code.16【過去は過去 今は今】
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その世界には、六つの月が浮かんでいてな
緑、赤、紫、青、黄、銀の六色
それぞれの月がある大陸には、それぞれの属性の恩恵を受けている
緑は生命を司り、広大な自然に恵まれている
赤は炎を司り、果てなく続く砂漠と年中続く熱帯気候
紫は氷を司り、冷たい氷と溶けないくらいの寒さ
青は風と水を司り、溢れるほどの水源で潤う辺境
黄は雷を司り、晴れない黒雲からの電気を利用した大都市
銀は無を司り、他の大陸と比べて平穏な土地
こっちの月は銀に近いかな。
当然住んでいる人間も違う。人間というより、文明が
だから、月の色を冠して最初に言った銀の民も、銀の文明の民と呼ばれていたんだ
「……呼ばれていた?」
「あぁなにせ、かなり前の話だからな。今を生きる人々は知らない方が多い」
「ふーん」
存在を忘れられても、末裔は生きている
若い世代では三人。少し年の離れた姉妹と、ひとりの青年
後は、長老と呼ばれているじい様が数人
その中の姉は、生まれてから成人しても、故郷を一歩も出たことがなかった
外の世界を知らなかったんだ
故郷の守護を任されていたってのもあるが
でもある日、外から人間が来た
諸事情で下りて……いや、離れていた妹が連れて来たんだ
彼女は警戒する反面、興味を抱いていた
妹の人選も悪くなく、良い奴らばかりでな
次第に彼女は、外の世界へ行きたいと考えるようになった
……そしてその願いは、最悪の形で叶えられた
「さいあく、って……」
「……裏切られたんだ……同胞に。長老の死をもって、な」
若い年代の一人、姉と歳の近い男も外の世界に触れていた
彼自身が悪かったのか、出会った人物が悪かったのか……今でも分からない
ひとつ確かなのは、もう元には戻れないということ
目的は、世界征服の為
他の長老達の許可もあり、姉はその男を倒すために外の世界へ出たんだ
ちょっと長いから割愛するが、最終的にそいつの野望を阻止出来た
戦いの中で故郷は失くなってしまい、帰る場所もない
ならば一緒に旅をしないか。妹が連れて来た人間が誘ってくれた
だけど彼女は断った。一緒が嫌とかそういう理由じゃなくてな
「じゃあ、なんで?」
「うーん……もしかしたら、悔しかったのかもな」
「ふむ?」
妹達は故郷へ来る前、その世界を一周するくらい、長い長い旅をしていたんだ
全ての月の元にある文明も見てきたという
自分だって見てみたいが、まだ何も知らない奴を連れて旅してもらうのも申し訳ないとか
妹に先越されたのもあって、素直に頷けなかったんだろうな
……面倒な性格なんだよ。
「負けずぎらいってことか」
「うん、まぁそんな感じ」
「(確かにそういうとこあるよな……)」
ゴホン……で、話を戻すが、結局、ひとりで旅をし始めた彼女
世界を充分見てから合流すると、約束してな
ある日、何気なく通った場所は、銀の月の大陸
自分達の文明が昔栄えた地であり、さっき話に出した、裏切り者の同胞を討った地でもある
その場所は誰も寄せつけないとでもいうように、酷く気候が荒くてな
しかし素通りするという考えはなく、惹かれるままに近付いた
そして彼女は……“落ちた”んだ。
「……おちた?」
「そう、落ちた」
「穴でもあったの?」
「あぁ、そう……真っ暗で、底も見えなくて……考えるのもやめるくらい、深い穴だったな」
落ち続ける中、彼女は恐怖よりも、拒否よりも、望みがひとつ叶った気分だった
かつての同胞達と、同じ場所で死ねるのだと。
「最初は、顔に冷たい何かが落ちる感覚だった」
不思議に思いながら瞼を上げると、一面の灰色
正確には雨雲、雨も降ってる
「今ではそれが、雨だったんだと知っている。でも当時は知らなかったんだ」
……何故って? 彼女の故郷に、雨が降ったことは無かったからだ
「雨が……降らない国があるせかい?」
「ゆーまはそんな世界を知ってるか?」
「いや、見たことも聞いたこともない。レプリカは?」
「私も記憶にないな」
「そうか……やっぱりそうだよな」
その故郷で雨が無くとも、育むべき自然も大地も、何も無いからな
何せそこには、雲がないんだから
「……ねぇ、アユ。そのせかいって、もしかして……」
最初から、嘘はひとつも吐いてない
その時点で気付いてたんだろう、ゆーまも馬鹿じゃないから
私は用意していた台詞を、少々勿体ぶってから放つ。
「……あぁ、その世界の名は、空郷界。私の故郷があった……この玄界とは、別の世界だ」
*