第一部 仮面の選択
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頭の中に響く父上の声。体中に残る父上に触れられた感触。
声も、体温も、何もかもが頭に残っている。
気持ち悪い。吐き気がする。死にたい。殺して。
全てが終わり、一人になった部屋で、ただただ死を望む。
「———八神ちゃん!!!」
その時聞こえた愛しい人の声。
(どうしてここに?)
体に感じる筋肉質の腕。私を心配する表情。
嬉しさと一緒に、悲しみの感情も出てきた。
こんな状態の私を見られたくなかった。知られたくなかった。
見ないでと言ったのに、その人は私を強く抱きしめる。
「大丈夫や・・・もう、大丈夫や。」
大丈夫・・・?あぁ・・もう大丈夫なんだ。
数日振りの心の安堵を得られ、私は眠りについた。愛しい人の腕の中で。
「・・ん・・・。」
目が覚めると、ここがまだ旭屋だというのが分かった。
変わっているのは、きちんと着られた着物。拭かれた体。胸の痛みを感じたが、その胸は包帯を巻かれ治療されていた。
誰が・・・?私、確か・・・。
『———八神ちゃん!!!』
———そうだ。あの人が来てくれた。抱きしめてくれた。
その後・・は・・・?
考え込んでいると部屋が開かれるのに気がつき視線を向けると、金色の着物を着た一人の人物が立っていた。
「よぉ、起きたか。よく眠れたかい?」
この人は、誰?
起き上がろうとする私を制し、布団の隣に座ってきた。
「総司達はとりあえず屯所に戻したぜ。また夜になったら来るだろうよ。その前に・・・お前さんと話してみたいと思ってな。あんた、名前は?」
「・・・八神、です。」
「八神か。俺は新撰組局長、近藤勇だ。」
「——!」
この人が・・あの人達の代表・・新撰組局長、近藤勇・・・。
「俺ぁ昨日ここで飲んでてな。歳達からある程度話は聞いた。しっかし驚いたねぇ~。男の化けて入隊するとは・・・あんた、何が目的で新撰組に入ったんだ?」
私を見ているその顔は笑顔だったが、目は笑っていない。
・・・そうだよね。私はみんなを騙していたんだ。その行為は、新撰組に対しての侮辱行為でもある。
この人は理由を聞いた後・・・きっと私を殺す。
それでもいい。ここで終われるなら、それでいい。
「・・・私の父は、地位と名誉が欲しかったんです。」
私の産まれた家は、代々商売人としてその地位を確立させていた。
けれど先代、御爺様の跡を継いだ父上は商売が上手くなかった。時代の影響もあり、安定のない私達の生活は貧しかった。
「父が考えたのが、私を男として育てて約束された地位を得る事。」
母に名付けられた名は捨てられ、吾朗と名付けられたあの日から男として生きることを強要された。
反発していた母だったが、耐えられず出て行ってしまったらしい。母の事は記憶にない。周りもそんな父に耐えられず、どんどん離れていった。
誰にも助けを求められず、ずっと一人父上と暮らしていた。
「鍛錬を重ね男の仕草を学ぶ日々。胸が膨らんでくると、その度に斬りつけられました。・・・何度も何度も・・その血を流しながら、ずっと・・・。」
時は流れて、新撰組の噂が父上の耳に入った。
「新撰組を利用しろ。お前はこの為に産まれたのだ。」
人斬り集団と言われている組織に娘を入隊させる事に、父上は何の抵抗もなかった。
「・・・でも、そんな父上に逆らうのが怖くてできなかった・・。」
心では拒絶しているのに、体が言うことを聞かない。
そんな人生を生きてきたのが——この私だ。
声も、体温も、何もかもが頭に残っている。
気持ち悪い。吐き気がする。死にたい。殺して。
全てが終わり、一人になった部屋で、ただただ死を望む。
「———八神ちゃん!!!」
その時聞こえた愛しい人の声。
(どうしてここに?)
体に感じる筋肉質の腕。私を心配する表情。
嬉しさと一緒に、悲しみの感情も出てきた。
こんな状態の私を見られたくなかった。知られたくなかった。
見ないでと言ったのに、その人は私を強く抱きしめる。
「大丈夫や・・・もう、大丈夫や。」
大丈夫・・・?あぁ・・もう大丈夫なんだ。
数日振りの心の安堵を得られ、私は眠りについた。愛しい人の腕の中で。
「・・ん・・・。」
目が覚めると、ここがまだ旭屋だというのが分かった。
変わっているのは、きちんと着られた着物。拭かれた体。胸の痛みを感じたが、その胸は包帯を巻かれ治療されていた。
誰が・・・?私、確か・・・。
『———八神ちゃん!!!』
———そうだ。あの人が来てくれた。抱きしめてくれた。
その後・・は・・・?
考え込んでいると部屋が開かれるのに気がつき視線を向けると、金色の着物を着た一人の人物が立っていた。
「よぉ、起きたか。よく眠れたかい?」
この人は、誰?
起き上がろうとする私を制し、布団の隣に座ってきた。
「総司達はとりあえず屯所に戻したぜ。また夜になったら来るだろうよ。その前に・・・お前さんと話してみたいと思ってな。あんた、名前は?」
「・・・八神、です。」
「八神か。俺は新撰組局長、近藤勇だ。」
「——!」
この人が・・あの人達の代表・・新撰組局長、近藤勇・・・。
「俺ぁ昨日ここで飲んでてな。歳達からある程度話は聞いた。しっかし驚いたねぇ~。男の化けて入隊するとは・・・あんた、何が目的で新撰組に入ったんだ?」
私を見ているその顔は笑顔だったが、目は笑っていない。
・・・そうだよね。私はみんなを騙していたんだ。その行為は、新撰組に対しての侮辱行為でもある。
この人は理由を聞いた後・・・きっと私を殺す。
それでもいい。ここで終われるなら、それでいい。
「・・・私の父は、地位と名誉が欲しかったんです。」
私の産まれた家は、代々商売人としてその地位を確立させていた。
けれど先代、御爺様の跡を継いだ父上は商売が上手くなかった。時代の影響もあり、安定のない私達の生活は貧しかった。
「父が考えたのが、私を男として育てて約束された地位を得る事。」
母に名付けられた名は捨てられ、吾朗と名付けられたあの日から男として生きることを強要された。
反発していた母だったが、耐えられず出て行ってしまったらしい。母の事は記憶にない。周りもそんな父に耐えられず、どんどん離れていった。
誰にも助けを求められず、ずっと一人父上と暮らしていた。
「鍛錬を重ね男の仕草を学ぶ日々。胸が膨らんでくると、その度に斬りつけられました。・・・何度も何度も・・その血を流しながら、ずっと・・・。」
時は流れて、新撰組の噂が父上の耳に入った。
「新撰組を利用しろ。お前はこの為に産まれたのだ。」
人斬り集団と言われている組織に娘を入隊させる事に、父上は何の抵抗もなかった。
「・・・でも、そんな父上に逆らうのが怖くてできなかった・・。」
心では拒絶しているのに、体が言うことを聞かない。
そんな人生を生きてきたのが——この私だ。