Episode.6【贖罪と変化】
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「ネフィー、サフィー、大丈夫? 疲れたら言ってね」
「うん。ありがとう、リト」
そう遠くないところで合流した二人は、先を歩くジェイドとピオニーの後ろをネフリーと一緒に歩いていた。
女子の割には鍛えている方のリトは、どちらかというと先頭組と同じくらいの早さ。
でも大変そうな二人に敢えて合わしている。心配だったのもあるが、気掛かりなこともあった。
「(だけどこれ以上進んだら、魔物が出てくるかもしれない……)」
先程も今も、遠吠えがずっと聞こえている。
目に見えなくても、奴らは獲物の存在に気付いているということ。
街から離れるにつれて、狙われる確率は高くなる。
ピオニーも同じことを考えていたらしく、ジェイドに相談しているが、引き返すつもりは無いらしく、気にかけるつもりもないらしい。
「ぼ、僕は平気だよ!」
会話が聞こえていたサフィールは、帰らされるのが嫌なのか強がりを言う。
「勝手にすれば。僕は行くけどね」
「待ってよジェイド!」
ここまでくれば予想通りだが、心配する素振りもなく再び歩き始めた。
それを追いかけていく銀少年。
「ったく、あいつら……ネフリー、戻ってろ。危ないぞ」
「でも……」
溜息を吐きつつ、この中で一番華奢なネフリーを先に返そうと考えた皇子。
だが背後の山からも遠吠えが止まず、一層恐怖を煽っている。
「……待ってウバラ、今ネフィーを一人で帰すのは逆に危ないよ。せめて先生を見つけてからにしない?」
リトは今までの経験から、単独行動は狙われてしまうかもしれないのを知っている。
実際自分がそうだったのだし。
「……確かにそうだな。早いとこ先生を見つけよう」
一理あると感じたのか、同意を示して彼は先頭の方に戻っていった。
残された二人の内、ネフリーは不安な表情。
そんな彼女の手を取り、ぎゅっと握る。
「大丈夫、わたしがネフィーを守るからね」
「リト……うん!」
この中で守れるのは自分しかいない。
責任感を胸に抱いて、歩みを再開した。
そして既に三十分以上歩いているが、足跡以外に痕跡が見当たらない。
降り積もる雪の影響で、足跡も消えかけている。
だがジェイドが止まる気配はなく、無言のままついて行くことに。
「ジェイド〜、待っ……うわっ!?」
「サフィー!?」
どうしても彼に追い付きたいサフィールは、無理を押して速度を上げた。
その所為で不注意だった足元がズボッと抜ける。まさに落とし穴。
出られないよぉー!! と泣き叫ぶ彼を、後ろにいたネフリーとリトが協力して助け出した。
「何やってんだあいつ……」
呆れつつ一部始終を見ているピオニーと、全く見ず先を進むジェイド。
「サフィール、大丈夫?」
「う、うん……なんか、柔らかいものを踏んで……」
雪まみれなこと以外、怪我は無さそうな彼だが、穴の中が気になるようで。
三人で覗いてみると……
「これって……魔物の子供!?」
四足歩行の、ウルフとはまた違う幼体が二匹。
その内一匹は踏まれてしまったようで、目を回していた。
間髪入れずに、魔物の咆哮が響き渡る。
「(しまった、今日剣はっ!)」
固まってしまった二人を守るように、背後へまわって右腰に左手を当てる。
しかし、そこにあるはずのものがない。修行に使っている木刀が。
みんなにバレるといけないので、家に置いてきてしまったのだ。
「三人とも逃げろっ!!」
そんな彼女達を待つわけもなく、咆哮の犯人は崖から飛び上がり、こちらへ落ちてきた。
そこへ滑り込んできたピオニーが、腕をクロスさせ攻撃を防ぐ。
だが防具も装備していないため、鋭利な爪がくい込んだ。
続いてジェイドが短い詠唱で氷の棘を出現させたが、全て避けられる。
「ウバラ! 大丈夫!?」
「っ、あぁ……それより、コイツはライガスだ。サフィールの奴、こいつらの巣に落ちたな」
ライガス。この辺りに生息する魔物の中ではかなり手強い相手だ。
子供を害されたことで気が立っており、引いてくれそうにない。
「リト、いくよ」
「う、うん!」
ならば倒すしか方法がないと考えたのだろう。
そもそも魔物の命を軽く見ているジェイドは、この中で同系統の技が使えるリトを呼ぶ。
呼ばれた理由には気付いていたが、殺すことに躊躇いがないと言えば嘘になる。
だが、自分もやらなければネフリー達を守れないだろう。
「終わりの安らぎを与えよ……」
「大剣の刃は火竜の如く!」
今では言い慣れた詠唱をタイミング良く唱える。
因みに初期と文言が違うのは、ジェイドに安直だと言われたので考え直したらしい。
当時、安直の意味が分からなかったとか、結局彼に意見を出してもらったとかは別の話。
「フレイムバースト!」
「キャリバー・サラマンダー!」
第五音素の中級譜術が同時に炸裂する。
雪とぶつかったことで、水蒸気爆発が起きた。
「やったか!?」
煙と音で何も分からないが、大ダメージを与えたことは確か。
「(まだ……気配が消えてない!)」
この中で剣技を心得ており、何度か戦闘を経験しているリト。
嫌な予感が、どうしても消えなかった。
*