code.14【Welcome to Tamakoma!:前編】
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「さぁ着いた。ここが我らがボーダー、玉狛支部だ」
ボーダー本部から南西方面、川を挟むようにしてある、四角っぽい建造物。
玉狛独特のエンブレムが、入口の上に目立つ。
「川の中に建物が……」
「ここは元々は、川の水質やら何やらを調査する施設で、使わなくなったのを買い取って基地を建てたらしい。いいだろ〜」
若干ドヤ顔する迅に、呆れてため息。
確かに他に類を見ない方だと思ってるが。
「……おっ、隊員は出払ってるっぽいけど、何人かは基地にいるかな」
「(隊員、きりえ達は居ないのか……そういや明後日来るって言ってたし、とりまるはバイトしてたしな)」
スマホで他隊員の状況が分かるらしく、戦闘員の三人は今居ないとのこと。
レイジは不明だが、他二人のことは納得した。
「さ、こっちだ」
「は、はい!」
ひとり悩み込む面持ちの修は、緊張しつつもまだ見ぬ強者(仮)に期待少々。
その様子を横目で追いつつ、また溜息。
「……おさむ」
「鮎」
前を通り過ぎる際、肩を軽く叩く。
「ちったぁ肩の力抜け。バケモンに会いに行くわけでもないんだから」
「あ、あぁ……」
少しでも気が紛れれば、彼のタメにもなるだろう。
相手はちゃんと人間、いやちょっとガタイが良いのもいるが。
とにかく、よく知る仲であるからこそ怖くはないと安心してほしかったのだ。
「ただいま〜〜」
残念ながら、彼等には他の印象を与えてしまったようだが。
両開き戸押してすぐ、雑食の動物、カピバラに跨るお子様。
一般家庭では見受けられない衝撃。三人に見えない背後で、思わず苦笑。
「おっ陽太郎、今だれかいる?」
知ってか知らずか、他のメンバーを聞く迅。
「……しんいりか。おぶっ」
「新入りか、じゃなくて」
話を聞いていなかったのか、関係ない答え。
予想は当たってるものの、彼から良い音のチョップが御見舞いされた。
「迅さんおかえり〜……っと」
玄関から見える二階の廊下。
今度は両手に荷物を持った、ロングヘアーメガネの女性が。
見知った顔“二人”に気付き、言いかけた名を止める。
「(しおり……)」
「宇佐美栞、うちのオペレーターだ」
「……あれっ、え、何? もしかしてお客さん!? やばい、お菓子ないかも! 待って待って、ちょっと待って〜!」
加えて知らない顔が数人居たので、慌てておもてなしの用意に走る。
未だ玄関にいる子供。カピバラは堂々と鼻息を吹く。
全くもって可笑しな状況である。
修の頭は既にオーバーヒート寸前までいってそうであった。
「……あとでおれの部屋来て」
廊下に上がる間に紛れて、アユの耳元に囁く迅。
返事は敢えて聞かず、修達とは別方面へ去っていった。
「……チッ」
発言が怪しいだとか息がこしょばかったとかじゃなくて、面倒くささからの舌打ち。
全然意識されていない。
四人で客間的な部屋に通され、お茶とお菓子が人数分並ぶ。
「(ボーダーの、基地なのか?)」
「(おさむ、相当衝撃受けてるな……)」
「どらやきしかなかったけど、でもここのどらやきいいやつだから、食べて食べて!」
お茶菓子少ない、という所なのか、どら焼きという所になのか分からないが、修は混乱中。
こればっかりはどうしようもないので、助け舟は諦めた。
「……ありがとうございます」
頭を下げる拍子に、チラリと前を見る。
宇佐美と目が合うと、彼女はウインクしてくれた。
安心してね的な意味のアイコンタクトに、有難いので少し苦笑。
「いただきます」
「い、いただきます……」
「これはこれはりっぱなものを……ん」
三者三様お礼を言う中、端っこの席だった遊真のお皿に忍び寄る魔の手が。
机から手を伸ばし、堂々とどら焼きを掴む。
犯人は、さっきから態度がデカい陽太郎。
その様子を、三の目でじーーっと見つめる白少年。
「こら陽太郎、あんたはもう自分の食べたじゃん!」
「あまいなーしおりちゃん、ひとつでまんぞくするおれではない、おぶっ」
五歳のクセに、おませなガキンチョ。
見知った仲なら分からんでもないが、今日初めて会った奴の、しかもお客さんのおやつを取るか普通。
もっともらしい理由を並べ立てていた彼に、再び制裁が。
「わるいなちびすけ、おれはこのどらやきというやつに興味がある」
「ぶぐぐ、おれのどらやき……」
「(お前のじゃないだろ)」
全くもってその通りである。
「はい。よかったら、わたしのあげるよ」
優しい優しい千佳のおかげで、二つ目のどら焼きをGET。
子供らしく顔を綻ばせ、もぐもぐと噛み締めて味わう。
「……きみかわいいね、けっこんしてあげてもいいよ」
「なっ、結婚!?」
「は?」
このまま黙って食べていたらいいのに、またふざけたことをぬかす陽太郎。
流石に聞き捨てならず、根底から引き上げた低音で睨む親友。
「(うわ、アユちゃんガチおこだ……)」
キレ度MAXギリギリなのが聞いて取れると、宇佐美は一汗。
齢五のお子様は気付かない。
「おれとけっこんすれば、らいじん丸のおなかさわりほうだいだよ」
といって、カピパラをゴロンとさせようとする陽太郎。
無駄なのを知ってるので、手元の菓子を器用に真ん中で割り、隣に差し出した。
「ほい」
「あ……ありがとう、アユちゃん」
「ったく、あんま甘えさすなよ」
「ふふ、ごめんつい」
千佳と半分こして、パクリと頬張る。
つけ上がるお子様なのをよーく知ってるので、一応注意。
クスクス楽しそうな友人を、使っていない方の手でポンポン撫でながら、ひとつため息。
「……お手洗い借ります」
「はーいどうぞ〜」
カピバラと戯れ始めた遊真を横目で見ながら、部屋を出る。
トイレは建前で、誰もいない階段を上がり、個室が並ぶ廊下へ。
右側手前をノックすると、中から男の声。
開けてすぐ視界に広がる、ぼんち揚のダンボールに眉が寄りながらも、奥を見た。
「ここまでお疲れ様……アユちゃん」
ぼりぼりという効果音は、もはやセット。
いつもの服、いつものお菓子、いつもの調子で、迅悠一に出迎えられた。
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