code.19【赤の五星と銀の菱星:前編】
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こちらの目的は達したので、早々に本部長室をあとにする。
あの二人はとてつもなく忙しい……邪魔するのも憚られるから。
「(さて、今日はどうしようか……一旦戻って寝ようかな)」
昨日は予定が詰まっていたが、変わって今日は何もない。
玉狛の面々も忙しいだろうし、そちらに行くのは却下。
早起きしたのが重なっているから、昼寝するつもりで自分の部屋がある階層に向かう。
「あ、おーい!」
「ん? え……」
相変わらず人気が少ないなんて思っていた矢先、朝のように呼び止められた気がした。
振り返ってすぐ、情熱で染められたような赤が目に飛び込んできて固まる。
「やっと会えた、仮峰さん!」
「あ、あらしやま……さん」
数日前に思わぬ身バレが生じた際の当事者。
ボーダーのアイドル的存在、その筆頭で一番人気の男、嵐山准。
まさかこんな所で会うなんて思っておらず、しかも本名を紡がれて、ちょ、名前……と、慌てる。
「すまない、つい呼びたくて。(あ、また香りがする)」
眉根を下げ、申し訳なさそうにする羽青年。
同時に、覚えのあるフローラルな芳香が鼻腔を擽るが、溜息と共に消えた。
「……誰も居ないから良いですけど」
「(居ないならいいのか……可愛いな)」
他人の気配はしないが、万が一を考えキョロキョロと周囲を見張るネア。
向かい側では、アイドルスマイルより価値の高い微笑みを浮かべる准。
かなりカオスな空間となっているものの、見ているのは監視カメラだけだった。
「ところで、今から帰るところか?」
「えぇまぁ、用事が終わったとこですし」
「この後、時間空いてるか?」
「え? あぁはい。特に予定は無いですけど」
聞かれては答えのやり取りを繰り返し、ぱぁっと最後は明るくなる表情。
「そうか! 良かったら、うちの作戦室に来ないか?」
「何故その流れに……」
一見ナンパしているようだが、全然違う。
ボーダーの顔がそんなことをすれば、たちまち噂が広がるだろうし。
とはいってもぐいぐい来る勢いで誘われ、若干引いてしまっている彼女。
するとスイッチで切り替えたように、彼の纏う空気が変わった。
「……先程、忍田本部長から連絡があった。近々戻る遠征組と三輪隊が交えて、玉狛にいる新人を狙うだろうと」
ピクッと反応し、嵐山を見上げる。
彼は成人前でありながらも、隊長を任されているだけあって落ち着きがあるし、頭の回転も早い。
そういう所は似非双子もそっくり。アイドル力もあって、こちらの方が勝っているかも?
「少なからず、迅やきみと連携を取るだろうから、軽い打ち合わせでもしておいた方が良いかと思ってな」
話を戻し、数日後に起きるであろう戦闘について。
模擬戦でもなく、ランク戦でもなく、倒しきった陣営の勝利という、死人の出ないコロシアイ。
勝つためならば作戦を、いくら立てても困らないのだから。
「そういうことなら、お言葉に甘えて」
「本当か!? よし、こっちだ!」
賛成の意を表わすように、ペコリとお辞儀をしたアユ。
そんな彼女が頭を上げきる前に、左手を掴んで引っ張った。
「え、ちょ、場所くらい知ってますって! あらしやまさん!?」
「いいからいいから!」
拒否する間もなくグイグイ進んでいく嵐山。
どうしても男女の差があるし、正体を黙ってくれている借りもあるので無下にはできない。
早々に諦め、くぐもった溜息を吐いた。
その後、階層移動のためエレベーターに乗り、一旦手は離れる。
「あぁそうだ。副と佐補の件なんだが、年内は暫く忙しくてな……年明け以降の冬休み中でも構わないだろうか?」
「はい、大丈夫ですよ。その辺は今の所予定が無いので」
幸い二人だけの空間になり、以前約束していた連絡云々の話をする。
同級生であり、元同クラスの双子と面会する、というやつ。
年末年始までまだ二週間程あるが、家族との用事もあるだろうし、落ち着いてから決めることになった。
あ、ついでに先に断っておきますね、と今度はネアの方から前置きする。
「私の正体を知らない人がいたら、いつもの口調になりますから。あらしやまさんには、もうしわけないですけど」
これから行く作戦室には、オペを含めて四人いる。
明かすつもりもないし、バレるわけにもいかないので、ぶっきらぼうな態度になることを伝えておいた。
「そんなの気にしないでくれ! むしろ普段からいつも通りで良いんだぞ?」
「そういう訳にはいきません。あらしやまさんは年上で、私にとって目上の人です」
彼の性格的に杞憂だったらしく、構わないと許可を貰う。
折角なのでタメ口でもいいと付け足されたが、ピシャリと両断。
ついさっきまでの温かめな空気が、一気に冷たくなる。
お互いの沈黙により、機械独特の音と振動だけが無情にも続いた。
「……生まれた時からの教えなんです、目上の人間には敬意を払うようにって。だから癖づいてるだけなんで、気にしないでください」
「そうか……分かった」
いたたまれなくなってきたのか、主原因の彼女から口を開く。
上昇していく外の景色を見つつ、どうにもならない理由を話す。
納得いかなさそうではあるが、嵐山は承諾した。
「(だがいつか、敬語もなく話せる仲になりたいものだな)」
いずれは従姉弟や友人のように、壁を感じない間柄になれたら。
そんな理想を恋心と共に、胸の内へ秘めて。
*