二ノ巻【戦慄! 桶狭間の遭遇】
名前変換
Your name?*.名前を入れると、登場人物に自動変換します。
より楽しく読むために名前を記入して下さい。
※愛称(偽名)ですが、ない場合は同じ名前を入れて下さい。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あと一手で政宗様が今川の首を取るって時に、真田幸村が待ったをかけてきやがった
つまり甲斐の虎は、小田原へ自ら侵攻するってことだろう
今まで政宗様をあそこまで楽しませた武将は、あの男が初めてだろうな
負けるだなんて思っちゃいねぇ。俺の役目は右目として、その背中を守ること
政宗様を邪魔するやつぁ、一匹たりとも通さねぇ。
今川のやつらも、置いてけぼりを食らって戦意喪失する者が多くなってきた
真田が率いてきた武田のやつらも、動く気配はない……そう踏んでいたんだが
そういえば、さっきから武田の中にいたはずの“蒼”が見えねぇ
遠すぎて正体がなんだか分からなかったが、赤が多い中であんな目立つ色、一体どこに……
「なんだテメェ! 邪魔するならぶっ殺すぞ!」
左方からの怒号は、聞き慣れたうちのやつらか
そちらをみれば、探していた蒼がいた。だが、さっき見たのとは違う
いつの間に用意したのか、蒼い番傘を差してやがる
「申し訳ありませんが、そこをどいてくださいな」
「あァ!? 聞こえてねーのか――」
顔は見えねぇが、女だってことはここからでも分かる
武器を構えるでもなく、あいつらのつっかかりに笑みを浮かべて……笑み、だと?
「風波静林……風柱!」
右手に持った扇を掲げた瞬間、囲んでたやつらが吹っ飛んだ
柱みてぇな風が、足元へ生えたからだろう
同時に傘も下げたおかげで、横からだが顔が見える
政宗様が放つ雷よりも濃い青に、陽の当たる部分は色が違ぇ……なんなんだ、あの髪は
いや、そんなことは重要じゃねぇ。あの女は伊達に喧嘩を売ったんだ
政宗様の手を煩わせるまでもなく、俺がたたっ斬ってやる
「テメェら、少しの間ここを任せるぜ」
「へい! 片倉様!」
左馬助達にこの場を任せ、また歩き出した奴を追いかける
走りもせずのそのそ歩きやがって……舐めてんのか?
とにかく進行を止めるには、あいつの前を行った方が早い
「待ちな! このままここを抜けられると思うなよ……」
跳躍して女の前に滑り出る
刀は抜かず、柄に手をかけたまま睨みつけた
「んっふふ……やはり貴方が来ましたか」
俺の殺気に大体のヤツは尻込みするが、コイツの笑みは濃くなるばかり
それに、俺が出てくると気付いていただと?
「何?……誰だ、テメェは」
「こうやって名乗るのは、貴方が初めてになります」
顎に当てた扇子は動かさず、女は番傘を掲げる
そして風に乗せるよう手を離せば、開いたまま飛んでいっちまった
あっちは、武田の兵がいる方か……さっきといい、コイツは風を操れるみてぇだな
「わたくしは武田軍大将補佐、武田林音と申します。以後、お見知り置きを」
胸に手を当て俺に一礼する、武田林音と名乗った女
礼儀はなってるようだが、どうもいけ好かねぇな……
「武田だと……そうか、テメェが甲斐の双子姫の片割れか」
「あら、その名を知っているなんて……こんな小さい噂にも、精通しているのですね」
「甲斐の虎には、お転婆で手の付けられない姫が二人もいるって噂だったなぁ……確かに、我儘そうな姫さんだ」
「……言ってくれますねぇ。竜の右目、片倉小十郎」
雲行きが怪しくなるのと並行するように、ヤツの纏う空気も濁ってきた
俺の名前も知っているたぁ、最初から狙いは俺だったってことか
「さて、そう時間もかけていられませんし……御相手いただけますか?」
……いいだろう。敢えてその狙いに乗ってやる
「女だろうと容赦はしねぇ。後悔は地獄に堕ちてからしな」
「あら、わたくし地獄に堕ちる気など……更々ありませんので」
扇を片付け、両手に刀を携える甲斐の姫
こちらも鞘から抜き、下から斬り上げられる構えを取った
どんな相手であっても、政宗様を邪魔する者は俺が潰す。
*