Holy Song
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『最近神室町で流れている小さな噂。
”劇場前広場で歌う女がいる。”
別に珍しい事ではないが
今回の流れた噂はそれなりのワケがあるからだ。
そう、その理由とは–––
今まで歌っていた誰よりの美しい声だからだ。
今宵もきっと現れるであろう
天使の歌声を持つ女が––』
「…こんな風に言われてる人物がネカフェ巡りなんて驚くよね…。」
ふと気になって調べたけど…まさかここまでなってるなんて…ネットの世界って恐ろしい。
そんな事を考えながら私はデスクトップ下に表示されている時間を見る。”18:42”。そろそろ準備しなきゃ!
「えっとアイライン、と…今日はちょっと濃くしようかな…。」
ブツブツと呟きながらパソコンの明かりを頼りに鏡を用意してメイクを始める。
アイラインをしっかりひき濃いシャドウで瞼を鮮やかにさせる。コンシーラーで気になるクマを隠して表情を明るくする。ネカフェを出る為に荷物をまとめて会計を済ませて外に出る。
向かう先は––劇場前広場と呼ばれている場所。多くの人達の間をうまくすり抜けて私はステージに立つ。そして片手に持つギターケースからアコースティックギターを取り出して今夜も歌う。
この危険な街、神室町で。
「あ、あれ!歌姫だ!」
「えっ本当だ!ちょっと聴いてこうよ!」
私がギターを弾いて歌い出すと、一気に多くの人達が集まってくる。あっという間にギャラリーの完成だ。私は私の為に集まってくれた人達の為に歌う。誰かの為に歌う事、それが私にとっての”幸せ”なんだから。
「みなさん、今夜も聴いてくださってありがとうございます!最後にもう一曲だけ、歌わせてもらいますね!」
「え〜もう終わり?!もっと聴きたい〜!」
「歌姫ー!アンコールー!」
今日もみんなからの優し声援が私の耳に届く。それが何よりも嬉しい!今日も楽しんでくれた。みんなの応援が明日の私に力をくれる。
そんなみんなに感謝の気持ちを込めて歌おうとした、その時だった。
「よぉ嬢ちゃん。アンタ最近ここで歌ってるんだって?」
「え?」
(ヤ…ヤクザ…?!)
いかにも極道でございます、といった服装の男達が3人程近づいてきた。折角集まってくれた人達も突然やってきた怖い人達の所為で足早と逃げていった。
1人残された私はその場から動く事が出来なくてどんどん詰め寄られてしまう。お…落ち着け私、ちゃんと警察に許可をもらってやってるんだから怖がる事なんてない…!
「な、なんでしょうか。」
「あのさぁ?ここで歌うなら俺達にみかじめ料払わなきゃ駄目だぜ?」
みかじめ料って…テレビとかでたまに出てくる、お金を払うって事??
「こ、ここで歌うのを警察に届け出を出してるから…か、関係ないです…!」
「そんなん知ったこっちゃねぇよ!いいから払ってんだよ!」
「そ、そんな…!」
「まぁ金が無理なら体でもいいんだぜ?ヘヘッ…アンタいい体してそうだしよぉ?」
「ひっ…!」
3人がどんどん近づいてきて、壁に追いやられて私はとうとう逃げる事が出来なくなってしまった。
か、体で払って…そんな…!!
少しずつ私の体に男の人達の手が近づいてくる。
「いっ…やっ…!」
(助けて…誰か助けて!)
恐怖で動けなくて声も出ない私は、やっと出た掠れた声で助けを求めた。でもそんな私の声を聞いてくれる人は誰もいなくて、道を歩く人々は関わりたくないといった目で見てくるだけ。
私がネットを騒がせている”歌姫”って知ってるハズなのに…誰も助けてくれない。
(はは…浮かれてたんだ、私…。)
ここでなら、新しい私なら、誰かに助けてもらえるって思ってた。
そう思ってたのに……馬鹿だなぁ私。私は今から、この人達に–––
「––おぅ、何しとんねんお前等。」
「あ?なんだテメェ今いいとこ……ひっ?!?!」
「…?」
(何…?)
低くて凄い怖い声。今の人達じゃない、別の誰か。一体誰…?
私は恐る恐る目を開けて視線を上げると––目の前の3人が振り返っていて体を震わせていた。そしてその先にいたのは–––
(……ヤ、クザ…?)
