BOJ-SSS6【"Period", those connecting golden chains】
「貴方、調停約定反対派の人間ですね」
「………」
調停約定反対派。それは今回の戦争で勝敗が決まらなかった事を不服とする団体だった。つまりは、戦争を蒸し返して白黒つけてやろうと言う過激派の集まりである。普段は日常に溶け込み、その片鱗すら見せない。しかし、それは市民よりも軍事関係者の方が圧倒的に多いのだ。必死に戦った挙句、それをイーブンで済ませてしまうなど以ての外。そんな彼等は戦火が巻き起こるのを虎視眈々と狙っている。
まさか第三部隊長がその派閥の人間とは思わなかったが。おかしいとは思っていたのだ。
砦からの電信によればロボの出現時間は日によってバラバラ。
手傷は負わされても必ず死人は出ない事実。
停戦を迎えて、物資の支給が行き届いているにも関わらず質素な食事。
全てこの持ち回りの間にロボを討伐すべく削られていた。
何が用意されているかは知らないが、己の知らないところでこのような勝手。
サーの内心はめらめらと燃えていた。
体を内側から焦がすような怒り。サーは知っているのだ。その過激派が振りかざしている『勝利』の裏側で、誰がどんな辛い思いをしているのか。
「はぁ…厄介な者を見落としていましたね」
無言のままの第三部隊長。そして次いで矢を番え直す八人の師団員。その目には戸惑いの色は一切無い。彼等も調停約定反対派の団員と見て間違いないだろう。
サーは小さい溜息を吐いてから、射抜くように第三部隊長に視線を向けた。僅かにたじろぐ第三部隊長。サーはそのまま背後にいるロボに声をかけた。
「ロボ。一つお聞きしたいのですが」
「なんだ、俺のことか?」
「なぜ貴方は毎日毎日この砦を訪れるのですか?」
「そんなもん決まってるだろう」
ロボは鼻を鳴らすと、サー同様第三部隊長を睨み付けた。
「うちの部族の女衆を解放するためよ」
成程。サーは内心得心した。
人質を取って、毎日『悪党』に指定したこの男がやって来るよう仕向けていたわけか。
「反吐が出ますね。貴方に部隊長を名乗る資格はもう、ありません」
サーは静かだが、よく通る声でそう吐き捨てた。