BOJ-SSS6【"Period", those connecting golden chains】
当時二人は併せて『二強』と呼ばれていた。サーは前述した通りだが、一見冷静沈着な相棒ソルジャー。彼は大地を焼き尽くす炎の蜥蜴を従え、極東の長柄を操る武人。燻るどころか激しい戦闘意欲を持ち、常にサーと競り合い、背を預けあっていた。故に二人の奮戦は激しく、いつの頃からかジェノバの『二強』として恐れられていた。
存外と頭の回る狼は、ようやく二人を燻り出すのに成功したわけだ。この二人相手に勝てる自信を持つその男は、余程の力量なのか、それとも単なる馬鹿なのか。その答えが前者であることは、若い隊長の説明で察しがついたが。
強者こそ強者を求める。その根底の概念には、サーも覚えがあった。
「今日はもう、ロボの襲撃はありましたか?」
「いえ。まだ現れておりません」
「解りました。…本日も襲撃があるようならば、我々が出撃します。王宮の警備は第一部隊が担当しています、三日程度なら滞在は可能。その間、ロボの襲撃に備えます」
そしてその咢を喰い千切る。
これ以上、ジェノバへの壁は削らせない。例え数ミリであろうとだ。
サーはそう言ってソルジャーと顔を見合わせた。第七部隊は彼の不在の間、古代の樹海の警備に当たる。特に昨今の野生動物からの家畜被害もジェノバ国内の問題のひとつだ。彼の隊なら駆逐も捗るだろう。
あちらに居てもこちらに居ても狼退治か。そんな様な色が目に浮かんでいる。サーはようやく破顔して、その肩を叩いた。
「こちらの狼は食いでがありそうですよ」
「…………」
第三隊長は二人のやりとりを見てもうひとつ、付け足す。
「ロボの襲撃は、統計的に夕方が多いです。とにかくあの呑んだくれを…早急に退治してください」
その言葉が、喉に引っかかった小骨のような違和感を残した。
気のせいだろうと思うにしては、その違和感は大きかった。サーは目を細め、ソルジャーと並んで前線基地の司令室から姿を消した。