第一部 仮面の選択
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『よいか。我々八神家が生き残るには、お前のやることが重要なのだ。分かったな吾朗。』
『・・はい、父上・・。』
『その態度は何だ!もっとはっきりせんか!お前は八神家長男だ!!自覚せんか!!』
やめて・・・やめて父上・・!!!
「———?!」
悪夢にうなされ飛び起きた。京へ出立する前夜、最後に斬られた胸の傷が疼く。と同時に激しい頭痛。
・・そうだ、確か昨日の夜・・・誰かに助けられて・・・ここは、どこだ・・・?
「おう、入るで。起きたか兄ちゃん。」
外から声が聞こえ、声の主は部屋に入ってくる。
立っていたのは、隻眼の男。血塗れの羽織。懸命に記憶をめぐらせ、昨日助けてくれた人物を思い出す。
「・・・昨日の・・?」
「覚えとるんか?あの後兄ちゃん、気ぃ失ってのう。放っておくのもあれやから、屯所まで連れてきたんや。」
「・・・そうでしたか。・・貴殿は?」
「何や貴殿て。んな堅苦しく喋んなや。ワシは一番隊隊長、沖田総司や。」
沖田・・・総司・・。
「おかげで助かった・・・感謝する沖田殿。自分は八神吾朗と申す。」
「吾朗ぉ?!見た目と合わん名前やのう。」
その言葉は・・・子供の頃から言われている。
「父上が名付けたのでな。仕方のないことです。」
「せやな。笑ってすまんのう。もう朝やが、もう少し休むか?」
「いえ、これ以上邪魔するわけには・・・。」
「あんだけの出血やったんや。朝飯持ってきたるからもう少し休んどけ、ええな?」
・・・自分から聞いたくせに強制なのか・・・。
だが、あまり断るのも・・・。
「では、お言葉に甘えて・・・。」
「おう、ちぃと待っとれ。」
それだけ言うと部屋を出てどこかへ向かっていった。
・・・良い好機か?この流れで入隊を志望できる・・・!
部屋の外から、素振りの掛け声や話し声が多く聞こえてくる。ここが新撰組屯所・・・一体何人いるんだろう。一番隊と言っていたが、何番隊まであるのだろう・・・。
そんなことを考えていると、部屋の入り口が開く。
沖田殿———と、もう一人立っている。
「目が覚めたと聞いた。私は新撰組副長の土方歳三だ。安静になるまで休んでいくといい。」
「八神吾朗と申します。お気遣い感謝する。」
「では、私はこれで。」
・・・あれが副長。思ったより若い・・・。
「びっくりしたやろ?歳ちゃんが様子見る五月蠅くてのう。ほら、握り飯や。」
「かたじけない。」
歳ちゃんって・・・上官に対する言い方ではないだろう・・・。
その場で食事をしながら、現在の京の様子・新撰組の実態・俺の事などを話していた。
江戸から出てきて、新撰組入隊を希望している事も伝えた。
「ほぉ~・・江戸からはるばるご苦労なこっちゃ。」
「この後でも構いません。入隊試験を受けさせてもらえないだろうか?」
「ん~せやなぁ・・・。」
顎髭を触りながら考え込んでしまっている。
・・・やはりいきなりは無理か。
「一つ条件がある。」
「条件?」
「明日も入隊試験やっとるから明日来い。ワシが試験官や、相手したる。」
「・・・え?!」
沖田殿が・・・試験官を?
「昨日隊士から聞いたで。不逞浪士を投げ飛ばした細身の男がおったって。八神ちゃんの事やろ?」
「え、えぇ・・恐らく・・。」
「お前の剣の実力を見てみとうなってな。どうや?」
それは大変ありがたい・・・!
「分かりました。そうしましょう。」
「ほんなら今日は帰って休みや。・・・言うとくがワシは試験なんて関係ないで。殺す気でかかってくるんやで。」
「望むところです。」
寺田屋———
「はあぁぁ~~・・・・・。」
大きなため息をこぼし、”私”に切り替える。
はぁ~・・・昨日の夜は災難だったな・・・でも、屯所の場所も知れたし明日には試験を受けられる!
少し安心していると、今日話した隻眼の男を思い出す。
「・・・沖田・・・総司、さん・・。」
新撰組の人に命を救われるなんて・・・壬生の狼と恐れられているけど、案外そんな事ないのかな?
『ほなまた明日な、八神ちゃん!』
最後の別れ際の沖田さんの顔を思い出す。
・・・いつか、”私”もお礼を言えるかな。少し怖そうだけど、優しい目をしていた人だった。
(・・・なんて、そんなの無理だよね。)
だって、彼と出会ったのは”八神吾朗”だもん。
切ない感情を心の奥に潜め、その日は外に出ず休む事にした。
『・・はい、父上・・。』
『その態度は何だ!もっとはっきりせんか!お前は八神家長男だ!!自覚せんか!!』
やめて・・・やめて父上・・!!!
