第三部 武士達の最後
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藤堂さんが亡くなった後、遺言通り総司さん達は遺体を油小路へ運んで行った。
私はその場から動けず、寺田屋で待つ事になった。呆然とする私を心配して、おりょうさんがかつて私が泊まっていた部屋に案内してくれた。
「今着替え持ってくるわ。ちょっと待っててな?」
「・・・ありがとう、おりょうさん・・・。」
一人部屋に残った私は、さっきまで藤堂さんの手を握っていた自分の手を見つめる。
藤堂さんの血で染まっていて、着物にも少し血がついていた。
・・・血の汚れは落ちにくいって、前に藤堂さん言ってたな・・みんなは、この血を何も思わず洗えるんだろうな・・・斬ってしまった罪悪感なんかなくて、仲間の血がついても洗って切り替えができる。
今の私に、そんな事できない。みんなみたいに強くない。・・吾朗だった時みたいに、切り替えなんてできない。
この血は・・・洗えない、洗ったら藤堂さんの事を拒絶してしまう気がして・・・。
「シエルさん?入りますよ?」
「・・・・。」
「・・大丈夫・・?」
「・・・私、役立たずですよね・・・。」
「え・・?」
「みんなはいつまでも引きずらないで前に進んでるのに。みんな、戦ってるのに・・・。」
私は、立ち止まったまま——根っこが生えたように、この場を動けない。
総司さんだって、みんなだって辛いはずなのに・・私以上に辛いのに・・!
「そないな事言うたらあかんよ?」
「私は!もうずっと、みんなに迷惑と心配しかかけていない!吾朗になれない今の私は・・・女の私は!!何もできない役立たずなんです!!」
「シエルさんっ!!」
おりょうさんは——私の頬を叩いた。
驚いておりょうさんを見ると、泣きながら私を真っ直ぐ見ていた。
「・・・うちもな、一さんの手伝いができなくて辛いんよ。うちは一さんを裏切っとったのに・・・。」
「・・裏切ったって・・・?」
「うちは・・もう一人の坂本龍馬と繋がっとったんよ。でも、一さんは咎めんかった。うちに、笑顔を見せてくれ言うとったんよ。」
・・・笑顔を、見せて?
「うちの笑顔が、何よりかけがえのないもん言うてくれた。みんな同じか分からんけど・・・沖田さんは新撰組の皆さんは、シエルさんが笑顔で待っとってくれるんでもええんとちゃうの?沖田さんは、それを望んでるんとちゃうの?」
『早めに戻るから、待っとってな?』
『ん、ええ返事や。行ってくるで。』
今朝総司さんは、家で待ってくれる私に笑顔で家を出てた。
『家で待っとれ言うたやろ!』
『心配したんやぞ?!』
『・・・謝らんでええ・・・遅うなってごめんな・・。』
総司さんは悪くないのに、私を心配した後謝っていた。
もう戦う事の出来ない私だけど・・・そんな私に、家で待って欲しかったんだ。
”待つ”だけだけど、それが今総司さんの望んでいる事なんだ。
たったそれだけを・・・私は、分かっていなかったんだ。
「・・ぐすっ・・うっ・・。」
「・・・叩いて、ごめんな・・・でも、シエルさん・・・見てられんかった・・。」
「そんなことない・・ありがとう、おりょうさん・・・。」
「・・うん。・・手拭い、濡らしたん持ってくるわ。ちょっと待っててな?」
そう言うとおりょうさんは部屋を出た。
少しすると、おりょうさんの声と一緒に二人の声が聞こえた。
斎藤さんと——総司さん。
部屋の戸が開くと総司さんと目が合う。総司さんは私を見ると、笑顔になってくれた。
「ただいまやで、シエル。」
「・・・おかえりなさい、総司さん・・!」
総司さんに抱きつくと、優しく抱きしめてくれる。
さっきの笑顔、嬉しそうだった。これが・・総司さんが望むことなんですね。
「おいお前等、人前でベタベタしやがって・・・。」
「まぁええやないの一さん。」
「なんや一ちゃん、羨ましいんか?」
「うるせぇよ。」
