シエルちゃんの頭を撫でながら、今日も話しかける。
これが今のワシの毎日の日課や。

「今日はええ天気やで。起きたら一緒に散歩しような。・・・いや、その前にリハビリか。距離間の練習はワシに任せとき！」

他の人間から見たら、哀れな男やろうな。
いつ起きるかわからん女をこうして毎日待っとる。せやけど、ワシにとって苦痛やない。一緒に暮らした時と同じや。惚れた女の傍におれる。こない幸せなことはない。

「・・・ワシは、ここにおるからな。」

そん時やった。握った右手が反応しよった。

「——？！シエル！」

顔を覗き込むと、左目から涙が流れとった。
なんでや・・・もしかして・・！

「シエル？シエル！？——シエル！！」

ワシの声に反応するように、右手の力が強うなってきた。
そして——左目が開く。

「・・・ま・・じま・・・さ・・ん・・・・？」
「——シエル・・・！」

両手でその手を握る。握っとるその右手に力が入ってきた。
左目からは仰山涙が流れとる。
生きとる。起きとる。
充分や。それだけで充分なんや。

「・・・おかえりやで、シエル。」
「っ・・ただ・・い、ま・・・まじ・・ま、さ・・！」

優しく体を起こし、抱きしめる。
シエルも抱きしめてくれとる。
シエルの泣き声が、部屋の中に響いとる。

「まじ、まさ・・・真島、さん・・・！」

その涙が嬉しくて、頭を撫でる。

（・・・アカン。抱きしめとってよかった。）

そうやなかったら、今頃俺の泣き顔を見られとるところやった。
そない情けない顔、見せられへんわ・・・。

「シエル・・・愛しとる・・。」
「わ、わた・・・グスッ・・私も・・・！」

暫く泣いた後、俺達は静かに見つめ合いそのままキスをする。
あぁ・・・これでええ。充分幸せや。
愛しとる女と、この先ずっと一緒にいよう。
俺が一緒この女を守る。