「シエルちゃん・・・。」
「ん・・・。・・・っ？！」

少し開いた目は、一気に見開いた。
その瞬間、大粒の涙が目から流れ落ちとった。以前にも見た涙。でも、前のとちゃう。
俺が起きて、嬉しい思ってくれとる涙や。

（・・・その涙見て嬉しい思っとる俺は、酷い人間やな。）

「ただいまやで・・・シエルちゃん。」
「・・・おかえりなさい・・・真島さん・・・！」

泣きながら抱きついてきた彼女は、気配があった。
初めてホンマのシエルちゃんの感情を見れた。
出会った頃の無ではない。
一人の人間として、一人の女として、八神シエルとしてその場でおる。
力を込めて抱きしめる。彼女に泣き声で、涙で、温もりで実感する。

（・・・生きれて・・・よかったわ・・・。）

こないな感情初めてや。
今までこない生きとる事が嬉しいと思うた事はない。
惚れた女を抱きしめられ、惚れた女の声が聞けて、こない幸せな事ないで。

『一人の女を愛してみろ。今度は逃げずにな。』

・・・俺は逃げん。
必ずこの子を助けてみせる。
俺は極道やが・・・幸せにしてみせる。いや、したいんや。
今度こそ、心底惚れた女を守ってみせる。