第一部 仮面の選択
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生まれた時から私の人生は狂っていた。
”女の跡継ぎなんていらない。男として育てるのだ。”その父上の言葉に耐えられなかった母上は家を出ていった。
成長するにつれ胸に膨らみが出てくると、父上はその胸を何度も斬りつけてきた。傷を見えないように晒を巻くのは大変だった。
私は生まれてから愛されていない。その絶望を知った子供の頃から”吾朗”と名付けられた。
新撰組に入るのも、幕府に目をつけてほしいという父上の欲望の為。
私は、ただの道具だ。
「・・・さて、行くか。」
今日の夜飯を探しに行こう。
この部屋を出た瞬間、”私”は”俺”になる。
伏見——
さて・・・どうしようか・・・そういえば、さっき歩いてた時にうどん屋があったな。行ってみようか。
「いらっしゃいませ。何にしましょう?」
「この店のおすすめで頼む。」
「かしこまりました。お待ちになってください。」
京の女性は華やかな方が多いな。
寺田屋にいる女将さんと女中さんもそうだった。それに比べて・・・いや、考えるだけ無駄だ。やめておこう。
「お待ちどす。ごゆっくり。」
「感謝する。」
・・・うん、優しい味だ。京の料理は薄味と聞いていたが、これはこれで美味いな。
ゆっくり味わっていたら、店の前から悲鳴が聞こえてきた。
「貴様なめとんのか!!俺達は毎日幕府の為に動いとるんや!!そんな俺達にこんなもん食わせるつもりなんか?!」
「す、すんません・・・!この通り・・・!」
「こないな店潰したる!おい、そこの火ぃ持ってこい!」
「か、勘弁してください!」
・・・くだらない。
「おい。静かに飯も食えないのか。」
「あ?!何だてめぇ!!」
斬りつけてくる男に対し、拳で相手をする。
動きが遅すぎる・・・なんてことないな。こんな実力でよく生き残れたものだ。
とどめの一発を殴り、男は尻餅をつく。
「失せろ。」
「くそっ・・・覚えてろ・・・!」
男達は逃げていき、店内から歓声の声が上がった。
「あ、ありがとうございます!何とお礼を言うたら・・・!」
「いや、俺が個人的に気に食わなかっただけです。・・・騒がせてしまって申し訳ない。代はこれで足りますか?」
「お代は結構どす!せめて、それくらいは・・・!」
「・・ありがとう。また来させてもらう。」
「あ、ありがとうございました!」
そういう店員は店前でしばらく俺に礼を言っていた。
この街に住む人々は皆懸命に生きている。いつ死ぬか分からないこの京を。
・・・あんな奴らばかりじゃ、ろくな生活ができないだろうな。
「そこの者!止まれ!」
「ん?」
振り返ると、浅葱色のだんだら模様の羽織を着ている男達数人が近づいてきた。
・・・何だ?おかしな事はしてないが。
「先程不逞浪士に絡まれた店を助けたと聞いた。感謝する。」
「・・・大したことはしていない。礼を言われる程ではない。」
「自分達は新撰組一番隊の者だ。何かあったら言ってくれ。」
「・・・分かった。」
「では失礼する。」
ただ礼を言いに来ただけか・・・あれが新撰組・・・。
夜の街を見回っているのか。
「・・・そう言えば、この先に屯所があると女将が言っていたな。」
場所だけでも確認するか。
そう思い、暗い夜道を歩き始める。物騒な道だ・・・浮浪者がそこら中にいるな。普段から気を付けておこう。
「・・・ん・・?」
視線を感じ足を止める。周りに刀を構えた男達がいる。・・・さっきの奴等か。
「よくも恥をかかせてくれたな・・・。」
「・・こういう事自体が、武士として恥なんじゃないのか?」
「てめぇ舐めやがって・・・やっちまえ!!」
一斉に襲い掛かてくる男達に応戦する。
大した奴等ではないが、この人数は・・・!
その時、後頭部に大きな衝撃が走る。
「——?!」
振り返ると、一人が大きな石を手に持っていた。
血がついてる・・それで、頭を・・・!血で視界が見ずらい・・・くそっこんな奴等に・・・!
「死ねぇ!」
もう駄目———!
そう思い目を瞑る。体に血の感触が・・・血の感触?斬られたじゃなくて?
