Episode.6【贖罪と変化】
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あれからまた季節は一巡りし、ND1994。
ウンディーネリデーカン、イフリート、七の日。
「じゃあちょっと出掛けてくるわね。遅くなるかもしれないから、先に寝ていてちょうだい」
「うん……」
午後十時を回った頃、外へ出る準備を済ませたゲルダは、玄関で見送ろうとするリトに声を掛ける。
既に何度も経験しているが、心配なものは心配。
「ねぇ先生、いつも何処へ行ってるの?」
それと同時に、一体何が目的なのか謎だった。
思い切って聞いてみるが、ふたつ返事では返ってこず渋い顔をされる。
「……いつか話すわ。きっとね」
彼女が必要のない嘘をつく人間ではないことはよく知っている。
きっとこれにも理由があるのだと。
「……わかった。いってらっしゃい」
以後は追求せず、見送った。
その翌日。ウンディーネ、八の日。
「リト、ちょっといい?」
「なに? ジェイド」
私塾の授業が終わり、今日は何しようか考えていた時。珍しく彼から声を掛けられた。
最初は譜術のダメ出しをされるのと思ったが、連れられた広場にあるかまくらに入ると、中に居たのはピオニーだった。
今日は用事があるとか言ってサッサと帰ったのに、わざわざこんな所で待っていたとなると、ネフリーやサフィールには聞かれたくない話でもあるのか。
「ネビリム先生、毎月七の日になると夜中に街の外へ出かけるのを見かけるんだよな。おまえ何か知らないか?」
「それが……この前聞いたけど、教えてくれなかったの」
内容は、昨日の自分も気になっていたことだった。
つまりこの二人も気になっていたということであり、誰も真実を知らないということである。
「リトが聞いても教えてくれないってなると……これは俺達で真実を突き止めないとな!」
目がキラキラしているように見えるのは気のせいだろうか。
気持ちは分からんでもない。軟禁生活を強いられている彼にとって、冒険心を擽られるのだろう。
「えぇー……なんかウバラが言うと不安」
「どういう意味だよ!」
イマイチ信用に欠けるので、疑いの視線を向けておく。
これで皇子なのが未だに信じ難いからだ。
「ジェイドも知りたいの?」
「そういうリトだって知りたいんでしょ」
「そりゃあ、知りたいけど……」
離れた所で我関せずな少年だが、わざわざ連れてくるのなら一切興味が無いこともないのだろう。
素直じゃない性格な気がする。
「なら、決まりだな! 次の七の日にこっそり集まろうぜ」
結局この三人で、先生を尾行することになった。
止めた方がいいのか悩んでいる間に話が進んでしまったというのもあるが。
「……まぁ、大丈夫かな」
気になっていたのは自分も同じなので、反対も引き止めもせずその場を後にした。
その判断が後々、大変なことになるとは気付かずに。
* * *
そして迎えた、シルフリデーカン、シルフ、七の日。
「それじゃあ、今日も行ってくるわね」
「うん、いってらっしゃい」
いつも通り出掛けようとするネビリムを、いつも通り見送ろうとするリト。
「ねぇ、先生」
「なあに? リト」
だが、後ろめたさを感じていたのもあり、気づけば無意識に声を掛けていた。
何も知らない彼女は、優しい笑みで言葉を待つ。
どうしても、言い出す勇気が出なかった。
「……ううん、なんでもない。気を付けてね」
「……そう? 行ってきます」
少し不思議がられたものの、手を振ってから家を出ていった先生。
「……帰ってから謝ろう。うん、そうしよう」
ぽつんと残された少女は、大きく息を吐く。
帰宅後に必ず話そうと誓い、自分も防寒着を着込んで外に出る。
すっかり歩き慣れた街に残る、まだ新しい大人の足跡を追う。
迷いなく、広場から行けるロニール雪山への門へ続いていた。
「確かこの辺りにいるって……あ、いた」
事前に広場の茂みに隠れていると聞いていたので、すぐに見つけられた……もじもじしているサフィールを。
「ネ、ネ、ネフリーと、リト、だけ、だ……」
「……何してるの? サフィー」
因みに話していないはずの人間が何故いるのかというと、ジェイド大好きサフィールがどこからか聞きつけて、それを心配したネフリーがついてきたそうだ。
顔を赤くして女の子の名前を呟く様子が少し怪しかったので、じとーっとした視線を向ける。
「へっ……リト!? あれっ、みんなは!?」
「先に行ったみたいよ。わたし達も行こう!」
「う、うん!」
どちらにしても放っておけないので、手を掴んで皆が行ったであろう後を追う。
魔物の遠吠えを、耳に入れながら。
*