第三部 武士達の最後
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扉の先は、今まで見たことがなかった巨大な部屋。
徳川家の家紋が月の光に照らされ影を作っている。そこに座っている一人の男。
あの人が・・・第十五代征夷大将軍、徳川慶喜公。
「その方ども、何が目的だ。」
「俺達は、上様に聞いていただきたい話を持って参上しました。」
「ご無礼は承知。ですがどうか、この国の為にお聞きください。」
凄い圧力・・局長や副長から放たれているのとまた違う。
これ程の人が話を聞いてくれるとは思えないけど・・・ここまできたら、もうやるしかない。
「俺に話を聞かせたいのなら・・・聞く耳を持たせろ。」
そういうと、付き人から受け取った刀を持って俺達に向ける。
持たせろって・・・まさか、将軍様と戦うって事?!
「ただし、俺は女を斬る趣味はない。その方のみで結構だ。」
「——?!」
「その体つき。無理に出している低い声。・・女だろう?」
そんな・・・なんて洞察力なの?
新撰組でもバレなかったのに・・これが将軍様って事か・・。
「上様がお望みならば。」
「・・行くぞ!」
そこからの二人の戦いは激しかった。
国のお偉いさん相手に、命がけで戦う斎藤さんは本当に凄かった。でも、将軍様の国を思う気持ちは充分伝わってくる。
この戦いは、斎藤さんの本気を試しているんだ。
(本当に国の為に来たのか——知りたかったんだ。)
戦いの末勝ったのは——斎藤さんだった。
そして告げられる、日本の現状。海の向こうの国に警戒しなければならないのに、日本人同士が争うとしている。その戦争を避ける案——近藤さんからの手紙を無事に渡せた。
これで仕事は終わった。もうここにいる必要はないよね。
「おう、こっちは・・・済んだで、一ちゃん・・・はぁ・・!」
後ろには、疲れ切った沖田さんが息を切らして立っていた。
「総司さん・・・!」
「おぉ、・・って、うぉ?!」
生きてる・・追い付いてきた・・良かった・・・!
思わず抱きついてしまい、総司さんは相当慌てている。
「シエルちゃ、おい・・!」
「ふっ・・こっちも済んだ。行こう。」
帰ろうとしたその時、将軍様が話し出す。
「一、有在の公卿諸人員及び天下の人材を顧問に備へ官爵を賜ひ 宜しく従来有名実の官を除くべき事。」
・・・それって、斎藤さんが付け加えた・・・。
「この国の階級社会を潰せば、どんな混乱が起きると思う?」
「混乱するのは、今まで階級社会にあぐらをかいてきたほんの一握りの連中だけです。・・・俺の故郷や、今のコイツの様に喜ぶ人間もいる。」
・・・確かにそうかもしれない。
父上の地位や名誉の為に、私の人生はずっと狂っている。階級社会がなくなれば、望む必要がなくなる。
吾朗として生きる必要が、本当になくなる。
「・・・そなたが男の格好をしている理由はなんだ?」
「・・・・。」
私は上をはだかせ、晒を取った。
将軍様は目を見開いた。無数の切り傷に包まれたこの胸を見て驚いてるんだろうな。
「・・・私は女として生きる事が許されませんでした。父の道具として生きてきたんです。地位と名誉を得る為に。」
「・・・なるほど。確かにそなたのような人間には、この社会が壊れれば喜ぶな。」
「今からやり直すことはできません。だけど、今後産まれて生きる子供達に、同じ思いはさせたくありません。」
人生はやり直せない。でも、これからの子達の未来は守れる。
私の望みは、それでもある。こんな人生を過ごすのは、私だけで充分・・・。
「シエルちゃん・・。」
「・・・そなたは、この慶喜を恨むか?このような社会を維持していた幕府を恨むか?」
「いいえ・・・恨みはありません。私が父に逆らえなかったのも事実です。」
「そうか・・。」
「・・・行くぞ沖田、シエル。」
江戸城を後にし、私達は小さな宿屋に一部屋借りて泊まった。
江戸から見る月も綺麗・・・二人はぐっすり寝ちゃってる。そうだよね、あんなに戦えば疲れるよね。
「・・・明日・・・。」
明日の夕方、江戸を出て京に戻る。
それまでに——今度は父上を探さなきゃ。
「んっ・・・シエルちゃ・・・。」
寝言で私を呼んでいる総司さんを見ると、にやけてる。
・・・どんな夢見てるんだか。
父上に会うのは怖いけど・・・総司さんがいれば大丈夫。
「おやすみなさい、総司さん。」
明日に備えて、今日は寝よう。
——私の実家に行く為に。
徳川家の家紋が月の光に照らされ影を作っている。そこに座っている一人の男。
あの人が・・・第十五代征夷大将軍、徳川慶喜公。
「その方ども、何が目的だ。」
「俺達は、上様に聞いていただきたい話を持って参上しました。」
「ご無礼は承知。ですがどうか、この国の為にお聞きください。」
凄い圧力・・局長や副長から放たれているのとまた違う。
これ程の人が話を聞いてくれるとは思えないけど・・・ここまできたら、もうやるしかない。
「俺に話を聞かせたいのなら・・・聞く耳を持たせろ。」
そういうと、付き人から受け取った刀を持って俺達に向ける。
持たせろって・・・まさか、将軍様と戦うって事?!
