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BOJ-SSS6【"Period", those connecting golden chains】



「厄災の芽は『ロボ』だけですか?」
「ええ。奴が一人で暴れている状態です。酔っ払いながら」
「酔っ払う?」
「酒瓶片手、得物片手、式型を従えてふらっと現れ暴れるだけ暴れて消え去るんです」

 なんだその厄介極まりない酔っ払いは。それはサーの耳に届いていない情報だった。隊長の話では最近はほぼ毎日だと言う。「『二強』を出せ」、呂律の回らない舌でそう要求していたことも初めて知った。サーは付き従ってきたソルジャーを見上げ、言った。

「我々の友を傷付けたのは私達をおびき出したかったからのようです」

 確かに。そう言いたげにソルジャーは小さく頷いた。連絡が無かったことは大事だが、混乱をきたすなか酔っ払いの戯言として片付けられたのだろう。
 ここまで負傷兵を増やし、情報伝達もまともに送れない状態に陥るまで気付きもしないとは。サーは大きなため息をついて部隊長を叱責した。まだ若い隊長故、ミスは仕方無いがもう少し前線を束ねると言う自覚を持ってくれと。彼は真面目な顔で「申し訳ありません」と謝罪し、本当に悔いた様子だった。
 それ以上は叱っても仕方があるまい。調停の後、平和になりつつあるこの砦を部隊に役回りさせることを決定したのはサー自身だ。『ロボ』などと言うイレギュラー要素の加味など、彼の頭にすら無かった。

「ロボの襲撃はどの程度の頻度で?」
「最近ではほぼ毎日です…。砦の外壁も大分削られてしまいましたし、負傷兵もご覧の通り大多数。私の不徳と致すところです。しかし」
「しかし?」
「死者は一人も出ておりません。奴の力を持ってすれば恐らくGHOSTの隊長クラスでさえ苦戦するところ…。かく言う私も何度か応戦に出ましたが防戦一方でした。首を掻かれかけたこともありましたが、奴は私も、誰も殺さなかった…あの
酔っ払い、存外に頭が回るのかも知れません」

 先に述べた通り第三部隊長はまだ若い。だがその実力は隊長を担うに申し分のない力量だ。そしてまた冷静に戻ればその観察眼は目を見張るものがある。
 ひとしきり叱責を受けた後再びロボの話へ戻ると、彼は自身の分析をそう語った。
 確かに頭の回らぬ狼が人を喰らわぬはずがない。ロボの独断で死者が出れば停戦を迎えた煉がその調印を一方的に破棄したことになる。爛族は煉とジェノバの国境最前線を担う戦闘部族、それが動いたとなれば戦争では出撃を控えていたGHOSTの第一部隊…即ちサー率いる世界最強と謳われる部隊が撃って出る。
 いかに煉が超大国の面積を誇れど、GHOSTが全面戦争を叩きつければそんなものは無意味に過ぎない。特に『二強』。サーとソルジャーが最前線に出れば王城が落ちるのは数日のことであろう。

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