code.19【赤の五星と銀の菱星:前編】
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「嵐山さん、遅いなー。突然出て行っちゃったけど」
所変わって、あるA級の作戦室内。
動く気配のない扉を見つめながら、後頭部に両手を回し、背中を反らせる姿勢。
遠くからでも判別できる、真っ赤な隊服がトレードマークの二枚目男子。
嵐山隊、隊員、狙撃手、佐鳥賢。
ムードメーカー的な存在だが、唯一無二のツイン狙撃は目を見張るものがある……と思う。
「佐鳥先輩、口じゃなくて手を動かしてくれませんか」
「動かしてるってー! ほらほら、あと三項目くらいで……」
どうやら課題か何かに取り組んでいるらしく、ペンが止まった彼に注意している黒髪ショートの女子。
嵐山隊、隊員、万能手、木虎藍。
結成時から一緒だった隊員が一人抜け、その後に加入したという経緯がある。
ペラペラと紙を揺らして強調する佐鳥に、怪訝な目を向ける木虎。
残りの二人はオペデスクで調べ物をしていたり、棚の資料に目を通していたり。
そこへようやく、予告なしに自動ドアが開いた。
「みんな、ただいま! 遅くなってすまない」
「あー、嵐山さん! どこ行ってたんすか〜!」
「すまない賢、後で説明する。綾辻、来客用にお茶を出してくれないか」
入ってすぐ立ち止まり、仲間へ挨拶をした隊長。
書類片手に声を掛ける先輩を、じとっと睨む後輩の構図はそのままに、嵐山はその場で体の向きを変える。
心の端で皆は、何故オペレーターにおもてなしの用意を頼んでいるのだろうか、と疑問に思った。
「お構いなく。どうせ、この姿じゃ頂けないからな」
次に続いた声と靴音で、暗黙に理解する。
ただ、ボイスチェンジャーを通したものだったために、え、とか、な……とかいう声も零れた。
閉まらないようにする目的で立つ隊長を通り過ぎ、拍子にマントが靡く。
狙撃手でもないのに、バッグワームを常に装備する異色の隊員。
主に二人分の重なりで、ネアさん!? と名乗らずとも名を呼ばれた。
「ちょうどそこで会ったからな。作戦のこともあるし、招待したんだ」
「(ほぼ強制だったような……)」
詳細は伏せつつ、経緯と理由を話した嵐山。
顔色が見えないことをいいことに、アユは微妙な表情を浮かべているが。
未だ固まっている者を置いて、まずは名サポーターな彼が動く。
「こんにちは、ネアさん。第三中学校の件では助かりました」
「よぉ、とっきー。あの時は、現状の報告をしただけだよ」
嵐山隊、隊員、万能手、時枝充。
主に援護で点を取らせ、尚且つ痒い所に手が届くデキる男。
軽く頭を下げた充に、左手を掲げて挨拶するネア。
心中でむずむずしながらも、行動には出さない。
「ネアさーん! この前はすれ違いで会えなかったっすねー」
「そうみたいだな、さとりん。ていうか、お前あの時来てたのか?」
「あとで合流したんすよ!」
意外にも復活が早かった佐鳥が、遠慮なく絡んでくる。
実は古株二人をあだ名呼びしている彼女。
理由はどうあれツッコミどころ満載だが、この中では周知の事実なので誰も何も言わない。
「こうやって会うのは初めてですね、ネアさん。嵐山隊オペレーターの綾辻です」
「初めまして……というのも変かもしれないが。よろしく、あやつじ」
奥の部屋からコツコツと歩いてきた、スーツ姿でボブカットの女性。
嵐山隊、オペレーター、綾辻遥。
自然な流れで握手を求められたので、これまた自然に返す。
最後に、視線だけはずっと向けられつつ、立ち上がったまま動いていない一人。
そちらを見ていると分かるよう、斜め右に顔を向けた。
「よ。久し振りだな、きとら」
「……お久しぶり、です」
敢えて軽い雰囲気で挨拶するのは、ただでさえ感情が伝わりにくいのを自覚しているから。
実際会うのは御無沙汰で、“あの時”のことを気にしていないのも事実。
相手側は視線を逸らし、気まずそうではあるが。
かくして、一同は秘密の作戦会議を始めた。
* * *
「ということは、大体この辺りの地区か?」