「ただし、俺は女を斬る趣味はない。その方のみで結構だ。」
「——?!」
「その体つき。無理に出している低い声。・・女だろう?」
そんな・・・なんて洞察力なの?
新撰組でもバレなかったのに・・これが将軍様って事か・・。
「上様がお望みならば。」
「・・行くぞ!」
そこからの二人の戦いは激しかった。
国のお偉いさん相手に、命がけで戦う斎藤さんは本当に凄かった。でも、将軍様の国を思う気持ちは充分伝わってくる。
この戦いは、斎藤さんの本気を試しているんだ。
(本当に国の為に来たのか——知りたかったんだ。)
戦いの末勝ったのは——斎藤さんだった。
そして告げられる、日本の現状。海の向こうの国に警戒しなければならないのに、日本人同士が争うとしている。その戦争を避ける案——近藤さんからの手紙を無事に渡せた。
これで仕事は終わった。もうここにいる必要はないよね。
「おう、こっちは・・・済んだで、一ちゃん・・・はぁ・・!」
後ろには、疲れ切った沖田さんが息を切らして立っていた。
「総司さん・・・!」
「おぉ、・・って、うぉ?!」
生きてる・・追い付いてきた・・良かった・・・!
思わず抱きついてしまい、総司さんは相当慌てている。
「シエルちゃ、おい・・!」
「ふっ・・こっちも済んだ。行こう。」
帰ろうとしたその時、将軍様が話し出す。
「一、有在の公卿諸人員及び天下の人材を顧問に備へ官爵を賜ひ 宜しく従来有名実の官を除くべき事。」
・・・それって、斎藤さんが付け加えた・・・。
「この国の階級社会を潰せば、どんな混乱が起きると思う?」
「混乱するのは、今まで階級社会にあぐらをかいてきたほんの一握りの連中だけです。・・・俺の故郷や、今のコイツの様に喜ぶ人間もいる。」
・・・確かにそうかもしれない。
父上の地位や名誉の為に、私の人生はずっと狂っている。階級社会がなくなれば、望む必要がなくなる。
吾朗として生きる必要が、本当になくなる。
「・・・そなたが男の格好をしている理由はなんだ?」
「・・・・。」
私は上をはだかせ、晒を取った。
将軍様は目を見開いた。無数の切り傷に包まれたこの胸を見て驚いてるんだろうな。
「・・・私は女として生きる事が許されませんでした。父の道具として生きてきたんです。地位と名誉を得る為に。」
「・・・なるほど。確かにそなたのような人間には、この社会が壊れれば喜ぶな。」
「今からやり直すことはできません。だけど、今後産まれて生きる子供達に、同じ思いはさせたくありません。」
人生はやり直せない。でも、これからの子達の未来は守れる。
私の望みは、それでもある。こんな人生を過ごすのは、私だけで充分・・・。
「シエルちゃん・・。」
「・・・そなたは、この慶喜を恨むか?このような社会を維持していた幕府を恨むか?」
「いいえ・・・恨みはありません。私が父に逆らえなかったのも事実です。」
「そうか・・。」
「・・・行くぞ沖田、シエル。」
江戸城を後にし、私達は小さな宿屋に一部屋借りて泊まった。
江戸から見る月も綺麗・・・二人はぐっすり寝ちゃってる。そうだよね、あんなに戦えば疲れるよね。
「・・・明日・・・。」
明日の夕方、江戸を出て京に戻る。
それまでに——今度は父上を探さなきゃ。
「んっ・・・シエルちゃ・・・。」
寝言で私を呼んでいる総司さんを見ると、にやけてる。
・・・どんな夢見てるんだか。
父上に会うのは怖いけど・・・総司さんがいれば大丈夫。
「おやすみなさい、総司さん。」
明日に備えて、今日は寝よう。
——私の実家に行く為に。