の君は生きている。
だから娘と、いつか暮らしたいと言っていたよ。
だが・・・椿からの手紙で
男として生きている事
今新撰組にいる事
全てを知ったんだ。
幕府の人間と勤王の人間が出会う時は
必ずどちらかが殺される。
・・それを承知で、彼は池田屋に向かったんだ。
娘に殺されることになっても、それも運命だってな。
もし生き残れたら・・・
江戸で君を待つと言っていた。椿と一緒に。—
「そして俺は椿にそれを伝えたんだ。・・・江戸に君たちが訪れた後、この髪留めと手紙が送られてきたんだ。・・・許してほしいと伝えてほしいと書いてあったよ。自分が不甲斐ないばかりにってな。涙が乾いたあとが手紙に残ってたよ。」
『わ、私がもっと・・・お嬢様を守れていれば・・!』
・・・あれは、そういう意味だったんだね椿。
・・・椿・・私は・・・。
「・・・君は、もう新撰組にいる意味はないのだろう?だったら父親の意志を継いで、勤王の為に一緒に来ないか?君のその後の生活は保障しよう。約束する。」
そういう武市の顔は、優しい表情だった。
これは駆け引きじゃない。本当の、心からの勧誘だ。
確かに、もういる意味はない。父上の・・八神吾朗として生きる理由はもうない。
でも・・・。
『シエル!』
私が思い浮かべるのは——愛しい総司さんの顔。
「確かにありません。けど・・父の意志なんて、私には関係ありません。私は私の意志でここにいます。ここにいるのは・・・新撰組にいる事を決めたのは、私自身です。」
私が産まれなければ。
新撰組に入らなければ。
池田屋に行かなければ。
色んな後悔はある。後悔しかない。・・・でも、全部を否定したら、みんなとの・・・総司さんとの出会いも否定する事になる。
少なくともここにいる今の私は、私が決めた道だ。
この道に、後悔はない。
「・・・・そうか。」
武市が笑みを浮かべると、私の目の前の戸が開いた。
そこから出てきたのは——
「そろそろ来ますよ。坂本龍馬さんよ。」
——伊東甲子太郎。