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BOJ-SSS6【"Period", those connecting golden chains】



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「ロボだ!ロボが現れたぞ!」

 見張りの師団員が大声で食堂に怒鳴り込んできたのは、夕刻を迎えた食事時だった。野菜とベーコンのスープ、ライ麦のパン、保存食の燻製肉をグリルしたもの、少量のサラダと添えられた六つ切りのりんご。停戦後の前線にしては質素な食事だ。声が響き渡ったのはソルジャーがスープを、サーがちぎったパンを口に運ぼうとした瞬間だった。
 二人共、ほぼ同時に立ち上がる。周囲の師団員は食事時に現れたロボに動揺を隠せないらしい。ざわざわとざわめきだけが伝播する。
 サーとソルジャーは無表情のまま並べられたテーブルを縫い、食堂に飛び込んだ師団員の元へ走る。

「間違いなく、ロボですか?」
「ま、間違いありません!あの白い狼、灰銀の髪、間違いなくロボです!」
「行きましょう、ソルジャー=サラマンデ。第三隊長には守備を固めるよう、私からの指示だと伝えなさい」
「りょ、了解しました!」

 短い指示を残し二人は食堂のある宿舎から、前線の砦へと駆ける。石階段を駆け上り、息も乱さず見張りに残された師団員の隣に立つ。途中ソルジャーが離れたが、武器を取りに行くためだ。少し遅れて自分の薙刀と適当な銘の刀を手に、遠方を視認するサーの背後に現れる。

「そ、双眼鏡を…」
「必要ありません。見えます」

 サーの視力は相当なものだ。この距離なら双眼鏡で視認する物くらい裸眼で見える。
 その鋭い視線の先には、灰銀の髪をうなじで一括りにした男が、式型であろう白狼の背に腰掛け、ゆっくりとこちらに向かってくる様子だった。片手には確かに酒瓶らしきもの。得物は…見て取れない。

「ロボの武器はなんですか?」
「こ、昆です!」
「なるほど、あの腰から下げている三本がそうですか」

 昆の使い手。即ち棒切れと言っても過言ではない。だが、その道を極めれば恐ろしく強い。サーは第三隊長の言葉を思い出していた。

『死者は一人も出ていません』。

 己より相当に背の高いソルジャー。それと比例するほどの大男に見える姿は、のんびりとこちらへ向かって闊歩してくる。式型もサーならば三人は跨がれる大きな狼。あれが術式で構成されていると言うのだから、そちらの腕にも気を配らねばならない。
 サーはこの世界の理から外れている。即ち、術式が使えないのだ。一見不利にも見えるが、『慄』と言う種族はそれすら小細工と捩じ伏せる。
 ソルジャーの取って来た刀を受け取ると、鯉口を切って刃に目を走らせる。欠けは無し、問題はなさそうだ。サーに扱えない武器は少ない。いや、無いとも言える。接近戦故に諸刃剣よりも殺傷能力の高いものを選んだのだろう。

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