code.15【Welcome to Tamakoma!:後編】
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屋上とは別方向の、支部長室へ続く廊下。
お子様は元より、宇佐美達もリビングなので誰もいない。
「おまえのことは、迅と三雲くんから聞いてる。ウチはおまえを捕まえる気はないよ」
扉が目と鼻の先になった地点、ボスの渋い声が聞こえた。
入室するなんてことはせず、近くの壁にもたれ掛かる。
少々聞こえにくいので、シルザードにコップへ変化してもらい、スピーカー代わりに。
「おまえ、親父さんの知り合いに会いに来たんだろ? その相手の名前はわかるか?」
「……モガミソウイチ。親父が言ってた知り合いの名前は、モガミソウイチだよ」
最上宗一。
城戸や遊真の父親と同じ、ボーダー創設メンバー。
そして、迅悠一の師匠だった。
「(やっぱり、か……)」
遠慮なく大きな溜息を吐き、相棒を呼び体勢を整え、来た道を戻る。
これ以上聞くのも野暮だから。
建前通り、適当にうろうろしようと歩き始める。
「(ゆーまは、きっと……――)」
父親が亡くなり、黒トリガーを持っている時点で、察しはついていた。
あれは、空閑有吾なのだと。
自分の大切な人、ましてや肉親が死んで、生き返らせたいと思わないわけが無い。
同じことを望んだ者を見たから、余計に。
気付けば三階への階段が目の前にあった。
とりあえず上がると、中間踊り場にある窓から差し込む光に自然と惹かれる。
「(あ、月……今日は青く見えるな)」
パッと見、十三夜月くらいの欠けた円が、暗闇を照らす。
雲から顔を出し、一際目立つ。
「(月を見てると、いつも思い出す。もう二度と会えない、会えるわけがない……アイツの顔を……――)」
ひたりと窓辺に片手を付き、ただただ見つめた。
脳裏に浮かぶのは、自分と同じ髪と瞳を持つ、青年の姿。
――カリューネア、おまえは――
直では視れなかった、距離の関係で。
それでもお互い、視線は外さない。
男は酷く、こちらを睨んでいたが。
「……ラミレス」
自らの判断に後悔はない。選んだ結果なのだから。
今更、ふと自覚する。思えばあれが、決別だったな、と。
「アユちゃん」
今の名を呼ばれ、我に返る。
「……じんか」
踊り場へ視線を向けると、支部長室に居たはずの青年が見上げていた。
話は終わったのだろうか、心の隅で思考する。
いつもなら何かしら、言葉を続けるだろう。
だが彼は少女の面持ちを見た瞬間、いつになく愕然とする。
口を開かず、同意も得ず、階段を上った。
中間踊り場のひとつ手前、無意識に指先を、彼女の頬に。
「……ん、じん?」
右手の親指が、左の目尻をなぞる。
瞼は反射で閉じられてから、開いていつもより低い位置の迅を見つめる。
「あ……なんでもない。ごめん突然」
「いや、構わないが……」
名を呼ばれて、こちらも我に返る。
悪気があったわけでも無さそうだし、問い詰めることはしない。
「(アユちゃんが……泣いてる様に見えた。濡れてなかったけど、気のせい?)」
「(どうしたんだ? じんの奴……)」
幻覚だったのか、見間違いだったのか、これ以上聞けなかった。
本人にも覚えはない。
ただひとつ言えるのは、人の心を表現する方法が無限にあるのだと。
それが人間という生き物なのだと、思う。
*