夢を見てるのかな？
目の前に、死んだはずの父と母がいる。その二人の傍に小さな子供がいた。あれは私だ。
幸せそうな笑顔。幸せそうな家庭。

（楽しかったのは、少しだけ覚えてる。）

父は物静かな方だった。でも私の事を見る目は凄く優しくて、いつも大きな手で私の頭を撫でてくれていた。
母は明るい性格で、いたずら好きだった私をいつも叱ってたっけ。でも最後には、とびきりの笑顔で私を抱きしめてくれる。

（本当に・・・本当に大好きだった、私の両親。）

そんなことを考えていると、二人の姿は消え、目の前には少し成長した私が立っていた。
体中包帯だらけ、血まみれのナイフ。大好きな２人を失って、親戚に売られた私は殺し屋の道を進む。
売られたボスに気に入られ、全てを教えてもらった。

（私に性を教えたのも・・・ボスだった。）

ある日私はボスに処女を奪われ、それから毎日のように男達に狙われた。
消し去りたい記憶。忘れたい過去。

（これは走馬灯だ。・・・すべてを見たら、私は死ぬのかな。）

そこから流れてきた記憶は、今まで殺してきた人間の顔だった。
死の間際の顔を見ても、何も思わない。
感情を持てば、罪の意識で潰されてしまう。感情を失くすこと。それが私の唯一の防御策だった。そうでなきゃ、殺しなんてやってられない。
失敗は死。死なないためには、殺すしかない。私はその為にボスに育てられた”最高傑作”だった。

（最高傑作・・・か・・・。）

ボスには昔女がいたらしい。一緒にいれた時間は殆どなく、敵組織に殺されたらしい。
女の顔を、女の幻影を追い続けて、そんな中出会った私を自分の好みに作り上げる。そんな話を一度だけ聞いたことがある。
だから”最高傑作”。”奴隷”。

（私は、ただのモノだったんだ。）