BOJ-SSS6【"Period", those connecting golden chains】
正式には第三部隊長の鼻先を掠め、この頃まだ制服の胸に飾られていた部隊長の証である宝石を叩き切っただけであった。紫と深い蒼の入り混じる法皇府と皇家の色。それは見事に両断された。
サーが目の前に現れた瞬間、終わりを悟った部隊長の目に火が灯る。それは部隊長である証とともに、彼の所属する法皇近衛騎士であるプライドをも破壊された証拠。
むしろ殺されたほうがましな程の屈辱。
「騎士王…貴方は…!」
「かかってくるならかかって来なさい。貴方ごとき弱小が理想をほざく権利などないと、叩き込んで差し上げます」
第三部隊長の手が腰に差されたサーベルの柄を掴んだ。一気に引き抜くと目の前に着地したサー目掛けて、電光石火で薙ぎ払う。金属同士のぶつかる音がして、サーが斜に構えた刀にいとも簡単に受け止められる。
サーベルをいなしたサーは弾き返し様、部隊長の懐に入り、刀の柄尻で鳩尾を強打する。
「か、ッは!」
一瞬息を詰めた部隊長だったが、すぐ様またサーベルを構え、サーから距離をとる。サーはすっくと立ち上がると、その刃の切っ先を部隊長に突きつける。
さすが『慄』の一撃、骨がイカなかっただけ幸いかもしれない。滲む冷や汗のが滴る視界の端に、弓から剣に武器を持ち替える部下達の姿が見えた。
「多勢に無勢ですよ…」
「多勢?たかが羽虫が少々、何をほざいているのですか?」
言葉が終わるのを待つ前に、一人がサーへと斬りかかった。それは当然のごとくあしらわれ、二度の剣戟のあと、サーの放った蹴りが横腹を殴打して沈黙する。二人目、三人目、大して広くはない砦の頂でサーは確実に一人一人撃墜していく。
それはまるで、本当に羽虫と称した連中を踏み潰す勢いで。
気付けばもう、憎しみすら瞳に浮かべた部隊長が残るのみだった。