Episode.6【贖罪と変化】
名前変換
Your name?*.名前を入れると、登場人物に自動変換します。
より楽しく読むために、名前を記入して下さい。
※物語上、複数の名前や偽名が登場します。
夢主の名前以外は固定とさせていただきますので、ご了承下さい。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
爆風が晴れるよりも前に、大きな物体がこっちへ飛び出してきた
そんなの、わたし達以外にはライガスしかいない
一直線に飛んでくると予測してたから、なんとか受身は取れた
でも他のみんなにもぶつかったらしく、特にジェイドはまともに吹っ飛んでしまってた
「うわぁぁぁっ!」
「サフィール!」
余所見……というかジェイドの怪我が心配でそっちを見てたら、ライガスがサフィーに襲いかかろうとしていた
このままじゃサフィーが危ない! わたしの位置はジェイドより遠いけど、なんとか間に合って!
なんて願いも虚しく、その爪を受けたのはサフィーの一番近くにいた“彼女”
「ネフィーっ!!」
身を呈して庇っていたから、額に攻撃を受けて血が流れる
人の血を見たのは、二年前のあの日以来
ウバラやサフィーがネフィーに駆け寄る中、わたしは動けなかった
怪我をしたとかではなくて、駆け寄るよりもショックの方が大きったから
守るって約束したのに……それどころか、あの子がサフィーを守った
「ジェイド! 後ろっ!!」
でも、そんな空気を魔物が読むわけない
ジェイドが背後から狙われていたのを、わたしはサフィーの声もあって気付くことが出来た
この距離なら、間に合う! これ以上、大切な人達が傷つくのは見たくない!
今度こそ……今度こそ、わたしが守るんだっ!!
「リトっ!!」
ライガスの爪は、彼に届くことはなかった
代わりにわたしの右目を中心に、顔を引き裂かれる
痛いっ痛いっ痛いっ、めちゃくちゃ痛いっ!!
でもこんなの、ネフィーに比べればっ……それにタダで食らうつもりなんて毛頭ないんだから!
「くっ、ぅ……か、みなりに、打たれればいいっ!――」
この譜術ならきっと成功する……なぜなら、失敗したことが無いから!
『サンダーブレード!!』
なんとか上手くいったみたいだけど、目の前がビリビリして目がくらむ
それに聞き間違いじゃなかったら、覚えのある声がしたような……
「あなた達……どうしてここに!?」
「ネビリム先生っ!!」
あぁ、やっぱり……ゲルダさんだった
あれだけ強力な譜術、ジェイド以外にはこの人しか使えないものね……
「ごめんなさい、僕たち先生を追いかけてきて……」
とてもじゃないけど、わたしから説明するのは無理だ
痛みで頭が回らないし、動くのも難しい……ウバラやサフィーがやってくれるよね……
ジェイドはわたしの右側にいるみたいだけど……見えないから何してるのか分からない
ただ、肩に手を置いてくれてるのは感じる
「リト!? その傷……」
位置的に後から気づいたみたいで、すごく驚いていた
先生が第七音譜術士だって知ってるから、傷を治せるのも知ってるけど……
「わたしのことは後でいいからっ……先にネフィーを!」
わたしなんかよりネフィーの方が気絶してるし、一刻を争うから
「でも、あなたの方が酷い傷を――」
「いいから早く!!」
うっ、叫んだだけで視界が歪む……血が足りてないのかな……
それでも、突き通さなきゃ……せめて、このくらいは
「……わかったわ。ジェイド、ハンカチでも何でもいいから、布を傷口に当ててあげて。血を流し過ぎても危ないから」
「わかった」
ボタボタ血が流れてるのは、押さえた手に伝ってるからわかる
結構深いみたい……雪に落ちる赤は広がるばかり
「いいよジェイド、自分で……」
「いいから、じっとしてろ」
ジェイドは自分の服に付いてるヒラヒラを引きちぎって、わたしの傷口に当ててくれた
強すぎないよう、でも血が零れないように
なんか今日は優しいな……それに片目から見えた彼の顔、無表情だけどいつもと違うような……
結局その後は、ネフィーの治療が終わってすぐ、わたしの傷も治してくれた
右目は開くようになったけど、頭はまだボーッとしてる
「先生、ネフリーは大丈夫?」
眠ってるネフィーをおんぶして、先生は前を歩く
ウバラ達が理由を聞いてるみたいだけど、正直あんまり聞いてない
何故かというと、ボーッとしてるのもあるし……隣のジェイドが、腕を掴んでくれてるから
わたしがふらふら何処か行かないように、してくれてるんだろうけど……
さっきから会話が全然ない
元々あまり喋らないのは知ってるけど、ちょっと落ち着かないな……
「ねぇ、ジェイド」
「……なに」
でも、どうしても伝えたいことがあったから
彼はこっちを見ずに返事をした
「ありがとうね」
わたしがお礼を言ったことに驚いたらしく、すごい顔で私を見る
「……なんで僕に言うの。怪我は先生が治した。僕は、おまえに何もしてない」
また見たことない顔してる。苦いものでも食べたような感じの
私の言ってること、おかしかったのかな……いや、そんなこと、ないはず……
「そうかも、しれないけど……わたしは、ジェイドになんともなくて良かったって、思うから……」
そう、だよ……結局みんな怪我しちゃったけど、命はある。ここにいる
「だから、ありがとう……ジェイ、ド……――」
うまく、笑えてたのかな、わたし……もう、分かんないや……
なんか……なんにも……考えられない……
「……僕を守ったのは、リトじゃないか」
え、今……なん、て……――
街の入口まで帰って来れた所で、わたしの意識は途切れてしまった。
*