#sieben【新たな人生:後編】
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一番近い窓を開けると、カーテンが風で揺らめいた。
ちょうど雲が晴れて、月光が部屋へ差し込む。
お互いの顔が見えるくらい明るくなった頃、クラウスから切り出した。
「身体の方は、もう良いのですか?」
「えぇ、大丈夫よ。夜明けまで安静にしてれば、全快って所かしらね」
眼鏡を返し、アルトはベッドの外へ足を出して座る。
掛け直した彼を見て少し残念に思いながらも、笑顔を絶やさない。
「そうですか……凄まじい回復力ですね」
「まぁ、私は人間じゃあないからね」
彼としては、率直に述べただけ。
悪気など一切無く、それを彼女も分かっている。
ただ、一時期記憶を失っていた時、ほんの少しだけ自分が人間だったらいいなと望んだことがあった。
無意識に覚えている感覚が表に出たのか、一瞬笑みに哀しさを纏う。
「っ、申し訳ない! 言葉に気をつけず……」
「気にしないで。事実なのだし、もう慣れてるわ」
微かな変化と自分の表現に気付いたクラウスは、すぐ弁明した。
彼の配慮を嬉しく思いながら、手を振りニコリと笑う。
「それで?」
「はい?」
「貴方がここにいるのは、私に話があるからでしょう? 今で構わないのなら聞くわ」
空気を変えるためでもあったが、確信を持って話を切り出す。
少々黙り込んだのち、意を決してこちらを見る。
眼鏡から覗く緑の瞳へ、自分の姿が映るほどに。
「……Ms.メリオローデ。この度は我が社員レオナルド、そして街の住人を助けて頂いて、ありがとうございました」
膝に手を置き、深々と頭を下げる。
ジャパニーズ土下座ではないものの、誠意がしっかり伝わってきた。
「あらー、そんなに畏まらなくてもいいわよ。あの男は私を狙って暴れたんだし、反動でビルのガラスも割っちゃったし……そういえば、あれって賠償金支払わないといけないの?」
「ある程度は……」
「あらそう。貯金足りるかしらね」
すっかりお馴染み、顎に指当て思案。
普段から働いている訳でもないし、使うのは何か壊した時とかなので、大富豪ではない。
どれほどの額になるかは分からないが、冷静な反応。
「……その件ですが」
「ん?」
待ってましたと言わんばかりに、話を区切ったボス。
首をかたむけて、彼を見る。
「単刀直入に申し上げます。ライブラで働きませんか?」
これでも平静を保っていたはずのアルト。
しかし予想外過ぎたのか、目を見開き瞬いた。
誤解だったとはいえ、仲間に手を出したのは事実なのに。
「……フッ! ほんとに単刀直入ね……理由を聞かせてもらっても?」
本当にこの人は、思惑の斜め上をいく。
笑顔を絶やさずに、真意を大人しく聞くことにした。
「まず賠償金の件ですが、ライブラに就職して頂ければ、全額免除されます。我々には、その権限がある」
「ふんふん」
「次に貴方の能力、強さ、全てに置いて非常に強力だ。是非その力を、我々と共に奮って頂きたい」
「あらまぁ」
「最後に……いずれ貴方が、元の世界に帰る手伝いが出来るかもしれません」
目前のクラウスを、まっすぐに見る。
好条件を並べて、彼が思う“最高の望み”に手が届くかもしれないものを出したのだ。
「此処はヘルサレムズ・ロット。何があっても可笑しくないと言われています。異界と現世が交わる場所で、貴方の世界へ繋がる道が見つかるかもしれません」
彼女は空から降ってきた。
という事実は、本人しか知らないし何故なのかどうしてなのかも、アルシュネムトすら分からない。
つまり、帰路が絶たれたわけではないのだ。可能性はゼロじゃない。
「……以上です。何か御質問は?」
「特に無いわ、ありがとう」
ニコリと微笑み、軽く手を振る。
再び顎指にて上を向き、少し傾げた。
「そうねぇ、私的には美味しい話なのよね……でも、最後のは要らないわ」
二つ返事ではないだろうと分かっていた。
だが、最高の望みは必要無いという。今度はリーダーが驚く番。
「元の世界に帰りたいとは、今の所思ってないもの」
「どうして、ですか?」
「だって帰れたとしても、私の居場所は無いだろうし……もうあの世界に、会いたい人は居ないから」
左手首に結ばれた紐に触れて、包み込むアルト。
自然と目で追っていたため、見覚えがあると思ったクラウス。
確か血界の眷属を滅殺する前、二の腕に括りつけていたのを自分で元に戻したのだろう。
よほど大切なものなのかと、沈黙の中、理解する。
「それに」
すぐ俯きから顔を上げる彼女は、口角が上がっていた。
さきほどの切ない声調は嘘かのように。
「前にも言ったでしょう? この街に凄く興味が湧いたって。まだ一ヶ月程度だけれど、毎日新しい発見で楽しいわ……これなら、秘密結社ももっと楽しそうね」
一瞬聴き逃しそうになったが、確かに彼女は零した。秘密結社も楽しそう、と。
この街で頑なに極秘なのは、ライブラくらいだから。
「それは、つまり……」
「言っておくけど、私今までギャングにしか務めたことないのよね。それでも大丈夫かしら?」
「えぇ。問題ありません」
イタリアのあるギャングで、抗争が落ち着くまで手を貸したことがあった。
仕事内容は生死に関わることばかりだったが。
レオも入れたように、未経験者でも歓迎のようだ。
「フフッ、そう……ならこれで、面接完了かしらね。結果を聞かせてくださる?」
「……はい。アルシュネムト・メリオローデ殿、採用です」
流れる動作で手を差し伸べ、握り、握手をした二人。
契約書などは後日として、彼女はライブラへの仲間入りを果たしたのだ。
「改めて、クラウス・V・ラインヘルツです。これからよろしく」
「アルシュネムト・メリオローデよ。リーダーさん……じゃあ何だか他人行儀ね。クラウスと呼んでも?」
「えぇ、構いませんよ」
「フフッ、じゃあ貴方も敬語はやめてね。あと、私のことはアルトで良いわ」
「分かりま、いえ……了解した、アルト」
クスクスと微笑む空色の髪が、風で靡く。
向かいの男も、引き結んだ口元は少し緩んでいた。
様々な事件が一旦収束した街も、もうすぐ夜明けを迎える。
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