見上げると———目の前にいたのは、乾いた血で汚れた浅葱色の羽織を身に纏った男だった。
「大人数でやるとは、ゴッツイのう・・・ワシとも遊んでくれや!」
「ひぃっ?!し、新せ———!!」
素早い太刀筋。散らばる大量の血。その中に心から斬る事を楽しんでいる狂った笑顔。
その脅威に見惚れていると、意識が少しずつ遠のいていく。
「ふぅ・・兄ちゃん大丈・・・兄ちゃん?!」
これが、新撰組との出会い。
”私”と”俺”の、この人との出会いだった。
”女の跡継ぎなんていらない。男として育てるのだ。”その父上の言葉に耐えられなかった母上は家を出ていった。
成長するにつれ胸に膨らみが出てくると、父上はその胸を何度も斬りつけてきた。傷を見えないように晒を巻くのは大変だった。
私は生まれてから愛されていない。その絶望を知った子供の頃から”吾朗”と名付けられた。
新撰組に入るのも、幕府に目をつけてほしいという父上の欲望の為。
私は、ただの道具だ。
「・・・さて、行くか。」
今日の夜飯を探しに行こう。
この部屋を出た瞬間、”私”は”俺”になる。
伏見——
さて・・・どうしようか・・・そういえば、さっき歩いてた時にうどん屋があったな。行ってみようか。
「いらっしゃいませ。何にしましょう?」
「この店のおすすめで頼む。」
「かしこまりました。お待ちになってください。」
京の女性は華やかな方が多いな。
寺田屋にいる女将さんと女中さんもそうだった。それに比べて・・・いや、考えるだけ無駄だ。やめておこう。
「お待ちどす。ごゆっくり。」
「感謝する。」
・・・うん、優しい味だ。京の料理は薄味と聞いていたが、これはこれで美味いな。
ゆっくり味わっていたら、店の前から悲鳴が聞こえてきた。
「貴様なめとんのか!!俺達は毎日幕府の為に動いとるんや!!そんな俺達にこんなもん食わせるつもりなんか?!」
「す、すんません・・・!この通り・・・!」
「こないな店潰したる!おい、そこの火ぃ持ってこい!」
「か、勘弁してください!」
・・・くだらない。
「おい。静かに飯も食えないのか。」
「あ?!何だてめぇ!!」
斬りつけてくる男に対し、拳で相手をする。
動きが遅すぎる・・・なんてことないな。こんな実力でよく生き残れたものだ。
とどめの一発を殴り、男は尻餅をつく。
「失せろ。」
「くそっ・・・覚えてろ・・・!」
男達は逃げていき、店内から歓声の声が上がった。
「あ、ありがとうございます!何とお礼を言うたら・・・!」
「いや、俺が個人的に気に食わなかっただけです。・・・騒がせてしまって申し訳ない。代はこれで足りますか?」
「お代は結構どす!せめて、それくらいは・・・!」
「・・ありがとう。また来させてもらう。」
「あ、ありがとうございました!」
そういう店員は店前でしばらく俺に礼を言っていた。
この街に住む人々は皆懸命に生きている。いつ死ぬか分からないこの京を。
・・・あんな奴らばかりじゃ、ろくな生活ができないだろうな。
「そこの者!止まれ!」
「ん?」
振り返ると、浅葱色のだんだら模様の羽織を着ている男達数人が近づいてきた。
・・・何だ?おかしな事はしてないが。
「先程不逞浪士に絡まれた店を助けたと聞いた。感謝する。」
「・・・大したことはしていない。礼を言われる程ではない。」
「自分達は新撰組一番隊の者だ。何かあったら言ってくれ。」
「・・・分かった。」
「では失礼する。」
ただ礼を言いに来ただけか・・・あれが新撰組・・・。
夜の街を見回っているのか。
「・・・そう言えば、この先に屯所があると女将が言っていたな。」
場所だけでも確認するか。
そう思い、暗い夜道を歩き始める。物騒な道だ・・・浮浪者がそこら中にいるな。普段から気を付けておこう。
「・・・ん・・?」
視線を感じ足を止める。周りに刀を構えた男達がいる。・・・さっきの奴等か。
「よくも恥をかかせてくれたな・・・。」
「・・こういう事自体が、武士として恥なんじゃないのか?」
「てめぇ舐めやがって・・・やっちまえ!!」
一斉に襲い掛かてくる男達に応戦する。
大した奴等ではないが、この人数は・・・!
その時、後頭部に大きな衝撃が走る。
「——?!」
振り返ると、一人が大きな石を手に持っていた。
血がついてる・・それで、頭を・・・!血で視界が見ずらい・・・くそっこんな奴等に・・・!
「死ねぇ!」
もう駄目———!
そう思い目を瞑る。体に血の感触が・・・血の感触?斬られたじゃなくて?
見上げると———目の前にいたのは、乾いた血で汚れた浅葱色の羽織を身に纏った男だった。
「大人数でやるとは、ゴッツイのう・・・ワシとも遊んでくれや!」
「ひぃっ?!し、新せ———!!」
素早い太刀筋。散らばる大量の血。その中に心から斬る事を楽しんでいる狂った笑顔。
その脅威に見惚れていると、意識が少しずつ遠のいていく。
「ふぅ・・兄ちゃん大丈・・・兄ちゃん?!」
これが、新撰組との出会い。
”私”と”俺”の、この人との出会いだった。