Crerk.4【常識の相違】
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「よっし、これでぜんぶ」
パンパンと手を払い、一息吐く。
足の踏み場はあるものの、なかなかの物が入っていたことが窺える量。
「いっぱいあるねぇ、順番に教えてよ」
「えっと……このたまは魔石五しゅるい。このほんは冒険記。くだものとやさいのたねと、おかねがすこし。わたしあてのてがみと、さっきのえと、バル・ダットにもらったミドルクリスタル……いじょうだな」
玉や本の他に、小さな巾着袋が二つと便箋が何通か。
そして一際目立つ、大人の掌に収まるくらいの水晶。
確かにこれだけ入っていれば、重くもなるだろう。
「へぇー……種ってつまり、マリの世界のってことだよね?」
「うん。たとえば、しましまリンゴとか、まんまるコーンとか」
「名前からして見たことないね……でも興味あるわ」
ケアルと同じ造りのアクセは腰に付けて、残った白玉は机の引き出しへ。
日記は何も無い本棚の端に置く。
「どこかにうえられればそだてられるとおもうけど」
「ふむ、考えとくよ」
灰色の袋を開けると、中身は色んな形の種がいっぱい。
元々は旅の途中で、環境が整ってきた土地に植えるつもりだったもの。
種の管理担当だったため、結局持ってきてしまったのだ。
どちらにしても、育てるならそれなりの土地が必要なので、植えるのは見送ることに。
「通貨も違うみたいね。センズとは刻まれてないし」
今度は黄色の袋をイズミが掌に開けると、コインが数枚。
ひとつを掴み、表裏を確認しても見覚えはない。
「いちまい一ギルだよ。まぁほとんどはなかまにもたせてたし、きんせんめんはもんだいないかな」
その間、手紙の束は机の引き出し、思い出の残る絵は壁に貼った。
彼女から巾着の中身だけを受け取り、それらも布で纏めてから引き出しへ。
「とりあえず、その鞄と袋は洗っとこうか? だいぶ汚れてるみたいだしね」
「ありがとう。でもじぶんのだし、じぶんであらうよ」
「そう、何かあったら言いなよ」
「うん」
洗濯物をひとつのカゴに入れて、扉横に置く。
後で洗おうと思ったから。
そして最後に、クリスタルを本棚の上に飾る。
こちらへ来る前、交換という形ではあるが、最後に貰った贈り物。
なんだかんだで良い奴だったなと、自然に口元が緩みつつ、水晶を撫でる。
後ろ姿から、イズミは大切なものなのだと察した。
丁度、その上にある時計に気付く。
「……おっと、そろそろ仕込みを手伝わないと」
時刻はお昼まで、二時間前辺り。
明日からの営業のために、今日出来る作業を終わらせておくためだ。
「イズミさんもおみせにでるの?」
「調子が悪くなければ出てるよ。あの人だけだと大変だしね」
「たしかに……」
やっぱり経営って大変なんだなと思い、少し考えるマリ。
独りでに頷き、彼女を見上げた。
「ねぇイズミさん、わたしもしごとをてつだいたい!」
「え、肉屋の仕事を?」
「からだはこどもだから、できることはすくないけど……やれることはてつだいたいんだ」
「マリ……」
真っ直ぐ見つめる瞳から、真剣さが伝わってくる。
一筋縄ではいかない仕事なので、それだけ危なくもあるのだが。
子供の頑なな意志に慣れていないのもあり、ひとつ溜息の後、口を開いた。
「……分かったよ。まずは簡単なのからね」
「うん!」
苦笑いでも、あながち嫌という訳では無いようで。
むしろ嬉しい言葉をくれたのだから、断りはしない。
すっかり馴染んだ手繋ぎで、作業場へと向かった。
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