「———?!」
悪夢にうなされ飛び起きた。京へ出立する前夜、最後に斬られた胸の傷が疼く。と同時に激しい頭痛。
・・そうだ、確か昨日の夜・・・誰かに助けられて・・・ここは、どこだ・・・?
「おう、入るで。起きたか兄ちゃん。」
外から声が聞こえ、声の主は部屋に入ってくる。
立っていたのは、隻眼の男。血塗れの羽織。懸命に記憶をめぐらせ、昨日助けてくれた人物を思い出す。
「・・・昨日の・・?」
「覚えとるんか?あの後兄ちゃん、気ぃ失ってのう。放っておくのもあれやから、屯所まで連れてきたんや。」
「・・・そうでしたか。・・貴殿は?」
「何や貴殿て。んな堅苦しく喋んなや。ワシは一番隊隊長、沖田総司や。」
沖田・・・総司・・。
「おかげで助かった・・・感謝する沖田殿。自分は八神吾朗と申す。」
「吾朗ぉ?!見た目と合わん名前やのう。」
その言葉は・・・子供の頃から言われている。
「父上が名付けたのでな。仕方のないことです。」
「せやな。笑ってすまんのう。もう朝やが、もう少し休むか?」
「いえ、これ以上邪魔するわけには・・・。」
「あんだけの出血やったんや。朝飯持ってきたるからもう少し休んどけ、ええな?」
・・・自分から聞いたくせに強制なのか・・・。
だが、あまり断るのも・・・。
「では、お言葉に甘えて・・・。」
「おう、ちぃと待っとれ。」
それだけ言うと部屋を出てどこかへ向かっていった。
・・・良い好機か?この流れで入隊を志望できる・・・!
部屋の外から、素振りの掛け声や話し声が多く聞こえてくる。ここが新撰組屯所・・・一体何人いるんだろう。一番隊と言っていたが、何番隊まであるのだろう・・・。
そんなことを考えていると、部屋の入り口が開く。
沖田殿———と、もう一人立っている。
「目が覚めたと聞いた。私は新撰組副長の土方歳三だ。安静になるまで休んでいくといい。」
「八神吾朗と申します。お気遣い感謝する。」
「では、私はこれで。」
・・・あれが副長。思ったより若い・・・。
「びっくりしたやろ?歳ちゃんが様子見る五月蠅くてのう。ほら、握り飯や。」
「かたじけない。」
歳ちゃんって・・・上官に対する言い方ではないだろう・・・。
その場で食事をしながら、現在の京の様子・新撰組の実態・俺の事などを話していた。
江戸から出てきて、新撰組入隊を希望している事も伝えた。
「ほぉ~・・江戸からはるばるご苦労なこっちゃ。」
「この後でも構いません。入隊試験を受けさせてもらえないだろうか?」
「ん~せやなぁ・・・。」
顎髭を触りながら考え込んでしまっている。
・・・やはりいきなりは無理か。
「一つ条件がある。」
「条件?」
「明日も入隊試験やっとるから明日来い。ワシが試験官や、相手したる。」
「・・・え?!」
沖田殿が・・・試験官を?
「昨日隊士から聞いたで。不逞浪士を投げ飛ばした細身の男がおったって。八神ちゃんの事やろ?」
「え、えぇ・・恐らく・・。」
「お前の剣の実力を見てみとうなってな。どうや?」
それは大変ありがたい・・・!
「分かりました。そうしましょう。」
「ほんなら今日は帰って休みや。・・・言うとくがワシは試験なんて関係ないで。殺す気でかかってくるんやで。」
「望むところです。」
寺田屋———
「はあぁぁ~~・・・・・。」
大きなため息をこぼし、”私”に切り替える。
はぁ~・・・昨日の夜は災難だったな・・・でも、屯所の場所も知れたし明日には試験を受けられる!
少し安心していると、今日話した隻眼の男を思い出す。
「・・・沖田・・・総司、さん・・。」
新撰組の人に命を救われるなんて・・・壬生の狼と恐れられているけど、案外そんな事ないのかな?
『ほなまた明日な、八神ちゃん!』
最後の別れ際の沖田さんの顔を思い出す。
・・・いつか、”私”もお礼を言えるかな。少し怖そうだけど、優しい目をしていた人だった。
(・・・なんて、そんなの無理だよね。)
だって、彼と出会ったのは”八神吾朗”だもん。
切ない感情を心の奥に潜め、その日は外に出ず休む事にした。
