code.19【赤の五星と銀の菱星:前編】
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「おい、あれ……」
「あぁ……掃除屋の」
一夜明けた十二月十六日、月曜日の朝。
クリスマスと年末が近付き、ホリデーシーズン開始の中。
本部内はそうでもなく、だがいつもより人口密度が高いくらい。
通路でコソコソ会話する者、すれ違ってジロジロ見る者。
どちらにしても、されている方からすれば気分は最悪だろう。
「(朝なのに人が多いな……冬休み入ってるとこ多いのか?)」
にしては全く表情に出ない……というか仮面の所為で顔が見えない人物。
体型が分かりにくい長丈バックワームも相まって怪しいことこの上ないが、今更だし気にしてもいないようで。
首はそのまま、視線だけを動かして周りを見つつ、歩みを止めない。
「あ、ネアさーん!」
「ん?」
そんな折、名指しで呼ばれた声に振り向くと、こちらに手を振る男子。
紺色のジャージ隊服に、ツンとはねた濃黄の前髪。
こちらに駆けてくる様子を、顎部分に手を当てつつ見つめた。
「えーっと……そう、こあらいだ」
「ピンポーン、当たり! これでもう覚えたっすよね!」
「あぁ、まぁ……多分な」
「えぇ〜、そこは即答してくださいよ〜!」
数日前に大規模作戦で連携したB級上位、東隊の隊員、小荒井登。
活発な性格に人懐っこい笑みで、少々苦手なタイプだなと思っていたり。
今も変声機でおかしな声の相手に、遠慮なく絡んでくる。
逆に落ち着いている方で、焦げ茶髪の後髪がはねた男子。
隊員、奥寺常幸は、小荒井、あんまネアさんを困らせるなよ、と注意している。
次には、おまえだって間違えられたって後から言ってたじゃん! と言い合いを始めてしまった。
そうなると置いてけぼりをくらい、自然と残ったメンバーと、間接的に目が合う。
「よ、ネア。掃討作戦以来だな」
「……どーも、あずまさん」
肩まで伸びた黒髪に、眠たそうな目。
人は見かけによらずとはよく言うが、彼も該当者だろう。
隊長の東春秋に対して、以前騙された件もあり、控えめに挨拶する。
「その様子だと、防衛任務終わりか。お疲れ様です」
「あぁ、お疲れ。お前も防衛任務か?」
「いや、今日は呼び出しがあったからな。時間も無いし、もう行くわ」
隊で揃って行動している際の理由は限られている。
ランク戦のシーズンでもないため、予想は当たったようだ。
彼女には彼女で用事がある。
まだ少し余裕はあるけれど、正直にいうと苦手意識が勝ったので退散しようとした。
「あ、待ってくれ。ひとつ聞いていいか?」
だが、踵を返した時に引き止められる。
改まって何を聞かれるのだろうと、内心思考しながら一時停止。
「お前……迅とは仲が良いのか?」
質問の内容に、仮面の裏で眉根を寄せる。
彼の口から出てくるとは思っておらず、全くの想定外だったからだ。
「……何故じんの名前が出てくる」
「昨日、二人で話しているのを見かけたんだ。昔は玉狛にいたって聞いたことがあるし、随分楽しそうに見えたから、もしかしてと思ってな」
確かに昨日、模擬戦をするために本部を少し歩いた。
人気は今日よりも少なかったので、見られていたのに気付かなかったのだ。
殲滅処理課が新設されたのは、約三年前。
それまでは玉狛所属という扱いになっていたのだが、本部設立時からいる東は勿論知っていて。
小南を含め、支部の人間と面識があるというのは浸透している。
本当は面識どころか、友人以上の関係だとは内密だが。
「……私が、特定の誰かと仲良くしているような奴に見えるのか?」
見られたのはマズかったかと思いつつ、チラリと周りに視線を向ける。
相変わらず内緒話をしている、名も知らぬ隊員達に、この会話も聞かれているんだろう。
陰口を一切気にしないほど、大人でもない。
ならば、どう答えるかは決まっている。
「そんなわけないだろう。なにせ私は、“掃除屋”だからな」
自分を知ろうとするな、自分と関わりを持つな。
嫌な噂を立てられるのはそちらの方だと言外に込めながら、ペルソナの奥で睨む。
彼女がネアとして必要以上に干渉しないのは、私欲のためだけではないということ。
若干の皮肉も入れて、じゃあな、と後ろ手を振りその場を離れる。
「あれ、ネアさん行っちゃったんですか?」
「……あぁ。俺たちも行こう」
『はい!』
最初以外は状況を見てない奥寺は、背中を見つめたままの隊長に首を傾げつつ、声をかける。
だが振り向いた彼の様子は、普段通りで。
報告書を纏めるのに作戦室へ戻る用もあったので、特に変にも思わず二人はついていく。
「(少し、深入りしすぎたか。だが、アイツらは一体……)」
自らの発言に後悔を感じながらも、過ぎるのは昨日見た光景。
狙撃手の合同訓練終わり、後輩達と話をしながら十字路に出た時。
進行方向ではない通路に、灰色のマントが揺れていた。
バッグワームは基本くすんだ緑に近いが、グレーなのは一人しかいない。
つい声をかけようとしたが、横には青空色が見えて一旦止まる。
S級隊員と殲滅処理課の組み合わせというだけでも珍しいのに、東が一番驚いたのは、彼がネアに向ける表情。
顔を綻ばせ、一方的に話しかけているがめげていない……そう、まるで猛アタックしているような。
そして最後に、一瞬だけこちらを見た。
氷点下と例えてもいいような、冷たくするどい目を。
彼の視界に映っていたのは現実か。それとも……――
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