第一部 仮面の選択
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新撰組に入隊してから約一ヵ月。
隊の仕事を少しずつ覚え、平隊士として充実した日々を送っている。俺の小太刀がよっぽど珍しいのか、他の隊長の方にも稽古をつけてもらっている。
今日もこれから、二番隊隊長、永倉新八隊長と稽古だ。
「遠慮はいらん。本気でこい。」
「・・はいっ!」
入隊して改めて思う。
ここに入隊している人達は、出生・流派・武器は本当に様々だ。永倉隊長のように刀のみが主だが、槍だったりピストルと刀を同時に扱ったり・・・もっといろんな方と稽古して教えてほしい。
「はぁぁ!」
「むんっ!!」
永倉隊長は俺と違って力で押し切る剣術だ。全力で向かっても、簡単に跳ね返させられる・・・!その勢いで尻餅をついてしまい、手合わせが終わった。
「ほんまに速い動きやな。総司とええ勝負や。せやけどお前はもう少し体鍛えた方がええやろな。」
「はぁ・・・はぁ・・・ご指導、ありがとうございます。」
それだけ伝えられ、永倉隊長は二番隊の稽古へ向かう為その場を離れていった。
・・・井戸で顔でも洗うか。
「よっと・・・。」
樽を投げ入れ縄を引き、入っている水で顔を洗う。
・・・体を鍛えるか。確かにそうだな。自分で鍛錬するか・・・この体でどこまでできるか・・・。
・・・本当に、不憫な体だな・・・いっその事、本当に男だったら・・・。
「おぉ八神ちゃん。新八ちゃんとの稽古は終わったんか?」
後ろから声をかけられ振り返ると、返り血を浴びた沖田隊長がいた。また訓練で怪我でもさせたのか・・・。
そう思い顔を見ていると、隊長の目が驚きの目に変わったのが分かった。
「どないした、何かあったんか?!」
「え、た、隊長?俺は顔を洗っただけで・・・。」
「自分、今泣いとったで?気付かんかったんか?」
え?泣いてた?
頬に触れると、水以外の生温かい水分が指に触れた。
・・・なんだ?どうして泣いてたんだ?
”本当に男だったら・・・”
「——!!」
「八神ちゃん?どないした?」
「・・・失礼します!」
「あ、おいっ!」
沖田隊長の声に振り返らず、屯所奥の物陰に隠れた。
・・・今、俺は何を考えた?
”本当に男だったら”?俺は、自分自身で”私”を否定したのか?”私”を否定したら・・・”私”は、どうなるの・・・?
「うっ・・・ふぅっ・・・!」
駄目・・泣いちゃ駄目・・!今は”俺”じゃなきゃ駄目だ!”私”を出しちゃ駄目!
駄目・・・なのに・・・!
「こないなとこおった・・・。」
それに思わず顔を上げてしまった。息を切らしている沖田隊長が目の前にいる。
何で・・・何でこんな時に探してくれたの?
何で・・何で”私”の時にそんなこと・・・!
「ほんまどないした。何があったんや?」
「うっ・・ぐすっ・・お、きた・・たいちょ・・!」
涙が止まらない。
どうしよう・・どうすれば・・・。これ以上、”私”を見られる訳には・・・。
迷っていると、隣に沖田隊長が座って空を眺めていた。
(隊長・・・?)
「・・・こうすれば、向こうから見られへんやろ。」
「・・え・・?」
「自分の隊士がこないなっとんのに、放っておけんからのう。ここにいたるから、好きなだけ泣いとき。訳は話してもらうけどな。」
「・・・隊長・・・!」
”私”に優しい言葉をかけないで。
”私”に優しくしないで。
その思いと裏腹に、涙はどんどん溢れてくる。
(”私”の傍にいてくれてありがとう。)
泣き止むまで沖田隊長はこっちを見なかったけど、ずっと隣に座っていた。
隊の仕事を少しずつ覚え、平隊士として充実した日々を送っている。俺の小太刀がよっぽど珍しいのか、他の隊長の方にも稽古をつけてもらっている。
今日もこれから、二番隊隊長、永倉新八隊長と稽古だ。
「遠慮はいらん。本気でこい。」
「・・はいっ!」
入隊して改めて思う。
ここに入隊している人達は、出生・流派・武器は本当に様々だ。永倉隊長のように刀のみが主だが、槍だったりピストルと刀を同時に扱ったり・・・もっといろんな方と稽古して教えてほしい。
「はぁぁ!」
「むんっ!!」
永倉隊長は俺と違って力で押し切る剣術だ。全力で向かっても、簡単に跳ね返させられる・・・!その勢いで尻餅をついてしまい、手合わせが終わった。
「ほんまに速い動きやな。総司とええ勝負や。せやけどお前はもう少し体鍛えた方がええやろな。」
「はぁ・・・はぁ・・・ご指導、ありがとうございます。」
それだけ伝えられ、永倉隊長は二番隊の稽古へ向かう為その場を離れていった。
・・・井戸で顔でも洗うか。
「よっと・・・。」
樽を投げ入れ縄を引き、入っている水で顔を洗う。
・・・体を鍛えるか。確かにそうだな。自分で鍛錬するか・・・この体でどこまでできるか・・・。
・・・本当に、不憫な体だな・・・いっその事、本当に男だったら・・・。
「おぉ八神ちゃん。新八ちゃんとの稽古は終わったんか?」
後ろから声をかけられ振り返ると、返り血を浴びた沖田隊長がいた。また訓練で怪我でもさせたのか・・・。
そう思い顔を見ていると、隊長の目が驚きの目に変わったのが分かった。
「どないした、何かあったんか?!」
「え、た、隊長?俺は顔を洗っただけで・・・。」
「自分、今泣いとったで?気付かんかったんか?」
え?泣いてた?
頬に触れると、水以外の生温かい水分が指に触れた。
・・・なんだ?どうして泣いてたんだ?
”本当に男だったら・・・”
「——!!」
「八神ちゃん?どないした?」
「・・・失礼します!」
「あ、おいっ!」
沖田隊長の声に振り返らず、屯所奥の物陰に隠れた。
・・・今、俺は何を考えた?
”本当に男だったら”?俺は、自分自身で”私”を否定したのか?”私”を否定したら・・・”私”は、どうなるの・・・?
「うっ・・・ふぅっ・・・!」
駄目・・泣いちゃ駄目・・!今は”俺”じゃなきゃ駄目だ!”私”を出しちゃ駄目!
駄目・・・なのに・・・!
「こないなとこおった・・・。」
それに思わず顔を上げてしまった。息を切らしている沖田隊長が目の前にいる。
何で・・・何でこんな時に探してくれたの?
何で・・何で”私”の時にそんなこと・・・!
「ほんまどないした。何があったんや?」
「うっ・・ぐすっ・・お、きた・・たいちょ・・!」
涙が止まらない。
どうしよう・・どうすれば・・・。これ以上、”私”を見られる訳には・・・。
迷っていると、隣に沖田隊長が座って空を眺めていた。
(隊長・・・?)
「・・・こうすれば、向こうから見られへんやろ。」
「・・え・・?」
「自分の隊士がこないなっとんのに、放っておけんからのう。ここにいたるから、好きなだけ泣いとき。訳は話してもらうけどな。」
「・・・隊長・・・!」
”私”に優しい言葉をかけないで。
”私”に優しくしないで。
その思いと裏腹に、涙はどんどん溢れてくる。
(”私”の傍にいてくれてありがとう。)
泣き止むまで沖田隊長はこっちを見なかったけど、ずっと隣に座っていた。