第一部 仮面の選択
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開けた部屋の中は、何も残っとらんかった。
「どういう事や・・・?!一ちゃん、説明せぇ!」
「俺も何も・・おりょう、いるか?!」
「一さん?どないしたんそんな大きい声だして・・。」
「おりょう、ここに泊まっていた八神はどうした?」
「あ・・八神さんなら、一さんが出た後出ていきはったよ。」
「何やと?!」
出て行ったって・・・何でや?
「なんや男の人とおったなぁ。少し年配の方やった。」
「どうなってるんだ・・・。」
「・・・なぁ、その二人どないな感じやった?何か言うとらんかったか?」
「ん~・・・あ、そういえば・・・。」
おりょうちゃんいう女中は、思い出したかのような顔をした後なんや疑問を持った顔で一ちゃんを見よった。
「なぁ一さん。八神さんの名前、吾朗でしたよな?」
「ん?あぁそのはずだが・・・それがどうした?」
「その一緒におった方がな、八神さんの事”美鈴”言うてたんよ。気になって聞こうとしたら八神さんに止められて・・・なんや八神さん、辛そうな顔しとったな・・・。」
「美鈴?」
「なんで女の名前なんや。あいつは男———」
『隊長は、自分を否定されたことがありますか?』
———!!
『俺は、本当の自分をずっと隠して生きてきたんです。』
『父が望む、八神吾朗にならなきゃいけないのに・・・』
『わ、私は・・・!』
『自分の人生を生きたい!!』
『・・・沖田さんは・・・”私”の事も、認めてくれますか?』
「まさか———」
「ん?あ、おい沖田!!どこ行くんだ?!」
一ちゃんの声に振り返らず、ワシは歳ちゃん達のおる祇園へ走っていった。
もしかして・・・八神ちゃんは———
祇園『旭屋』———
「歳ちゃんおるか?!」
「・・早かったな。八神は見つかったのか?」
「はぁ・・はぁ・・いや、もぬけの殻だった・・・。」
「えー、じゃあ京を出ちゃったんですかね?斎藤さん、どうして息切れしてるんです?」
「お、沖田が急に走るから・・・。」
「何や斎藤、情けないの。」
「・・・総司?」
・・・ワシの勘が当たっとるなら、あいつを連れてったんは恐らく親父さんや。
せやけど何で・・・。
「というか、聞いてくださいよー。隣でさっきまでヤッてる声聞こえて気まずいのなんの・・・。」
「あぁ・・そういえばそうやったな。なんやえらい名前叫んどったな。みすず~みすず~言うてたな。」
「・・・ちょい待て新八。今”みすず”言うたか?」
「あ?それがどないした?」
『八神さんの事”美鈴”言うてたんよ。』
「おい沖田、まさか——」
言葉を待たずに、ワシは隣の部屋へ向こうた。
嫌な予感がする。
(まさか———)
部屋を開けると、そこにおった。
乱れた着物。股から垂れとる白いどろっとした液体。痣だらけの体。
晒の下から出とる胸は、無数の古い刀傷。その一部が開き、乳房が血に濡れとった。
その姿に驚愕したワシは、そこに倒れとる人物に近づき名前を呼ぶ。
「———八神ちゃんっ!!!」
体を抱き上げ見たその目は、見覚えのある虚無の目。
その後部屋に来た一ちゃん達は息をのみ、八神ちゃんのおる部屋を見る。
「え、何これ?え・・八神さん?」
「どないなっとんねん・・!」
「土方殿、今日ここにあの人は?」
「店の者に聞いてみる。平助、一緒に来い。」
「本当に・・・八神なのか?」
背後で戸惑う声が聞こえたが、ワシの耳には入らんかった。
目の前で、ワシの腕の中におるこの女を、どうにかせなアカンと思うしかできんかった。羽織を脱ぎその体が見えんようかけると、小さな声が聞こえてくる。
「・・で・・。」
「八神ちゃん?!大丈夫か、しっかりせぇ!」
そのまま続く言葉を聞こうと耳を傾けると、泣きながら言う。
「・・みな、いで・・私、を・・みない・・で・・。」
弱々しく呟く拒絶の言葉。
その言葉にワシは強く胸を苦しめられた。
「何言うとるんや!そない考えとる時やないやろ!」
「・・みないで・・私・・は、今・・汚・・い。」
「——!!」
ワシは、拒絶する八神ちゃんを抱きしめる事しかできんかった。
「どういう事や・・・?!一ちゃん、説明せぇ!」
「俺も何も・・おりょう、いるか?!」
「一さん?どないしたんそんな大きい声だして・・。」
「おりょう、ここに泊まっていた八神はどうした?」
「あ・・八神さんなら、一さんが出た後出ていきはったよ。」
「何やと?!」
出て行ったって・・・何でや?