「あぁ、そうだ。じん曰く、この地点でぶつかる可能性が高いらしい」
作戦室に置いてある三人がけソファと、三脚のスツール
お茶はいらないと言ったが、お客様であることに変わりはないから、ソファ中央に座ってもらった
両サイドには俺と綾辻、スツールには木虎と充と賢に
広報用の資料を片付けつつ、忍田本部長からの連絡を改めて共有する
そして新たに警戒区域の地図を広げ、彼女主導で会議を進めた。
「不確定な増員が無い限り、あちらは攻撃手五人、万能手一人、射手一人、狙撃手三人……という所だろう」
「あれ? あっちに銃手一人いませんでした? 太刀川隊の……」
「その辺はアイツから何も聞いてないからな……除外して構わないだろう。あとふゆじまさんも」
本部のデータベースと繋がっているタブレットを取り、慣れた手つきで四部隊の情報を表示させるネア
俺達もランク戦で戦ったことがあるチームばかりだが、彼女は不参加なのにとても詳しい
ソロランク戦にいるイメージもあまりないのに、きっと事前に調べていたんだろう……流石だな
「あちらに比べて、こちらは万能手が三人いる。開戦後は弾幕を張りつつ、抜けてきた攻撃手を叩くのと、射手を牽制する形でいいだろう。何か意見があれば言ってくれ」
「……狙撃手の対処はどうするんですか。あちらは腕の良い人が揃ってますけど」
「確かにな。だがこの地区は元々団地だったからか、集合住宅が多く射線が通りにくい。ひらけた場所に誘導されない限りは対処出来る範疇だろう」
木虎からの質問……というより指摘に近いが、的確な返答をしている
顔を顰める彼女に、なんだ? と声をかけるネアだが、いえ、なんでもありません……と、それ以上は何も言わなかった
詳しい事情は聞いていないが、この二人は木虎がうちに入る前から知り合いだったらしい
その辺のことは、また時間がある時に聞けるだろうか。
それにしても、ダメ元で仮峰さんを探しに行って正解だった
本部長から隊宛てに命令書を貰った時、彼女の名前も書いてあったから……もしかしたら丁度呼び出しが終わったタイミングかもしれないと、作戦室を飛び出した
上層部エリアの階層や、ラウンジも見て回ったが見つからなくて
最後に、以前沢村さんに教えてもらった、殲滅処理課の作戦室(とネアの自室)がある階層に向かったら、廊下を歩いている彼女を見つけた、というわけだ。
俺自身が彼女と話したかったのもあるが、この作戦の準備もしておきたかったのも嘘じゃない
距離を縮められる、キッカケが出来ればと……
「嵐山さん、そろそろ時間です」
「あぁ、そうか……すまないネア、実はこの後メディア対策室に用があってな。少し席を外すが、構わないだろうか?」
そうだった、テレビ局からラッド掃討作戦の特集を組むから、チェックしてほしいと依頼があったんだった
もう少し余裕があると思っていたが、時間が経つのは早いな……
ネアは立ち上がった俺を見上げてから、他の隊員を見回して、また俺を見る
「……全員で行くんじゃないのか?」
「俺と充と賢だけだ。木虎と綾辻は待機だから、二人と……」
と、言いかけて止まる。
しまった、つい女性同士でという感覚で提案してしまった
部屋の空気が静まり返る中、机に手を付いてから俺の横で立ち上がる
「……流石に気を遣わせるだろう。ある程度打ち合わせも出来たし、私はこの辺で――」
「待ってください。留まってほしい理由なら、私にあります」
まずは謝らなければと口を開きかけるよりも前、別の方向から引き止める声がした
「ネアさん……私と模擬戦してもらえませんか」
それは今まで、決して好印象ではない態度を示していた木虎だった
一瞬、私怨か何かが絡んでいるのかと考えてしまったが……彼女の真剣な眼差しからして、おそらく違う
何故そう思うかというと、俺は何度か見たことがあるから
時に友人、時に先輩後輩、時に対戦相手
やるべき事の為に、全てを投げ出してもいい
覚悟を決めた、あの目を
* * *
非公式戦闘のカウントダウンが進む中で、また別の火種が灯る。
確執の幕は、まだ下りない。
*