第三部 武士達の最後
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「江戸の街を歩くのは久しぶりだな。修行の時以来だ。」
「ワシ江戸初めてやな。京に負けずえらい賑やかやのう。」
「確かにそうですね。」
昼の江戸を歩くと、子供の頃の記憶が思い出される。
父からの罵声、暴力に耐え抜いた日々。俺にとっては地獄でしかなかった。
そんな街をまた歩く事になるなんてな・・・。
「・・・八神ちゃん、大丈夫か?」
「え、あ・・・。」
「無理してないか?」
「・・大丈夫です。もうすぐ着きますよ。」
さすがに気付かれるか・・・でも、怖がっている場合じゃない。
ここで何とかしないと、江戸も京も・・俺自身も危ないのだから。
少し歩くと、とある店の前に辿り着く。
「何や、えらいでかい店やのぉ。」
「ここです。」
「ん?」
「いえだから・・ここです。俺の家。」
「「・・・・・・はぁ?!」」
二人が驚くのも無理はない。京の千石邸に負けないくらいの大きさだ。
「江戸でこないでかい店構えとるとは・・・ごっついのう・・。」
「先代の御爺様が敏腕でしたから。少し中を見てきます。」
店の中に入ると、何人かの客と店員がいた。
多くの品を揃えているこの店は、江戸の中でも随一の店だ。京だと”どんき・ほーて”と似たようなものかな・・まだ行ったことないけど・・・。
周りを見回してると、俺に気付いたのか一人の店員が声をかけてくる。
「いらっしゃいませ。何をお探しでしょう?」
「すまない、主人かその付き人は今日いますか?」
「ご主人は今日は不在でして・・・付き人の方は今席を外しておりますがそろそろ戻られるかと。」
・・・そう簡単にいないか・・・。
「ではその付き人の方に戻ったら伝言を頼みたいのだが・・・。」
「はい?」
「お、戻ってきよった。」
「どうだった?」
「いなかったです。これから離れに向かいます。」
「離れ?」
「えぇ。行きましょう。伝言は預けてありますから。」
店から少し離れた場所に、小さな離れがある。
二人を案内し家の中に入ると、小さな居間に入り座布団を用意し二人を座らせる。
・・・埃っぽいな。やはりあれ以降使っていないんだな。
「八神ちゃん、ここは?」
「・・・ここは、俺の育った家です。あの店で過ごしたことは、ほとんどありません。」
「だから店員がお前を知らなかったのか?外から見た限り親しげではないと思っていたが。」
「俺の存在はほとんどの人が知りません。ずっと隠されていたので。」
「あ?なんでや?」
「それは分かりません。・・・俺は、そんな程度の存在だったのかもしれません。」
自分の地位と名誉のための・・・そんな存在。
周りに周知させる理由はない。父上なら・・きっとそう考えるはず。
「そないなこと———!誰かきよった。」
気配を感じたのか、二人は部屋の戸に意識を集中させている。
ここに向かって走ってくる足音。俺はこの足音を知っている。この足音は———
走ってきた足音の主は、部屋を開けて俺を見た瞬間に俺に抱きついてきた。
「お嬢様・・・お嬢様・・・!」
「・・・ただいま。・・・椿。」
「ワシ江戸初めてやな。京に負けずえらい賑やかやのう。」
「確かにそうですね。」
昼の江戸を歩くと、子供の頃の記憶が思い出される。
父からの罵声、暴力に耐え抜いた日々。俺にとっては地獄でしかなかった。
そんな街をまた歩く事になるなんてな・・・。
「・・・八神ちゃん、大丈夫か?」
「え、あ・・・。」
「無理してないか?」
「・・大丈夫です。もうすぐ着きますよ。」
さすがに気付かれるか・・・でも、怖がっている場合じゃない。
ここで何とかしないと、江戸も京も・・俺自身も危ないのだから。
少し歩くと、とある店の前に辿り着く。
「何や、えらいでかい店やのぉ。」
「ここです。」
「ん?」
「いえだから・・ここです。俺の家。」
「「・・・・・・はぁ?!」」
二人が驚くのも無理はない。京の千石邸に負けないくらいの大きさだ。
「江戸でこないでかい店構えとるとは・・・ごっついのう・・。」
「先代の御爺様が敏腕でしたから。少し中を見てきます。」
店の中に入ると、何人かの客と店員がいた。
多くの品を揃えているこの店は、江戸の中でも随一の店だ。京だと”どんき・ほーて”と似たようなものかな・・まだ行ったことないけど・・・。
周りを見回してると、俺に気付いたのか一人の店員が声をかけてくる。
「いらっしゃいませ。何をお探しでしょう?」
「すまない、主人かその付き人は今日いますか?」
「ご主人は今日は不在でして・・・付き人の方は今席を外しておりますがそろそろ戻られるかと。」
・・・そう簡単にいないか・・・。
「ではその付き人の方に戻ったら伝言を頼みたいのだが・・・。」
「はい?」
「お、戻ってきよった。」
「どうだった?」
「いなかったです。これから離れに向かいます。」
「離れ?」
「えぇ。行きましょう。伝言は預けてありますから。」
店から少し離れた場所に、小さな離れがある。
二人を案内し家の中に入ると、小さな居間に入り座布団を用意し二人を座らせる。
・・・埃っぽいな。やはりあれ以降使っていないんだな。
「八神ちゃん、ここは?」
「・・・ここは、俺の育った家です。あの店で過ごしたことは、ほとんどありません。」
「だから店員がお前を知らなかったのか?外から見た限り親しげではないと思っていたが。」
「俺の存在はほとんどの人が知りません。ずっと隠されていたので。」
「あ?なんでや?」
「それは分かりません。・・・俺は、そんな程度の存在だったのかもしれません。」
自分の地位と名誉のための・・・そんな存在。
周りに周知させる理由はない。父上なら・・きっとそう考えるはず。
「そないなこと———!誰かきよった。」
気配を感じたのか、二人は部屋の戸に意識を集中させている。
ここに向かって走ってくる足音。俺はこの足音を知っている。この足音は———
走ってきた足音の主は、部屋を開けて俺を見た瞬間に俺に抱きついてきた。
「お嬢様・・・お嬢様・・・!」
「・・・ただいま。・・・椿。」