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BOJ-SSS4【Gills's One day】




 テーブルに並んだのは少量の白米とわかめと豆腐の味噌汁、焼き鮭とほうれん草のおひたし。篁の椅子の前には納豆の小鉢も置かれている。あの納豆と言うのは苦手だ。これはいわゆる倭国の朝ごはんと言うやつらしい。篁の故郷の典型的な朝食だと記憶している。今の国とギルスに合わせて洋食の日もあれば、こうして倭の朝食の日もある。ギルスはほうれん草や小松菜など青物が好きだ。早くほうれん草に箸を伸ばしたいが髪が汚れるのは嫌だ。テーブルの下で足をぶらぶらさせながら、櫛を取りに行った篁を待つ。

「お、好物があるのに我慢できたな」
「我慢しました、褒めてください」
「ああ、いい子だ。ほら、梳るから前を向け」
「くしけずる?」
「髪を梳かすことだ。勉強になったな」
「明日には忘れていそうです。そんなこと」
「教え甲斐がないな、あんたも」

 子供をあやす様に褒められたギルスは背後の篁にやっていた体を前に戻す。なにか出来たら褒めてもらう。ギルスの脳の稼働域は半分以上司法に食われている。故に精神構造がやや子供っぽいままで、話してみるとなかなかに見た目にそぐわない。彼の髪がさらさらなのも毎朝こうして篁に丁寧に梳いて貰っているおかげだ。腰まで届く柔らかい橙の髪を梳き終えると、篁は手首に嵌めてきた黒い輪ゴムでそれを一括りにしてやった。うなじまですっきり、これでご飯が食べられる。篁が席につくのを待って、二人は手を合わせた。

「いただきます」

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