素肌に蛇柄ジャケット、刺青が見えててその顔は眼帯をしていた。片目の鋭い目でヤクザ達を睨みつけているその人も、どこからどう見てもヤクザだった。
「こんな女に寄ってたかって…情けない奴等やのぉ。」
「ひぃっ…!!」
「さっさと失せろ。もしまた来たら…容赦せえへんで?」
「う、うわぁぁ!!」
それだけ、たったそれだけなのに…ヤクザ達は泣き叫びながら走り去って行った。
凄い…さっきの人達と圧が全然違う……これが本当のヤクザ、なのかな?
「おぅ嬢ちゃん。」
「は、はい!」
一歩一歩近づいてくる眼帯のヤクザ。
そ、そうだよね…あの人達じゃなくてもみかじめ払えって言ってくる人はいるよね…ど、どうしよう、お金なんてないし体で払えなんて言われたら…!!
「それしもうてついてきぃや。」
「……へ?」
お…思わず拍子抜けした声出しちゃった。
「場所変えるで。ええから早うしぃや。」
「は、はい…。」
場所を変える……って事は、もしかしてホテルとか…?!
……そ、そうだよね、そうなるよね。体で払わないと駄目だよね。さっき助けてもらったようなもんだし…お礼しないと。断れる立場じゃないし…。
私はアコギをケースにしまって眼帯男の後ろを黙って着いて行った。
(…私、何の為にここにいるんだろ…。)
昔から私は人に意見を言えるような性格じゃなかった。周りに合わせて過ごすのが一番楽で危険はないって分かるから。自分を押し殺しさえすれば、何も起こらないんだから。でもそんな性格の所為で私は今まで自分の事を堂々とする事が出来なかった。
その性格の所為で辛くて嫌になって…だからここに来たのに…。
「ここや、入るで。」
暫く歩いた後に足を止めて指さしたその先にある建物は––ラブホテル。
やっぱり…そういう、事だよね。
「…分かり、ました…。」
(なんで断れないんだろう…私の馬鹿…。)
後悔しか考えていなかった私は眼帯男と一緒にラブホテルの中に入って行く。
……今思うと、これが私の人生を大きく変えてくれたんだ。
この眼帯男は–––真島吾朗は。私にとっての”運命の人”になるんだって事を、この時の私は…まだ知らない。
”劇場前広場で歌う女がいる。”
別に珍しい事ではないが
今回の流れた噂はそれなりのワケがあるからだ。
そう、その理由とは–––
今まで歌っていた誰よりの美しい声だからだ。
今宵もきっと現れるであろう
天使の歌声を持つ女が––』
「…こんな風に言われてる人物がネカフェ巡りなんて驚くよね…。」
ふと気になって調べたけど…まさかここまでなってるなんて…ネットの世界って恐ろしい。
そんな事を考えながら私はデスクトップ下に表示されている時間を見る。”18:42”。そろそろ準備しなきゃ!
「えっとアイライン、と…今日はちょっと濃くしようかな…。」
ブツブツと呟きながらパソコンの明かりを頼りに鏡を用意してメイクを始める。
アイラインをしっかりひき濃いシャドウで瞼を鮮やかにさせる。コンシーラーで気になるクマを隠して表情を明るくする。ネカフェを出る為に荷物をまとめて会計を済ませて外に出る。
向かう先は––劇場前広場と呼ばれている場所。多くの人達の間をうまくすり抜けて私はステージに立つ。そして片手に持つギターケースからアコースティックギターを取り出して今夜も歌う。
この危険な街、神室町で。
「あ、あれ!歌姫だ!」
「えっ本当だ!ちょっと聴いてこうよ!」
私がギターを弾いて歌い出すと、一気に多くの人達が集まってくる。あっという間にギャラリーの完成だ。私は私の為に集まってくれた人達の為に歌う。誰かの為に歌う事、それが私にとっての”幸せ”なんだから。
「みなさん、今夜も聴いてくださってありがとうございます!最後にもう一曲だけ、歌わせてもらいますね!」
「え〜もう終わり?!もっと聴きたい〜!」
「歌姫ー!アンコールー!」
今日もみんなからの優し声援が私の耳に届く。それが何よりも嬉しい!今日も楽しんでくれた。みんなの応援が明日の私に力をくれる。
そんなみんなに感謝の気持ちを込めて歌おうとした、その時だった。
「よぉ嬢ちゃん。アンタ最近ここで歌ってるんだって?」
「え?」
(ヤ…ヤクザ…?!)
