「今度こそちゃんと付き合えよ？あん時ろくに相手されなくて寂しかったんだぜ？」
「ふん。アンタにそないな感情があったんかいな。」
「うわぁ・・・傷つくねぇ・・・。」

佐川はんの差し出したおでんに手をつけ、酒を飲む。
考えられへんな。あん時の事を思えば。
お互い会話がなく、ただ飲んどった。
・・・悪い心地はせんな。地獄の入り口いうんは分かる気ぃするわ。こないなとこで佐川はんと会うてしまうしな。

「・・・よぉ真島ちゃん。」

そないな事考えとると、佐川はんが口を開いた。
横目で見ると、相変わらずの憎たらしい笑顔で俺を見る。

「・・・女はもういいのか？」
「女？」
「お前が心底惚れてる女だよ。ったく・・・盲目の女との事がケリついたからって、早速惚れちまうとはな。」
「・・・何で知ってんねや。」
「そりゃ俺はお前を監視してたんだぜ？」

・・・地獄でも俺を見とるってどないやねん。

「今でもお前さんの手を握って待ってるぜ。」

その瞬間、目の前の景色が変わった。
目の前に、俺がおる。これって幽体離脱っちゅうやつか？

「自分ばっか見てねぇで、隣見な。」

言われた通り寝ているワシの隣を見る。
そこには、俺の右手を握って寝ている女がおった。

「・・・シエルちゃん・・・。」

俺の事を、待っとるんか？傍にいてくれるんか？

「言ってたよな？誰よりも楽しく、誰よりも狂った生き方してやるってな。・・・お前の生き方、もっと見せてくれよ。俺みたいに執着するって言ってたよな？真島吾朗の人生をよ。・・・一人の女を最後まで愛してみろ。今度は逃げずにな。」

一人の女を・・・愛する・・・

「こっちに来るのはまだ早いぜ。俺はここから、陰ながら応援してるぜ。」

佐川はん・・・。
声をかけようとしたが、言葉が出ない。
そうか・・・もう、起きなあかんな。

「じゃあ・・・またな。真島ちゃん。」