「ところでシエルちゃん。こないなところでボーっとしてどないしたんや？」
「実は東京に来たのが初めてで・・・少し人酔いして休んでました。」
「せやったんか。大丈夫か？」
「少し落ち着きました。ありがとうございます。」

見た限りまだ若そうな女やな・・・初めてっちゅうことは、田舎からきたんか？

『くきゅる～・・・』

小さな腹の音が聞こえ、シエルちゃんは慌てて腹を抑えた。

「す、すみません・・！」
「何や、腹へっとるんか？」
「あんまりお金も持ち合わせがなくて・・・」

ほ～・・・田舎からきて金をあんま持ってこんかったか、それとも使いすぎたか・・・。

「せや、これから酒飲もう思ってたんや。奢ったるさかい付き合うてくれへんか？」
「え？そんな・・・ご迷惑じゃ・・・。」
「一人で飲んでもつまらんし、こないなとこに女置いてくほうが嫌なだけや。ほら行くで？」
「え、あ、はい！」

意外にもすんなり来よった・・・危機管理ないんか？
誘ったんは俺の方やけど。



行きつけの店に行き、個室に入って適当に注文した。
初めてこないなとこに入ったのか、ずっとソワソワしとる。

「そんな気ぃはらんで平気やで？もっと楽にしぃや。」
「そ、そうですね・・・アハハ・・・。」

(めっちゃめちゃ緊張しとるやんけ。)

それから少ししてメシが運ばれてくると、まるで初めて宝石をみたように目を輝かせておった。

「どや？うまいか？」
「はい、すっごく！ありがとうございます！」

満面の笑みで食事を楽しんどる。
せやけど、公園で感じた気配の無さは変わらずやった。

(不思議な女やのう・・・。)

「シエルちゃんは何しに東京きたんやったな？しかも神室町に」
「テレビで見てて面白そうなところだな～って思って。それに・・・その・・・」
「ん？」
「・・・実は、家出してきまして・・・」
「はぁ？家出？」

話を聞いたところ、やっぱりシエルちゃんは田舎の出らしく、自由に生活させてくれんかった両親に耐えられず家出したらしい。
よほど言い合ったのか、もう戻ってくるなと言われたほどやったらしい。

「そないな喧嘩したんか。ごっついのう。」
「アハハ・・・何か、すみません・・・。」

伏し目がちになってしもうた・・・謝ることあらへんのにな。

「よっしゃ！シエルちゃん、今日はワシと遊ぼうや！」
「ふぇ？」
「ここは神室町やで？遊んでなんぼの場所や。楽しまな損やで！ほら、メシ食うたら行くで！」
「は・・・はい・・・！」