「ヒヒッ。ほな帰ろうやシエル。」
「・・はい!」
家までの帰り道、私達は手を繋いで歩いた。
お互い離れない様に。
私はその場から動けず、寺田屋で待つ事になった。呆然とする私を心配して、おりょうさんがかつて私が泊まっていた部屋に案内してくれた。
「今着替え持ってくるわ。ちょっと待っててな?」
「・・・ありがとう、おりょうさん・・・。」
一人部屋に残った私は、さっきまで藤堂さんの手を握っていた自分の手を見つめる。
藤堂さんの血で染まっていて、着物にも少し血がついていた。
・・・血の汚れは落ちにくいって、前に藤堂さん言ってたな・・みんなは、この血を何も思わず洗えるんだろうな・・・斬ってしまった罪悪感なんかなくて、仲間の血がついても洗って切り替えができる。
今の私に、そんな事できない。みんなみたいに強くない。・・吾朗だった時みたいに、切り替えなんてできない。
この血は・・・洗えない、洗ったら藤堂さんの事を拒絶してしまう気がして・・・。
「シエルさん?入りますよ?」
「・・・・。」
「・・大丈夫・・?」
「・・・私、役立たずですよね・・・。」
「え・・?」
「みんなはいつまでも引きずらないで前に進んでるのに。みんな、戦ってるのに・・・。」
私は、立ち止まったまま——根っこが生えたように、この場を動けない。
総司さんだって、みんなだって辛いはずなのに・・私以上に辛いのに・・!
「そないな事言うたらあかんよ?」
「私は!もうずっと、みんなに迷惑と心配しかかけていない!吾朗になれない今の私は・・・女の私は!!何もできない役立たずなんです!!」
「シエルさんっ!!」
おりょうさんは——私の頬を叩いた。
驚いておりょうさんを見ると、泣きながら私を真っ直ぐ見ていた。
「・・・うちもな、一さんの手伝いができなくて辛いんよ。うちは一さんを裏切っとったのに・・・。」
「・・裏切ったって・・・?」
「うちは・・もう一人の坂本龍馬と繋がっとったんよ。でも、一さんは咎めんかった。うちに、笑顔を見せてくれ言うとったんよ。」
・・・笑顔を、見せて?
「うちの笑顔が、何よりかけがえのないもん言うてくれた。みんな同じか分からんけど・・・沖田さんは新撰組の皆さんは、シエルさんが笑顔で待っとってくれるんでもええんとちゃうの?沖田さんは、それを望んでるんとちゃうの?」
『早めに戻るから、待っとってな?』
『ん、ええ返事や。行ってくるで。』
今朝総司さんは、家で待ってくれる私に笑顔で家を出てた。
『家で待っとれ言うたやろ!』
『心配したんやぞ?!』
『・・・謝らんでええ・・・遅うなってごめんな・・。』
総司さんは悪くないのに、私を心配した後謝っていた。
もう戦う事の出来ない私だけど・・・そんな私に、家で待って欲しかったんだ。
”待つ”だけだけど、それが今総司さんの望んでいる事なんだ。
たったそれだけを・・・私は、分かっていなかったんだ。
「・・ぐすっ・・うっ・・。」
「・・・叩いて、ごめんな・・・でも、シエルさん・・・見てられんかった・・。」
「そんなことない・・ありがとう、おりょうさん・・・。」
「・・うん。・・手拭い、濡らしたん持ってくるわ。ちょっと待っててな?」
そう言うとおりょうさんは部屋を出た。
少しすると、おりょうさんの声と一緒に二人の声が聞こえた。
斎藤さんと——総司さん。
部屋の戸が開くと総司さんと目が合う。総司さんは私を見ると、笑顔になってくれた。
「ただいまやで、シエル。」
「・・・おかえりなさい、総司さん・・!」
総司さんに抱きつくと、優しく抱きしめてくれる。
さっきの笑顔、嬉しそうだった。これが・・総司さんが望むことなんですね。
「おいお前等、人前でベタベタしやがって・・・。」
「まぁええやないの一さん。」
「なんや一ちゃん、羨ましいんか?」
「うるせぇよ。」
「ヒヒッ。ほな帰ろうやシエル。」
「・・はい!」
家までの帰り道、私達は手を繋いで歩いた。
お互い離れない様に。