Crerk.4【常識の相違】
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お店と自宅は家屋ごと繋がっており、中からでも外からでも行ける。
店に繋がる扉を通り、肉を加工する厨房へ到着。
「お待たせ、あなた」
「おう、イズミ……と、マリ?」
「おつかれさまです」
「あぁ」
ちょうど手を洗い終わったシグが振り向くと、予想外の少女。
とりあえず頭を撫でながら、何故連れてきたのか視線で妻に聞く。
「仕事手伝いたい、って言ってくれたんだよ」
問題なく以心伝心され、先程の言葉を伝える。
驚いて下を見ると、コクコクと頷いている本人。
「……ありがとうな。だが無理はするなよ」
「はーい」
撫でを再開させながら、気持ちが嬉しくて礼を言う。
早速エプロン着用の上、台座に乗って作業台の前に。
「因みにこういう仕事はやったことあるの?」
「むらにうしかいのいえがあって、ひととおりのてつだいはしたことあるよ。にくをさばくのも、ぎゅうにくならすこし」
「へぇー、牛飼いねぇ……」
精肉店なので、肉は仕入れるが飼ってはいない。
村だというのもあり、育てて出荷するまでの工程を、ひと通りやっていたのだ。
「まずは牛肉から、お客さんに提供しやすいように切り分ける作業だ。包丁は使えるか?」
「うん、だいじょうぶ」
確か左利きだったな、と両刃の包丁を出してきてくれる。
ありがとう、と礼を言い、受け取って向き直った。
「肩ロースはステーキにしても旨いから、大体一センチの厚さで切ってくれ」
「わかった」
小さいながら片手で肉を押さえて、一枚ずつ切っていく。
どうすると美味しそうに見えるか、お客さんの気持ちになって考えながら。
「中々上手いじゃない」
「このぐらいしかできないけど……」
「充分だ。よし、次は……――」
シグにひとつずつ教わっていると、時間はどんどん過ぎていく。
太陽はちょうど、真上に上がった頃。
「これで最後だ。頑張ったな」
「えへへ……」
すっかり恒例の撫でをしてもらい、満足気な笑顔。
「二人共、ご飯出来てるよ」
「あぁ、分かった。マリ」
「うん」
エプロンを外し、石鹸で手を洗い終わった頃、いつの間にか居なくなっていたイズミが呼びに来た。
途中で昼御飯を作りにいっていたようで。
とてとてと後ろを付いていき、ダイニングの席に着く。
かれこれ五回目の食事、メニューはビーフシチュー。
作業の過程でどうしても出る、端切れや切り落としを使ったものだ。
「おいしい!」
「フフッそうかい、お粗末さま」
ぱくぱくと目を輝かせながら食べ進める姿に、カーティス夫妻は思わず笑顔。
食事中はどうしても会話が少なくなるが、ふとイズミは切り出した。
「そういえばさっき話してた村のことだけど、流石に牛飼いだけじゃないよね?」
「あぁ、むらのじゅうにんはみな、それぞれかぎょうがあった。鍛冶屋、裁縫屋、農家、こなひき、牛飼い、漁師、商人……そして、錬金術師」
食べる手は止めず、質問に答えるマリ。
ついでにお代わりを頼みながら。
「……お前の世界にも錬金術があったのか」
「あぁ、だけどこっちのれんきんじゅつの方が、はるかにすすんでる。じんをきざんだだけでれんせい出来るなんて……あちらでいうまほうレベルだ」
世界の特色によって、発展している技術は違う。
こちらは錬金術、あちらは魔法、というように。
シーベーグが聞いたらきっと驚くだろう、そう心中で予想しながら。
「もちろん相当の知識がいるけどね、錬金術も。逆に魔法なんて聞いたことなかったよ。この前使ってたのがそれ?」
「あぁ。ケアルいがいに、ファイアやブリザドとか……こうげき系のものもある」
「へぇー! 一度やって見せてよ」
「いやこんなしつないでつかったらあぶないだろ……」
「そうなの? なら外でやって頂戴な」
「あ、はい……(なんか楽しそうだなイズミさん……)」
黙々と食べるシグを置いて、ご機嫌になったイズミと苦笑いのマリ。
険悪な雰囲気とかではなく、彼の方は見守っている体で。
やはり錬金術師=生粋の研究者だからか、探究心を擽られるようだ。
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