code.16【過去は過去 今は今】
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「修くん、遊真くん」
話は終わったらしく、二人で階段を降りてくる。
幾分か、遊真の表情は明るく見えた。相変わらずの三の目だが。
「オサムに誘われたから、いっしょにやるよ、ヒマだし。チカにはまだ、自転車の乗り方教えてもらわなきゃいけないしな」
「ありがとう!」
つまり、彼はもうしばらく玄界に滞在することを決めたようだ。
自分は身の上を話しただけだが、結果オーライ。
「わるいな、さっきは帰るって言ったのに」
「謝る必要ないよ、ゆーま。これで思う存分、ミルクティー作ってやれるし」
「ふむ、それはたのしみだ」
どういう形であれ、お別れではなくなった。
過去を知り合った仲なのもあり、先程までとまた違う信頼。
そして彼は、部隊の隊長に修を指名した。
「ほぉ、おさむがリーダーか。面白そうだな」
「だろ?」
「面白いとかそういう問題じゃなくて!」
似合ってるといえば似合ってる、メガネだし。
因みに個人的な偏見です。
友人達の会話に焦る彼だが、千佳も加えた満場一致の賛成に断るという選択肢は無かったようだ。
なんだかんだで、再度林道の所へ行くのが決まった時。
「そうだ、鮎」
「なんだ?」
「鮎は……ボーダーに、入るのか?」
いずれ聞かれるとは覚悟していた。
タイミングが今になっただけのこと。
答えを待つ三雲と、同じく彼女を見る親友。
もし自分が、ネアでもなんでも無ければ喜んで力を貸していただろう。
「……悪いが、すぐに答えは出せない。保留ってことにしといてくれ」
でもそう簡単に頷けないのだ、立場上。
肯定にも否定にもならない言葉を、少しの間の後、紡ぎ出す。
「そうか……いや、こっちこそいきなり聞いて悪い」
「お前ら謝り過ぎ。ま、その代わりといっちゃあなんだが……私に出来る範囲で、色々サポートさせてもらうよ」
「サポート?」
「あぁ、うさみさん達に頼んでみるから。それより、早くりんどうさんとこ行け行け」
「あ、あぁ……おやすみ、鮎」
『おやすみ』
「おやすみ、また明日」
若干強引に、しっしと追いやる。
迅の計らいで、書類が用意されているのを察していたので。
最後は三人に手を振り、下階へ降りていくのを見届けた。
曲がり角で視界から外れた後、掌から握り拳に。
ふと上を見あげ、ひとり階段を上る。
もう一度、屋上のドアを開けて、誰も居ない縁へ座り込んだ。
「……なぁ、シルザード」
膝を抱え、頭を埋める。表情が見えない中、相棒を呼んだ。
「私は……とんだ嘘つきだな……」
本当は嘘なんて吐きたくなかった。
同じ隊員だと、一緒に戦えると言いたかった。
でも、自分は同じ世界の人間じゃない。人間でもないかもしれない。
そうするしかなかったとはいえ、大切に思うからこそ、今までで一番辛いと感じた。
ふよふよと傍へ寄り添うシルザード。
顔は上げず、もちもちと触る。
ありがとうと、言葉にする代わりに。
「ごめんな、ちか、おさむ……いつかちゃんと話すから」
風で髪が靡く中、やっと上を見る。
種族として関わり深い月に誓うよう、独り零した。
十三夜月と分身のみが知る。
――こうして、二人の昔話は幕を閉じた。
次の幕開けは、一日お手伝いさん。
*