「なんや男の人とおったなぁ。少し年配の方やった。」
「どうなってるんだ・・・。」
「・・・なぁ、その二人どないな感じやった?何か言うとらんかったか?」
「ん~・・・あ、そういえば・・・。」
おりょうちゃんいう女中は、思い出したかのような顔をした後なんや疑問を持った顔で一ちゃんを見よった。
「なぁ一さん。八神さんの名前、吾朗でしたよな?」
「ん?あぁそのはずだが・・・それがどうした?」
「その一緒におった方がな、八神さんの事”美鈴”言うてたんよ。気になって聞こうとしたら八神さんに止められて・・・なんや八神さん、辛そうな顔しとったな・・・。」
「美鈴?」
「なんで女の名前なんや。あいつは男———」
『隊長は、自分を否定されたことがありますか?』
———!!
『俺は、本当の自分をずっと隠して生きてきたんです。』
『父が望む、八神吾朗にならなきゃいけないのに・・・』
『わ、私は・・・!』
『自分の人生を生きたい!!』
『・・・沖田さんは・・・”私”の事も、認めてくれますか?』
「まさか———」
「ん?あ、おい沖田!!どこ行くんだ?!」
一ちゃんの声に振り返らず、ワシは歳ちゃん達のおる祇園へ走っていった。
もしかして・・・八神ちゃんは———
祇園『旭屋』———
「歳ちゃんおるか?!」
「・・早かったな。八神は見つかったのか?」
「はぁ・・はぁ・・いや、もぬけの殻だった・・・。」
「えー、じゃあ京を出ちゃったんですかね?斎藤さん、どうして息切れしてるんです?」
「お、沖田が急に走るから・・・。」
「何や斎藤、情けないの。」
「・・・総司?」
・・・ワシの勘が当たっとるなら、あいつを連れてったんは恐らく親父さんや。
せやけど何で・・・。
「というか、聞いてくださいよー。隣でさっきまでヤッてる声聞こえて気まずいのなんの・・・。」
「あぁ・・そういえばそうやったな。なんやえらい名前叫んどったな。みすず~みすず~言うてたな。」
「・・・ちょい待て新八。今”みすず”言うたか?」
「あ?それがどないした?」
『八神さんの事”美鈴”言うてたんよ。』
「おい沖田、まさか——」
言葉を待たずに、ワシは隣の部屋へ向こうた。
嫌な予感がする。
(まさか———)
部屋を開けると、そこにおった。
乱れた着物。股から垂れとる白いどろっとした液体。痣だらけの体。
晒の下から出とる胸は、無数の古い刀傷。その一部が開き、乳房が血に濡れとった。
その姿に驚愕したワシは、そこに倒れとる人物に近づき名前を呼ぶ。
「———八神ちゃんっ!!!」
体を抱き上げ見たその目は、見覚えのある虚無の目。
その後部屋に来た一ちゃん達は息をのみ、八神ちゃんのおる部屋を見る。
「え、何これ?え・・八神さん?」
「どないなっとんねん・・!」
「土方殿、今日ここにあの人は?」
「店の者に聞いてみる。平助、一緒に来い。」
「本当に・・・八神なのか?」
背後で戸惑う声が聞こえたが、ワシの耳には入らんかった。
目の前で、ワシの腕の中におるこの女を、どうにかせなアカンと思うしかできんかった。羽織を脱ぎその体が見えんようかけると、小さな声が聞こえてくる。
「・・で・・。」
「八神ちゃん?!大丈夫か、しっかりせぇ!」
そのまま続く言葉を聞こうと耳を傾けると、泣きながら言う。
「・・みな、いで・・私、を・・みない・・で・・。」
弱々しく呟く拒絶の言葉。
その言葉にワシは強く胸を苦しめられた。
「何言うとるんや!そない考えとる時やないやろ!」
「・・みないで・・私・・は、今・・汚・・い。」
「——!!」
ワシは、拒絶する八神ちゃんを抱きしめる事しかできんかった。