code.13【心臓と副作用】
名前変換
Your name?*.名前を入れると、登場人物に自動変換します。
より楽しく読むために名前を記入して下さい。
※愛称ですが、愛称がない場合は同じ名前を入れて下さい。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
昼飯を食べ終わり、しばらく自由時間。
暇潰しにか、地面に落ちている小石を足でいじり始める遊真。
反対側で鮎はスマホ、千佳は落ち葉を手に持ちクルクル回す。
「そういえば遊真くんは、どうしてこっちの世界に来たの?」
「親父が死んだから」
沢村とやり取りしていた画面から、顔を上げる。
オブラート無しの発言だったことに驚いたため。
今更遠慮も要らないかもだが。
「っ、ごめん!」
「いいよ、そんなべつに」
不幸話になると、謝りたくなる。
そして気にしないでとも言いたくなるかも。
「ちっちゃいころから、親父と二人であちこちの国まわってて……たしかおれが十一のとき、親父が死んだ」
「(四年前……第一次大規模侵攻くらいか?)」
ちょうど目前のアユへ蹴り、転がってきた。
画面を閉じたところなので、遊真を一瞥しながら聞き続ける。
「『もしオレが死んだら日本に行け。知り合いがボーダーっていう組織にいるはずだ』親父がよくそう言ってたから、日本に来たんだ。親父はボーダーのことをこっちの世界とネイバーをつなぐ橋になる組織だって言ってたけど……実際こっちに来てみたら、ネイバーはこっちの人間を派手に襲ってるし、ボーダーはネイバーを目のカタキにしてるし……親父に聞いてた話とは、だいぶちがうな」
「(昔はそうでも無かったんだがな……)」
最初からこうではなかったのを、七年前からこちらにいる彼女は知っている。
答えられないので、心中言い訳後、石を蹴り返した。
「そう、なんだ……お父さんって、どんな人だったの?」
「変な人だったよ」
『変な人?』
彼は突拍子もなくハッキリ言う性格だと思う。
血の繋がった父親を、変な人呼ばわりとは。
あまりに予想外で、親友同士は被る。
「たとえば、おれが六歳のときに聞かされた、親父の三つの教えってのがあるんだけど」
「三つの教え?」
「そう」
教えられた年齢を覚えてるとは凄い。
記憶力高いなとか思いながら、その教えを聞く二人。
「その一『自分のことは自分で守れ。親はいつでもおまえを守れるわけじゃない。自分を鍛えるなり、頭をひねるなり、自分でどうにかしろ。自分でどうにかできないものには近づくな。想像力を働かせて危険を避けろ』」
的確に足元に戻ってきている小石を、もう一度仮峰へ蹴る。
「その二『正解はひとつじゃない。物事にはいろんな解決法がある。逆に解決法がないときもある。ひとつのやり方に囚われるな』」
ここまではとても素晴らしい教えだと思う。
「そしてその三『親の言うことが正しいと思うな』」
締めを除いて。
「……最後の最後にひっくり返したな」
おもわず直前で靴先が止まる。
転がらずに残ったのはそのままに、遊真を見やると、三の目。
今までも同じ反応を受けたのだろう。
「たしかに……変わったお父さんだね」
「(教え方としては嫌いじゃないが)」
「だろ? まぁそういう親父だったから、こっちの世界が親父の話とちがってても、そんなにびっくりはしなかったよ」
もしかしたら、父親は薄々気付いていたのではないだろうか。
世界はふとした要因で変わっていくもの。
いざその通りでなかった時、息子が戸惑わないようにと。
戦いに身を投じる最中、ずっとそばにいられる保証は無かったから。
同じ経験をした彼が妙に肝が据わってるのはそういうことか、と納得する。
自分も初めて此処へ来た時、戸惑った経験がある為。
「問題は……親父の知り合いがまだボーダーにいるのかどうか、だな」
「(ゆーまのいう知り合いって……もしかして)」
そろそろ会議が終わる頃だろうと、ゴミを片付け階段を下りる三人。
先導は遊真、最後尾は千佳、真ん中は鮎。
独り言で零したのだろう懸念に、少し思い当たる人物が。
「(もがみさん、か?)」
自分でも名を呼ぶのは“久し振り”。
同時に思い出す、過去の記憶。
無意識だった、額にある、証に触れるのは。
*