いかにも極道でございます、といった服装の男達が3人程近づいてきた。折角集まってくれた人達も突然やってきた怖い人達の所為で足早と逃げていった。
1人残された私はその場から動く事が出来なくてどんどん詰め寄られてしまう。お…落ち着け私、ちゃんと警察に許可をもらってやってるんだから怖がる事なんてない…!
「な、なんでしょうか。」
「あのさぁ?ここで歌うなら俺達にみかじめ料払わなきゃ駄目だぜ?」
みかじめ料って…テレビとかでたまに出てくる、お金を払うって事??
「こ、ここで歌うのを警察に届け出を出してるから…か、関係ないです…!」
「そんなん知ったこっちゃねぇよ!いいから払ってんだよ!」
「そ、そんな…!」
「まぁ金が無理なら体でもいいんだぜ?ヘヘッ…アンタいい体してそうだしよぉ?」
「ひっ…!」
3人がどんどん近づいてきて、壁に追いやられて私はとうとう逃げる事が出来なくなってしまった。
か、体で払って…そんな…!!
少しずつ私の体に男の人達の手が近づいてくる。
「いっ…やっ…!」
(助けて…誰か助けて!)
恐怖で動けなくて声も出ない私は、やっと出た掠れた声で助けを求めた。でもそんな私の声を聞いてくれる人は誰もいなくて、道を歩く人々は関わりたくないといった目で見てくるだけ。
私がネットを騒がせている”歌姫”って知ってるハズなのに…誰も助けてくれない。
(はは…浮かれてたんだ、私…。)
ここでなら、新しい私なら、誰かに助けてもらえるって思ってた。
そう思ってたのに……馬鹿だなぁ私。私は今から、この人達に–––
「––おぅ、何しとんねんお前等。」
「あ?なんだテメェ今いいとこ……ひっ?!?!」
「…?」
(何…?)
低くて凄い怖い声。今の人達じゃない、別の誰か。一体誰…?
私は恐る恐る目を開けて視線を上げると––目の前の3人が振り返っていて体を震わせていた。そしてその先にいたのは–––
(……ヤ、クザ…?)
素肌に蛇柄ジャケット、刺青が見えててその顔は眼帯をしていた。片目の鋭い目でヤクザ達を睨みつけているその人も、どこからどう見てもヤクザだった。
「こんな女に寄ってたかって…情けない奴等やのぉ。」
「ひぃっ…!!」
「さっさと失せろ。もしまた来たら…容赦せえへんで?」
「う、うわぁぁ!!」
それだけ、たったそれだけなのに…ヤクザ達は泣き叫びながら走り去って行った。
凄い…さっきの人達と圧が全然違う……これが本当のヤクザ、なのかな?
「おぅ嬢ちゃん。」
「は、はい!」
一歩一歩近づいてくる眼帯のヤクザ。
そ、そうだよね…あの人達じゃなくてもみかじめ払えって言ってくる人はいるよね…ど、どうしよう、お金なんてないし体で払えなんて言われたら…!!
「それしもうてついてきぃや。」
「……へ?」
お…思わず拍子抜けした声出しちゃった。
「場所変えるで。ええから早うしぃや。」
「は、はい…。」
場所を変える……って事は、もしかしてホテルとか…?!
……そ、そうだよね、そうなるよね。体で払わないと駄目だよね。さっき助けてもらったようなもんだし…お礼しないと。断れる立場じゃないし…。
私はアコギをケースにしまって眼帯男の後ろを黙って着いて行った。
(…私、何の為にここにいるんだろ…。)
昔から私は人に意見を言えるような性格じゃなかった。周りに合わせて過ごすのが一番楽で危険はないって分かるから。自分を押し殺しさえすれば、何も起こらないんだから。でもそんな性格の所為で私は今まで自分の事を堂々とする事が出来なかった。
その性格の所為で辛くて嫌になって…だからここに来たのに…。
「ここや、入るで。」
暫く歩いた後に足を止めて指さしたその先にある建物は––ラブホテル。
やっぱり…そういう、事だよね。
「…分かり、ました…。」
(なんで断れないんだろう…私の馬鹿…。)
後悔しか考えていなかった私は眼帯男と一緒にラブホテルの中に入って行く。
……今思うと、これが私の人生を大きく変えてくれたんだ。
この眼帯男は–––真島吾朗は。私にとっての”運命の人”になるんだって事を、この時の私は…まだ知らない。
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